新年も変わらぬ日々を




降り注ぐ光とキンと冷えた空気に清々しさを感じる新年の幕開け。新しい年が始まり、世間は少なからず浮き足立った様相を見せる。


「………新年早々不機嫌になるな」
「…………」
「想定の範囲内だろが」
「…………」

人波を牛歩で進みながら後少しで賽銭箱の前へ辿り着く最中、土方の口から零れるのは溜息。 初詣へと参ったその先は、見事な迄の人人人、の人の波。至極当然の事ではあるし、事前に忠告もしておいたのだが風間の機嫌は右肩下がり一直線。

「行くっつったのはおめぇだろが…」
「…………」
「俺は事前に混んでるぞ、って忠告もしただろ」
「…………」
「納得ずくじゃねぇのかよ…」
「…………だから、先程から何も言っとらんだろが」
「機嫌…悪ぃじゃねぇか…」
「………良くはないが文句は言っておらん」

左様で…と言葉にする代わりに肩を竦めれば、やっと順番が回ってきた。賽銭を投げ入れて参拝を済ませ、御守りやらの縁起物を購入したところでやっと人の群れが多少ましになった。新年を祝う神社は、普段静けさに満ちる境内の散歩道に様々なテキ屋が軒を連ねて活気に満ち溢れている。初詣を済ませた後の、楽しみの一つを担う屋台陣を物色しつつ歩いていれば、風間の機嫌も持ち直すというものだ。

「変わったものが多いな」

店の看板とも言える暖簾や、登り旗に書かれた文字をあちこちと見る。

「あー…最近の屋台はB級グルメってのを扱ってるとこも多いからなぁ」

同様に辺りを見回した土方は笑気混じりに目を細めた。

「ほー……今年は何だったのだ?」
「あ?……んー…確かグランプリを取ったのは、浪江焼麺太国じゃなかったか?」
「そうなのか。グランプリを取ったとなるとなかなか美味いのだろうな…どんな物なのだ?」
「ん?あー…そうだな……」

ぐるっと見渡せば、丁度其処にあった幟の立つ店を見つけ指差してみせる。

「あそこにあるぞ。行ってみるか?」

風間が興味を示した浪江焼麺太国を扱う屋台へと土方が足を向けるが、風間の足は動き出すことなく同行する様子を見せない。

「おい…?」
「俺は煎餅汁が食べたい」
「………は?」

話の流れを見事にぶった切る宣言に、土方は間の抜けた声と共にきょとんと隣を見つめた。

「お、い?」
「ところで…店は……」
「風間…さん?」
「ああ、あちらにあるな」
「最初から食いたい物があるなら…」
「俺は煎餅汁を食ってくる。貴様は好きにしろ」
「先に言え!てめぇはっ!!何の前フリだっ!!!」
「……煩い奴だな。新年早々怒るな…まったく…」
「てめぇに言われたかねぇっ!!」

相も変わらず、迷う事皆無で我が道を突き進む風間に、土方は年明け一発目の頭を抱えた。マイペースと言えば多少聞こえはいいが、風間の場合は唯我独尊と言った方が正しい。変わらぬその姿に苦笑いが零れるも、今年も退屈とは縁遠い一年になりそうだ。と土方の内心は楽しみの方が強く溢れているのだった。











「……じゃあ俺は牛串でも食うか」
「そうか。ならば一つよこせ」
「早々にたかる気かっ!!」
「…一つぐらいくれてもよかろう……ケチだな」
「………やらねぇとは言ってねぇ。頼み方ってもんがあるだろが……そうだな…一つちょーだい、って言ってみろ。それか、可愛いくあーんって口開けて強請ってみるとかな」
「………………………」
「おいコラッ!!なんだっその目はっ!!!侮蔑の眼差しを向けんじゃねぇよっ!!!」



今年も相変わらずな仲良しで過ごそう。












140102





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