城内に潜入する為にはまず、岩壁をぶち破らなければならなかった。
 キリハはグレイモンをリロードすると、すぐさまデジクロスさせ強引に潜入する。
 しかしそこで見張りのフライビーモンたちがやって来た。
 さすがにあの爆発音に気づいたらしい。

デス・ザ・キャノン!!
トライデントアーム!!
ブラストレーザー!!

 デジモンたちが交戦する中、イグニートモンを連れて遥瑠とキリハは走り抜ける。

「これ、全部デジハニー?」
「はいっ」

 見渡す限り巨大な容器。
 六角形のそれはまるで蜂の巣のようだ。

フライスパーク!!
「くっ、邪魔な奴らだ」

 巨大な容器は数えきれないほどにあり、なおかつ多くのフライビーモンたちが襲いかかってくる為に、なかなか破壊できない。
 舌打ちをするキリハに遥瑠は横目で見ながら――思いついた。

「ねぇ、これ全部壊していいんだよね」
「ああ」
「だったらうってつけの子がいる!
リロード!――シェイドラモンッ!!」

 クロスローダーから呼び出したデジモンは、鮮やかな炎と共に姿を現した。

「随分甘ったるい匂いがすんなァ、おい。
……聞いてたぜ、ミチ。
モノぶっ壊すのは俺様の役目だっての、忘れてねーみてぇだから今日は特別に褒めてやるぞ」
「そりゃどーも。
――さ、シェイドラモン!
思う存分暴れちゃって!!」
「言われなくともヤってやらァ!
オラオラどけこのウジ虫共が!!
フレアバスター!!

 放たれる業火に燃やし尽くされるフライビーモンたち。
 容赦のない攻撃と罵詈雑言の数々に「貴方も虫でしょうに」とアクィラモンがぽつりと呟きを漏らした。




 デジハニーの貯蔵庫破壊の任務は無事完遂できた。
 先ほどのシェイドラモンの大暴れっぷりは、むしろ清々しいものだったようにも見える。
 今はキリハがモニタモンを通して、タイキたちに終了したことを告げている最中だ。
 これからタイキたちの快進撃が始まる。

「やっぱり、似てる」
「はい?」

 遥瑠の呟きにイグニートモンは首を傾げる。
 メイルバードラモンの背に乗った彼をしげしげと見ていれば、その視線に耐え兼ねたように「何がですか」と訊ねてきた。

「メルヴァモンによく似てるなーって、ね。
初めて会ったあの時も思ったけど……あの戦いの最中、イグニートモンは動きを止めたでしょう?
あのときに何か関係してるみたいだなって思ってたんだけど」

 やっぱり姉弟だったんだねとにこやかに言う。
 あの戦いの瞬間に見えた戸惑いの色は、彼女と彼の関係を示しているのかもしれないと遥瑠は感じた。
 案の定当たっていたわけだ。
 イグニートモンはばつが悪い顔をして、少し遥瑠から視線をそらした。

「はい。
……僕はザミエールモンに勝てるわけないって、最初から諦めてああやって悪事を働いてしまっていた。
――でも。
やっぱり、姉弟が傷つけあってはいけないって思ったんです。
それに気づかせてくれたネネさんに、僕はお礼を言いたい」

 ……ネネは。
 ダークナイトモンによって、弟を捕らえられたままだ。
 姉弟という関係であるネネは、きっと二人の戦いにどうしても納得できなかったのだろう。
 結果、メルヴァモンもイグニートモンも傷つくことなく和解できたのだ。
 彼女の気高く強い思いが彼らを救ったのだろうと思うと、ますます彼女に対して敬畏が深まる。

「マスター!
前方にて敵発見!……あれは、」

 ザミエールモン。
 アクィラモンが告げるより早く、遥瑠たちはその姿を捉えた。



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