※現代パロ


下地を薄く置いて、毛穴の気になる箇所にはコンシーラー。ある程度整えたらクリームファンデをのせる。
ポーチからビューラーを出して、上睫毛を逸らして下睫毛もグイグイ逸らす。多少の痛みは美しくなる為の布石だ。我慢。
さてさてここから肝心のアイメイクだ。ペンシルでアイラインをひいて、上からリキッドを重ねる。お気に入りブランドの最新アイシャドーをさりげなく瞼にのせてさりげなくグラデーションを作る。うん、良い出来。
ここまでやってもお昼を過ぎたら崩れるのだから、やってられない。
かと言って化粧をしないのはこの時代に生まれた女としての嗜みを捨てるに等しい。今時は中学生だって小学生だってメイクをするのだ。社会人の私がしないでどうする。
気合いを入れ直して次はマスカラをぐりぐり塗りたくる。瞼に付かないよう細心の注意をはらい、横に縦にとブラシとコームを駆使して天まで届くくらい長く太い睫毛を作る。良ーし完璧。
チークとハイライトをふわっとのせたら出来上がり。

手本にしていた雑誌を無造作に投げ出してメイク道具の溢れた机上を片付ける。


「うあーめんどい」

「花子がこだわり過ぎなんです」


椅子の背もたれに後頭部を乗っけたまま見上げると、ソーマがいつもの無表情で私を見下ろしていた。かわいいな。
さらさらと揺れる色素の薄い彼女の髪の毛を一束摘んだら、ソーマの顔まで引っ張ってしまったらしい。これでほとんどスッピンなのだから、ホントやるせない。私の努力は水の泡だ。
憎たらしくなって、少し強めに髪を引いて鼻の頭がくっつくくらいに顔を近づける。ソーマはそのまま素直に私と目を合わせて普段はしない不敵な笑みを浮かべた。


「花子の素顔も魅力的だと思いますよ」

「読心術禁止!」

「そんなことしなくとも、顔に出ています」


ちゅ と口の端にキスをされたら、どんなにファンデを重ねても赤面は隠せないじゃないか。ちょっと前まで私からしなきゃ手さえ繋いでくれなかったソーマが、いつの間にこんな色っぽい表情をするようになったのか。まあ私の所為なのだけど!
年下に翻弄されるのは趣味じゃないので、空いた片腕でソーマの頭を鷲掴みにしてその唇に噛みついた。


「まるで子どもですね」

「ソーマって猫かぶりだったんだね…」




埋葬してグレーアイズ
090117

 


T O P

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