ふわりふわり。お酒を飲むとすぐこうなる。

久々に会った大学の友達と飲んだ。相変わらずと笑われたが、みんなだってそうなのにと心の中で反論しといた。



「あれ、名前?」

「鉢、屋君?」



目の前にいるのは、高校の同級生だった鉢屋三郎君。

最後に会ったのは確か卒業式の時だったので、お互いクエスチョンマークが付くのは仕方がない。



「久しぶりだな」

「そうだね、何年ぶりだろうね」



ふわりふわり。きっと、雲の上を歩くってこんな感覚なんだろうな。



「そういえば名前はどこに就職した?」

「ん?大川商事」

「すげぇな!!」



正直、就活はかなり頑張った。まぁ、行きたい業種では無かったけれど。



「鉢屋君は?」



ふわりとしている脳内で、スーツを着た鉢屋君が電話がけに営業回りに躍起している姿が思い浮かぶ。きっと、営業マンだろう。



「私は車の整備士をしているんだ」

「へ?」



間抜けな返事になったのは脳内のイメージがガラガラと崩れ去ってしまったから。



「意外って顔に書いてあるぞ」

「そ、そう?」



きょとんとした顔を装っても無駄だったらしい。



「ほら」



鉢屋君がそろそろと差し出した両手は落としきれていない油汚れで黒ずんでいた。



「納得したか?」

「…しました」

「よし、いい子だ」



つなぎを着た彼を想像できないのは、きっとお酒を飲んだからに違いない。



「名前がもう社会人かぁ」

「鉢屋君だってそうじゃない」



立ち話もなんだからと、コンビニでお酒を買い、公園のベンチに腰かけているのだが。

鉢屋君は高校卒業後、自動車整備の専門学校に進んだとのこと。



「今なら時効だよな?」

「何が?」

「高校の時の話」

「時効だよー」



グビリとビールを飲み込む。ふわりふわり。まだ治まらない。



「私、高校の頃、名前が好きだったんだ」

「ング」



藪から棒。否、藪から槍。ビックリした私はビールを気管に入れてしまった。



「大丈夫か!?」



咳が止まらない。



背中を鉢屋君にさすってもらい、何とか咳は治まったのだが。



「・・・」

「・・・」



気まずい事、この上ない。



「も、もう時効成立だもんね」

「そ、そうだな」



うふふ、あははと笑いあう。

ふと気付いたのだが、鉢屋君は高校の時も所謂イケメンだった。しかし今の顔をみると、あの頃でもあどけなさが残っていたんだと考えさせられてしまった。

精悍で、逞しい青年が今、目の前にいる。



「今更、この年で青春を謳歌しようと思わないが名前」



私を見つめる真剣な眼差し。ふわりとした感覚がシュッと消える。



「私とでよければ、付き合ってくれないか?」



どきりどきり。

ゴツゴツした手が目の前に出され、私はニッコリほほ笑んだ



どうかの手をとって

貴方の隣を歩くのも悪くない





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