幸福の未知




風が頬を撫でていく
全てから切り取られた、穏やかで優しい空間
身を寄せ合い腰かける縁側を、陽光がふわりと包む


体に掛かる微睡む愛しい重み
伏せられた瞼を彩る長い睫毛と
柔に風に遊ぶ金の糸

規則的な呼吸が支える体を伝って、体内に響き落ちる



めまぐるしく変わっていく世が泡沫に感じる
隔絶された異形の地


白い頬に掛かる淡色の髪を指先で鋤き避ける





こんなところまで着いてきてしまった





忌むべき俺に向けられる
負の全てをお前が受けて

俺の目の届かないところへと仕舞い込み
何一つとして俺の目に映らせなかった


最高位の立場を持つ、強い信念の気高く誇り高き純血種


なのに

俺の為だけに内にあるそれらをねじ曲げて、目を伏せて
体に俺を受け入れて





お前は何も語らない
ただ穏やかに傍らに寄り添う



お前が欲した血も
子を成すことも
共に歩む刻も

お前が望んだものを何一つ叶えてやれないのに


強く気高く
愚かでないお前がそれでも手を差し伸べた


俺はその手取ってしまった


あの手を取った瞬間に
俺はお前のあらゆる幸福を握り潰したのだ

二度とお前の手へ還らない


わかっていながら
それでも俺はその手を振り払えなかった



これは俺の

浅ましくて醜い
傲慢だ



消えていくばかりの俺は
何も残せず

お前だけを残していく



きっと全てが間違っている



先など無い



もう戻れないというのに







120522





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