テイルモンのこれほど強い叫びは誰もが初めて聞く。 彼女の本心が、垣間見えた。 「さ、手ェ出しな。オレたちが連れてってやる。 キリハのところまで、お前を!」 「…………いや、無駄だ。諦めろ。 俺は既にロップモンたちと同じようにネオヴァンデモンの一部……」 「わっかんねェ奴だな!」 「ボクの、仲間」 「え……?」 「シャウトモン、見て!」 シャウトモンが顔を上げると、いつの間にか周りにはたくさんのロップモンが。 ……みんな、涙を流している。 彼らはネオヴァンデモンに吸収されたロップモンたちなのだ。 もう会えるとは思っていなかった、大切な仲間たち。ロップモンは涙を溜めて「みんなぁ!」、腕を伸ばす。 「っ――ぐずぐずすんな! オレをこれ以上怒らせンじゃねェ!!」 「わからず屋!彼らを見て、私たちの声もキリハの叫びを聞いても動かないの?!」 「……お願い!!」 ロップモンはメタルグレイモンの手をとり、必死に引っ張る。 「お願い、ボクたちの仲間の命をムダにしないで!」 「お前、たちの――」 「ボクたちをこのままネオヴァンデモンの中で終わらせないで!お願いだよぉ! メタルグレイモン!!」 「……お前……」 「ロップモン……!」 シャウトモンは手を伸ばした。ロップモンも応じて手を伸ばすが、ほんの少しの距離で止める。 「約束して。 ボクたち、みんなに!」 溜めた涙を、ロップモンは流さなかった。 「お前、まさか」 「ボクにも ボクたちにもまだできることがあるんだ。 だから“約束”して。 ネオヴァンデモンを絶対倒すって!」 「――ああ、約束するぜ。 絶対ネオヴァンデモンを、このままのさばらせておかねェ!」 「“約束”だよ。 ――みんな!ボクに力を!! みんなの力を!!」 周囲のロップモンは集まり、シャウトモンとメタルグレイモンを繋ぐロップモンに力を注ぎ込む。 やがてロップモンの体は、美しい純白に輝く。 「白の、ロップモン……!」 「テイルモン、君の力も借して!君の聖なる力を!」 テイルモンは頷き、二人を繋ぐ小さな手に、自らの手を重ねた。 ロップモンたちか、はたまたシャウトモンとメタルグレイモンのものなのか――いや、全員の思いが重なった手は、とても暖かい。 「何だ、何かがおかしい?!」 ――神殿内。 ネオヴァンデモンの腹からは白い光が漏れ出ており、その姿に遥瑠たちは声を上げる。 「ネオヴァンデモンが苦しんでる?!」 「一体何が?」 すると大軍を蹴散らしたキリハとネネ、ドルルモンにバリスタモンが扉をぶち破って現れた。 神殿内にネオヴァンデモンがいるとは思っていなかったキリハたちは身構えるが、苦しむ彼に眉を潜める。 一体何がと訊けば、シャウトモンとテイルモン、そしてロップモンが中に入ったことを告げた。 中でどんなことが起きているかわからない。 だがこの光は、暖かい。 「これは?!」 突然、タイキとキリハのクロスローダーが金色の光を放つ。これは超進化の―― 「奴の中で何か凄いことが起こっているんだ。 キリハ!」 「ああ、俺のメタルグレイモンにもな!」 二人は笑みを浮かべた。 そこで遥瑠のクロスローダーにも、僅かに光が漏れる。 ドゥフトモンだ。 『聖なる力を感じる。 どうやら中に取り込んだロップモンたちが、シャウトモンたちに力を貸しているようだね。 だからネオヴァンデモンが苦しんでるんだ。 ――ミチ、僕をリロードしてごらん。進化の光を、中にいる彼らに届かせる!』 「うん、わかった! リロード――ドゥフトモンッ!!」 獣の聖騎士は、ネオヴァンデモンから漏れ出る光とよく似たものを放ちながら現れた。 「ミチ、そのデジモンは?!」 「Piacere!工藤タイキくん! だが今は自己紹介をしている時間はない。 さあ少年たち、心の底から叫んでごらん。 僕とテイルモンで道しるべをつくり、その想いを届けてみせる!」 聖なる者同士、力を流し込めば呼応する。 突如現れたドゥフトモンの言葉にタイキは一瞬遥瑠を見やり、まっすぐ顔を上げた。 どうやら信じることに決めたようだ。 二人はクロスローダーを掲げると心の底から叫んだ。 「シャウトモン超進化!」 「メタルグレイモン超進化!」 光はネオヴァンデモンの腹へ伸び、テイルモンたちの元へ連なっていく。 力を感じたテイルモンは鈴を鳴らして光を導く。 「――オメガシャウトモン!!」 「――ジークグレイモン!!」 ――黄金の想いは、たしかにシャウトモンたちに注ぎ込まれた。 「俺は、」 「オレたちは超進化したのさ。 白のロップモン、そしてテイルモンたちの力を借りて!」 |