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夜、寝る前にテレビを観ているとリリィがあ…と声を上げた。
『ここ…この前、仕事で行った美術館です…』
「へぇ…?」
《オルバート美術館!花真珠の偽物展示か!?》
そう題されたニュースは生放送で、こんな時間にも関わらず美術館館長が、記者会見を開いていた。
「花真珠って?」
『デスパールフラワーって植物があるんですけど…その花が真珠のような種子を付けるんです…』
「なるほど…だから花真珠ね」
知らない言葉にリリィを見れば、少し嬉しそうに話す。
テレビでは記者会見を撮しつつ、コーナーワイプではアナウンサーが簡単に纏めた内容を話している。
デスパールフラワーからしか取れない花真珠。それを展示していた当美術館だが、偽物であることが判明した。
これは触れるだけで細胞が壊死する程の猛毒を持つ物で素人には摘出は不可能。館長は摘出には成功したが、その後何者かに盗まれたと話をしている。
と言うのがこのニュースの全容らしい。
「素人じゃ取り出せないのか…」
『はい、それで私が呼ばれました。総合病院の医院長先生が私を紹介したみたいで…』
「?」
少し違和感…何にって、その医院長先生とやらに…
リリィは薬剤師。確かに特殊な資格も持ってるくらいの腕利きではあるが、その植物の特性を聞く限り、取り出しはハンターに依頼すべき内容じゃないか?
気になる話も耳にした事だし、少し探りを入れてみるかな…。
『ちゃんと取り出したんですけどね…盗まれちゃったのか…』
言葉の割にはあまり残念そうじゃないリリィ。
「そんな有名所を盗っておいて捕まらないのは、"
旅団"くらいのもんだろうね…」
『くも?』
「クロロ達さ…幻影旅団。彼等のことを"クモ"と呼ぶんだ」
『ヒソカさんは何でも知ってますね』
言うや否や、小さく欠伸した彼女に、時計を見れば…日が変わろうとしていた。いつも寝るのが早いリリィは、ボクがいると一緒になって起きていようとする。
「もう寝ようか…リリィが眠たそうだ」
『そんなことないですよ!ヒソカさんが起きてるなら私も…』
「ボクも寝るよ…それに…」
目を擦りながら言われても説得力ないから。
先にベッドに横になり、隣をポンポンと叩けば、余程眠いのかヨチヨチと歩み寄って来た。
そのままベッドに横になると、ボクの胸元に擦り寄り…タオルケットを掛けてやれば、程なくして、寝息が聞こえていた。
ボクの服を掴み、安心しきったように眠るリリィを一撫でする。
大丈夫だよ…ボクが守ってあげるからね…。