城内に潜入する為にはまず、岩壁をぶち破らなければならなかった。 キリハはグレイモンをリロードすると、すぐさまデジクロスさせ強引に潜入する。 しかしそこで見張りのフライビーモンたちがやって来た。 さすがにあの爆発音に気づいたらしい。 「デス・ザ・キャノン!!」 「トライデントアーム!!」 「ブラストレーザー!!」 デジモンたちが交戦する中、イグニートモンを連れて遥瑠とキリハは走り抜ける。 「これ、全部デジハニー?」 「はいっ」 見渡す限り巨大な容器。 六角形のそれはまるで蜂の巣のようだ。 「フライスパーク!!」 「くっ、邪魔な奴らだ」 巨大な容器は数えきれないほどにあり、なおかつ多くのフライビーモンたちが襲いかかってくる為に、なかなか破壊できない。 舌打ちをするキリハに遥瑠は横目で見ながら――思いついた。 「ねぇ、これ全部壊していいんだよね」 「ああ」 「だったらうってつけの子がいる! リロード!――シェイドラモンッ!!」 クロスローダーから呼び出したデジモンは、鮮やかな炎と共に姿を現した。 「随分甘ったるい匂いがすんなァ、おい。 ……聞いてたぜ、ミチ。 モノぶっ壊すのは俺様の役目だっての、忘れてねーみてぇだから今日は特別に褒めてやるぞ」 「そりゃどーも。 ――さ、シェイドラモン! 思う存分暴れちゃって!!」 「言われなくともヤってやらァ! オラオラどけこのウジ虫共が!! フレアバスター!!」 放たれる業火に燃やし尽くされるフライビーモンたち。 容赦のない攻撃と罵詈雑言の数々に「貴方も虫でしょうに」とアクィラモンがぽつりと呟きを漏らした。 ◇ デジハニーの貯蔵庫破壊の任務は無事完遂できた。 先ほどのシェイドラモンの大暴れっぷりは、むしろ清々しいものだったようにも見える。 今はキリハがモニタモンを通して、タイキたちに終了したことを告げている最中だ。 これからタイキたちの快進撃が始まる。 「やっぱり、似てる」 「はい?」 遥瑠の呟きにイグニートモンは首を傾げる。 メイルバードラモンの背に乗った彼をしげしげと見ていれば、その視線に耐え兼ねたように「何がですか」と訊ねてきた。 「メルヴァモンによく似てるなーって、ね。 初めて会ったあの時も思ったけど……あの戦いの最中、イグニートモンは動きを止めたでしょう? あのときに何か関係してるみたいだなって思ってたんだけど」 やっぱり姉弟だったんだねとにこやかに言う。 あの戦いの瞬間に見えた戸惑いの色は、彼女と彼の関係を示しているのかもしれないと遥瑠は感じた。 案の定当たっていたわけだ。 イグニートモンはばつが悪い顔をして、少し遥瑠から視線をそらした。 「はい。 ……僕はザミエールモンに勝てるわけないって、最初から諦めてああやって悪事を働いてしまっていた。 ――でも。 やっぱり、姉弟が傷つけあってはいけないって思ったんです。 それに気づかせてくれたネネさんに、僕はお礼を言いたい」 ……ネネは。 ダークナイトモンによって、弟を捕らえられたままだ。 姉弟という関係であるネネは、きっと二人の戦いにどうしても納得できなかったのだろう。 結果、メルヴァモンもイグニートモンも傷つくことなく和解できたのだ。 彼女の気高く強い思いが彼らを救ったのだろうと思うと、ますます彼女に対して敬畏が深まる。 「マスター! 前方にて敵発見!……あれは、」 ザミエールモン。 アクィラモンが告げるより早く、遥瑠たちはその姿を捉えた。 |