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お昼ご飯をどうしようか…と言う話になり、ボクとリリィは近所のファミレスに来ていた。
「能力のことは話してるのかい?」
『いえ、特には…』
何気なく気になっていたことを聞けば…リリィのパスタを掬う手が止まる。
「2人にはどこまで話してるんだい?」
『…クロロさんには流星街出身ってことと、イルミさんには耐毒体質ってことくらいですかね…』
あの2人が根掘り葉掘り聞いてきてないことが驚きだった。
『…2人とも、ちゃんと自分のこと話してくれたのに、私だけ黙りは失礼ですよね…』
大人に恐怖心を持ち、他人を信用出来なかったリリィが…他人に興味を持ち、相手の事を考え悩んでいる。成長したなと思う反面、少し寂しくも思う。
「急ぐ必要はないよ。言いたくなったら言えばいい…」
『……そうですね』
少し考えた後、いつもの愛らしい笑みを見せ、またパスタを食べ始めた。
食後、パスタとハンバーグの皿を取りに来たウェイトレスにコーヒーとココアを頼む。運ばれて来た冷たいそれらを受け取ると、ココアを1口分喉に流したリリィがボクを見ていた。
「どうしたの?」
『……ヒソカさんは、あの2人と戦うんですか?』
声を掛ければ遠慮がちに聞いてきた。
『ヒソカさんと一緒に行動できる位だから、きっと2人とも相当強い…と思うんです』
「…あぁ」
全てを教えた訳じゃないけど、リリィはボクの事をよく分かっている…
『ヒソカさんは強い人と戦うのが好きなのも知ってるし…本気で殺り合ったら、どちらかが死んでしまうのも、分かります…』
「…うん」
まだ一緒に暮らしている頃、初めて返り血に塗れた姿で帰った時は、とても心配された。
『でも、ヒソカさんが居なくなるのも…折角、仲良くなれた2人が居なくなるのも…』
リリィはあまり自分の意見を言わない。
『私は悲しいです…』
そんな彼女が望む数少ない願いが、ボクの言動で叶えられるのなら、お安い御用だ。
「大丈夫。彼等とは戦わないよ…」
『!』
腕を伸ばし、俯く頭を撫でてやれば…情けない顔でこちらを見る。
「だから、そんな顔をしないでおくれ…リリィが悲しむのはボクも辛い…」
ボクは気紛れだし、嘘も吐くけど…この思いだけは本当だよ。