ハヤトキ
双子設定




麗らかな午後。
なわけはなく。

爽快な朝。
と言うにはまだ外は暗く。


そんな早朝も早朝。

「ハヤト!!起きなさいっ!!」

ピシャリとした真のある声が容赦なく落ちてきた。
同時に肩を揺さぶるられるも、ベッドの住人は睡魔と仲良くしたいらしく、布団を頭まで被ろうとする。

「ハヤト!!起きなさいと言ってるんですっ!!」

手繰り寄せようとした布団をしっかり掴まれ、潜る事を阻止されるも未だに目は瞑ったままで、眠気たっぷりのゆるーい声が漏れた。

「……うー…まだ、…眠い……にゃあ……」
「あなた、仕事でしょう」

アイドルとして活躍するHAYATOは、朝のニュース番組に出演している。
当然ながら、スタジオ入りは半端なく早い。

「…いい加減起きなさいっ!!」

叱咤の声に目を擦りながら渋々と起き上がったが、まだ舟を漕いでる始末の兄の姿に、トキヤの口から自然と溜息が落ちた。
それでも背中を急かす様に軽く叩き、ベッドから立ち上がらせる。
洗面所迄連れていけば、あとはどうにかこうにか覚醒を始めるわけで。

この手の掛かる大きな子供が自分の兄だと思うと、頭痛がする。



着替え迄終えたハヤトに甘いココアを渡せば、すぐに満面の笑みを返してきた。

「トキヤぁーありがとぉー」
「もう少しで迎えが来ますよ」
「うー行きたくないにゃあ!!」

べったりとテーブルに俯せて喚く兄に一瞥を送ってから、トキヤは己のコーヒーを一口飲んだ。

「何を言ってるんですか」
「だってまだトキヤといたいーっ!!」
「仕事でしょう」
「仕事の鬼っ!!!」
「鬼で結構。だったらなんです」

うーうー唸りながらぱたぱたとテーブルを叩いていたハヤトの手がピタリと止まり、今度はじっと見つめてきた。

「なんですか?」
「こーんなに朝早くトキヤよく起きれたね」
「は?」
「だって昨日あーんなにいっぱい可愛がってあげたのに」
「ーなッ!!」

面白い程一気に真っ赤に染まるトキヤの顔に、にこにこと屈託なく笑顔を向ける。

「あ、あああなたッ!!そういうっ…」
「あ!!仕事行かなきゃー!!」

わなわなと震えながらお小言を始める言葉を遮って、ハヤトは勢いよく立ち上がった。

「ま、ちなさいっ!!」
「えーお仕事だもん。無理だよぉ」

アイドルスマイルをこれでもか、と全面にハヤトはそそくさと玄関に向かう。
途中、キッチン近くにある籠の中のパンの袋からロールパンを一個口にくわえた。

「ハヤトッ!!」
「行ってきまふー」



椅子から立ち上がり、名前を叫ぶトキヤにひらひらと手を降って家を飛び出す。
良いタイミングで迎えに来た車に乗り込み、残りのロールパンをかじった。

「随分ご機嫌だな。HAYATO」

運転席のマネージャーにも惜しむ事無く、ハヤトは笑顔を振りまく。

それこそ、花とハートの乱舞つきで。



「僕のトキヤはほんっとに可愛いにゃー!!」














120904