今日も仕事が終わって、帰りにコンビニに寄って缶チューハイとおでんを買って一人寂しくいつもの帰り道をなぞるだけなんだろうか。回りの友達は皆結婚してるのに私にはかれこれ二年程彼氏も居ないし…。自然と溜め息が溢れる。今日はチューハイやめて熱燗にでもしようかな…
「ん?もしかして名前か?」
名前を呼ばれたので一応振り向くと少し遠くから誰かが走ってきていて、それはどうやら懐かしい中学生時代に仲の良かった神崎みたいだった。そういえば、中学卒業してから連絡はまあとってたけど会ってなかったなあ…
「…もしかして、神崎?」
「おー!やっぱり名前か!久し振りだな」
目の前に来た神崎は中学生の時は私より小さかったのに、ちょっと会わない間に私の身長をゆうに越えていた。
「うわー、神崎身長伸びたねぇ」
「名前は縮んだな!」
「いやいや、縮んでないから。寧ろ伸びてるからね」
そう言えば神崎は笑った。相変わらずちょっと口は開いてるし、前髪ぱっつんだし。にぱにぱ笑う顔は童顔のままだし。意外と変わってる様で変わってないんだなあ、なんて思いながら神崎を見ていたら頭を撫でられた
「…いいな」
「はい?」
「今から暇か?」
「うーんまあ、暇かな」
「じゃあ呑むぞ!」
「神崎呑めるの?」
「人並みには強いぞ」
胸を張ってそう言う神崎はやっぱり中学生の時となんら変わりない気がして神崎の後ろをついていく。
「…ねえ、神崎どこに向かってるの?」
「家だ!」
「うん?隠れ家的な居酒屋さん?」
「いや、僕の家だ」
はっきりと言い切った神崎はすたすたと私の先を歩く。え、ちょっと待って。今僕の家って、あれ?え?神崎の、家?
「ちょ、ちょっと!まさか神崎の家で呑むの?」
「…?僕はさっきそう言っただろ?何だ、まさか今更来ないとか言うのか!僕はそんなの認めないぞ」
がしりと私の腕を掴んだ手は大きくて、力も強くて。思わず身構えた
「…もしかして、彼氏でも居るのか」
「え、いや…居ない、けど…」
「じゃあ問題ないな!名前は、今から僕の彼女だ!」
「は、はい?ちょ、神崎話の展開早過ぎてついてけな…」
「僕は名前が好きだったからな。今を逃せばまた居なくなる」
「か、んざき…」
「僕が名前を幸せにするから」
真剣な瞳で見つめられて、思わず頷いたけれど、神崎…それじゃあプロポーズだよ