「ブレイジングアイス!」 「いっくわよ……ネコパンチッ!!」 氷づけになった装置をテイルモンがとどめを刺し、それは粉々に砕け散った。 「やったですな!」 「いいぞロップモン!」 「ナイスパンチ、テイルモン!」 モニタモン、タイキ、遥瑠が続けて喜ぶ。 これで城の結界は破られた。外で待機しているキリハもこれで動けるだろうとネネが言う。 「ギャディアックレイド!!」 集約された闇のエネルギー砲に、X5は堪らず城外へ吹っ飛ばされてしまう。 タイキはメテオインパクトを出すよう指示するが、熱を纏った拳はいとも容易く受け止められた。 ――強い! 「ナイトメアレイド」 「?!」 静かに解き放たれた闇の魔獣たちは、X5に食らいつく。 しかもこの魔獣たち、彼らのデータを吸いとっているではないか。 このままでは文字通り食い尽くされてしまう――だがそこに、メイルバードラモンのプラズマ弾が放たれる。 キリハがやって来たのだ。 「デスジェネラルは俺たちが倒す。お前たちはデビモンを始末しろ」 キリハがくいっと顎で示すと、背後には無数の敵――レディーデビモンとデビモンが迫っていた。 空を多い尽くすほどの圧倒的な数に全員は目を見張る。 「ちっ、何でオレたちがお前に指図されなきゃなんねーんだよ!」 「ふん、今度は貴様が相手か」 「ああ。――お前を倒す! グレイモン!メイルバードラモン! デジクロス……!!」 「――メタルグレイモン!!」 メタルグレイモンはX5の言葉を無視してネオヴァンデモンと刃を交える。 戦いが始まれば人の話を聞かないのは彼らの悪い癖である。 『若いね、蒼沼キリハくんは。しかしあれは勇気じゃない、蛮勇だ』 「キリハ……、何か焦っているように見えるわ。 ――でも今はそれより、X5を助けないと! リロード、アクィラモン!」 飛翔能力を持つアクィラモンを喚び出し、X5の加勢へ徹するよう指示を下す。 数多の敵――ましてや一人ひとりが不死身なゆえに想像以上に手こずっているのだ。 タイキもベルゼブモンを喚び出すと、アクィラモンと共に迎撃を始める。 「デス・ザ・キャノン!!」 「ブラストレーザー!!」 「シャウトモンX5、メテオバスターアタックだ!!」 墜落したデジモンたちを、X5の剣がVの字を刻むように斬りつける。 強烈な連続技に耐えられずデジモンたちは消えたが、 「まだあんなにいるのか……!」 悪魔は更に数を増して攻めてきた。 これではただの消耗戦になってしまう。身構える一同に、ネオヴァンデモンは嘲笑を浮かべる。 そして手に取ったのは――ダークネスローダー。 「笑わせるな――ダークネスローダー、デジクロス!」 「何て奴だ!」 「無理矢理デジクロスしやがった」 不死身の大軍を残さず吸収するとネオヴァンデモンは更に巨大化する。 そのままメタルグレイモンを鷲掴みにし、軽く投げた。 彼を一つの山へ叩きつけるほどの威力――それは先ほどX5を投げ飛ばした力とは比にならない。 キリハは慌ててデッカードラモンをリロードしようと構えるが、ネオヴァンデモンは制するようにキリハを岩場から落とした。 こいつ、遊んでいるのではないか。 ふと遥瑠の脳裏にそんな考えが過る。 まだネオヴァンデモンは本気を出していない。なのに、ブルーフレアをここまで痛めつけるなんて! X5、ベルゼブモン、アクィラモンが一斉に攻撃を仕掛けようと迫るが。 「邪魔だァ!」 「何しやがる?!」 その背中をあろうことかメタルグレイモンが攻撃してきたのである。 「デスジェネラルは俺たちが倒すと言ったはずだ」 「キリハ、今は力を合わせて戦うべきだ!」 「これは!俺の戦いだ! メタルグレイモンッ、ギガデストロイヤー!!」 青い光線が放たれ、それは豪雨の如く連射される。 しかしこれはキリハの焦燥感の表れだ。 「撃って撃って撃ちまくれッ!こいつも同じだ、体が再生するまでに消してしまえば――」 「どうなるというのだ?」 煙幕が晴れた先には妖しく光る、血のような赤い、 眼。 「そんなもの私には通用しない」 「……くっ……まだだ、いけッメタルグレイモン!!」 「ダークネスローダー、 ――デジクロス」 ネオヴァンデモンがデジクロスの対象に選んだのは 「なっ?!」 「何だと……」 ――メタルグレイモンだった。 ダークネスローダーは強制的にデジクロスを行う非道な道具。相手の意思は関係なく、だ。 メタルグレイモンは抵抗も虚しくあっさりとネオヴァンデモンに呑み込まれてしまう。 メタルグレイモンを吸収した吸血鬼は、下半身が竜化し、それは恐ろしい姿となった。 「メタルグレイモンが、」 「吸収された……」 渇いた声と 非道な吸血鬼の高笑いのみが 夜の国に響き渡る……。 Continua a Melody-21 |