「倒してもらいたいのは本音ではあるよ……ただ、ついでに君たちの茶番劇を見たかっただけさ」
「ダークナイトモン――ッ!」
「気づいてただろう?
負のエネルギーを得ること……果ては、君たちが互いにぶつかり合い消えてくれることこそがわたしの狙いだと。
今の君たちは、まるでかつてのサイバーランドの住民たちとよく似ているよ」

 ――そうして程なくするとみんな消えたさ!
 フハハハ!あれは滑稽だったな
 ……スプラッシュモンの言葉がよみがえる。

「まあ君が彼らを倒すことなどないと考えられないからねえ。
どちらにせよ、楽しませてもらったよ……」
「……ミチ、行こう。
もう用は終わったのだから」

 ドゥフトモンはダークナイトモンに背を向け、また遥瑠も不本意ながらに踵を返すのだった。




 デジクロスのできないクロスハートは決定的なダメージを与えられない。
 スターシリウスが有利となっている戦況の中、シェイドラモンは暇そうに欠伸をかいていた。

「あ゙ー、ガキのお守りなんてしてられっかよ。暇だなァ。
……少しくらい痛めつけたっていいよなァ?」
「なっ!」
「ミチはそんなこと言ってなかったわ!」
「そ、そうだよシェイドラモン!ミチ姉はタイキたちは傷つけないようにって言って――」
「アイツの言いつけを素直に守る必要なんざねえんだよ。
俺様はあの小娘に復讐するために着いているだけなんだからよ。
人間ってどれくらいで焼けるかねぇ。加減がわっかんねーけど――なに、少し熱いくらいさ」

 シェイドラモンは手先の砲口をタイキたちに向け、にやりと不敵に笑む。
 タイキたちの目が見開き、ガブモンの止める声も聞かぬまま――炎が放たれる。

 刹那。

「や、め、な、さァァァァァい!!」
「ふべっ?!」
「テイルモン?!」

 シェイドラモンの顔面を、自慢の拳で殴りつけた。そのまま軽やかに着地するテイルモンに、ガブモンは唖然とした様子で見ていた。
 遅れてシャウトモンがやって来て、タイキの表情が明るく輝く。

「タイキ、ネネ、キリハ!今よ!!」
「――ああ、ありがとうテイルモン。
いくぞみんな!」
『おうッ!!』

 タイキはスターモンズを呼び出す。
 ――準備は整った。
 ジェネラルたちはそれぞれクロスローダーを構え、空高く掲げるっ!

「シャウトモン!バリスタモン!
ドルルモン!スターモンズ!
ベルゼブモン!――デジクロス!!

「グレイモン!メイルバードラモン!
――デジクロス……!!

「メルヴァモン!スパロウモン!
――デジクロス!!

――シャウトモンX4B!!
――メタルグレイモン!!
――メルヴァモン・ジェットスパロウ!!

 思いもよらぬ展開にカイザーレオモンは「しまった」と息をのむ。

「おい、シェイドラモン!何をしている?!」
「っくぅ〜〜!
テイルモン!テメェ裏切るつもりかァ?!」

 睨むシェイドラモンに、しかしテイルモンはどこかふっ切れたような面持ちでいた。
 迷いが消えたのだ。……シャウトモンのおかげで。

「――私は私を裏切りたくない……だから、ミチのやることを黙って従うことをやめるわ!
それが私の、本当の気持ち!!」
「そうかよ――だったらテメェらまるごと燃やしてやる!!」

 シェイドラモンが憎悪に眼火する。
 燃えたぎる眼と形相はまるで鬼のよう。

「オマエの相手はオレたちだぜぇ!」

 襲いかかるシェイドラモンにシャウトモンX4Bが立ちはだかる。
 降り下ろされた腕に剣で受け止めるが、その一撃は重い。
 彼はスターシリウスの中で一、二を争うほどの力をもつ実力者である。

「なっかなか……やるじゃねえか……!」
「はっ!圧されてるぜェ?!
無駄口叩けるヒマがあるかよォ?!」

 シェイドラモンは飛び退いて火の弾を連続に撃ち放つ。
 対してシャウトモンX4Bが剣で斬り裂くと――その間に距離を詰め、また殴りかかる。
 反射的に剣で防ぐシャウトモンX4B。
 紙一重の差にテイルモンとタイキは思わず声を上げてしまう。

「X4B!」
「シャウトモン……!」
「わかってる――ここで負けてなんかいられねぇ!
タイキの為にも、テイルモンの為にも!」



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