「バグラ軍の施設なら、俺が案内してやる」とドルルモンがクロスローダーから出てくる。
 ドルルモンを先頭に歩を進めるが、またしてもアンドロモンの大軍が。
 難なく倒し更に深くまで行くと、やがて広い一室に出た。
 何かよくわからない機械やら何やらが置かれているが、誰一人としていない。
 しかし微かに物音がして、キリハはそろりそろりと“それ”に近づき――

「おい」

 ゴンッ。
 鈍い音が響く。
 つい頭を打ったような、そんな錯覚が遥瑠の脳裏に走る。

「まさか」
「人間?!」

 キリハが声をかけた主の正体は、ちょうどアカリくらいの、小学生の女の子だった。
 青緑の特徴的な髪に、真っ白なミニスカの美少女。彼女は目に涙を溜めてひどくおびえている。

「お前、何者だ!」
「ひぇあぁぁぁあっ?!」
「キリハ!
もっと優しく訊けよ。
大丈夫、俺たちは味方だよ。
俺は工藤タイキ。……君は?」
「……ワタシ、ルカ」
「ここで何をしている?!」
「ふあぁぁぁうあぁぁっ?!」
「キリハ、そう怒鳴るような言い方しないの」
「まったくしょうがないわね」
「白猫に言われたくはないものだな……」
「だぁれが猫ですってぇ?!」
「ああもう、キリハ!テイルモン!」

 キリハとテイルモンのピリピリとした雰囲気を他所に、ルカと名乗る少女はタイキの顔を除き込む。
 キラキラとした目でタイキを見つめていると「この人怖くなさそう!」と明るい笑顔になる。

「ああ。そいつはおまけにバカがつくほどの、正直者のお人好しだ」
「へぇ、バカなんだ!」
「いや、その……ハ、ハハッ……」
「それはひとまず。
ルカちゃん……だっけ。この国について話してほしいのだけれど」と、遥瑠が訊ねる。

 ルカはくるりと一回転して中央に設置された機械の上に座った。

「ここはサイバーランドだよ」
「じゃあ、ルカちゃんは一体どうしてここにいるの?」
「ワタシ、気づいたらこの街に迷い込んでいたの。
でもすぐバグラ軍に捕まって、どっかに連れていかれるところだったの」
「あなたを捕まえた連中はどこに?」
「ホエーモンが攻撃されたら、慌ててどっかへ行っちゃった」
「逃げたか」
「ルカをジェネラルにするつもりだったのかな」
「ねえ!そんなことより、ワタシもタイキたちの仲間に入れてよ!」

 ルカの生き生きとした笑顔に、タイキは二つ返事で頷く。
 やったあ!とすかさずタイキに抱きつくが、ドルルモンはそんな彼女の様子を睨むように見ていた。

「タイキ、ちょっと来い」

 ドルルモンはタイキを廊下へ呼び出す。
 おそらく、ルカについてだろう。

『やっぱり、彼もあの少女を疑っているようだね』
「……そうだね」
『何もかもを疑ってしまうのは、疲れることだけど。
仕方ないさ。人間だろうがデジモンだろうが、生き物が疑うことをやめることはない』
『事実、俺だってバアルモンのことを疑っていたしな』
「カイ、」
『済んだ話だ、ミチが気にやむことはない。
――しかし、ドルルモンが怪しむのもわかる。
誰もいない国、消えないデジモンたち、あの少女……』
「もしかしたら、ルカちゃんは」
「何でそんなこと言うのー!!」

 今度はゴッチーン!
 また頭を打ったような錯覚を感じて、思わず瞬きを繰り返す。
 タイキとドルルモンの会話を立ち聞きしていたらしく、ルカはまた涙目でドルルモンを睨み上げていた。

「ワタシ怪しくないことだけが取り柄だったのに……わあ゙ああああぁぁぁぁんっ!!」



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