(ねえねえそーご君)

(なんでィ)

(大きくなったら花子とけっこんしてください)

(逆プロポーズとはだいたんだな)

(だめ?)

(じゃあ花子のおっぱいがCカップ以上になったらかんがえる)

(やた!じゃあがんばるね!)

(え、なにを)

(もんだら大きくなるって銀ちゃんが言ってた)

(あのやろう…)





幼なじみが大好きで、大きくなっても彼の隣にいるのが自分であれば良いって思ってた。
拙い言葉で一所懸命に伝えた想いは成長した今も変わらず、私は総悟君のことが大好きで、大好きで。
だけれど。

山田花子17歳。約束の日から10年を経た現在、バストサイズBカップ。


「揉んだら大きくなるって嘘だ!」

「おま、玄関先で何言ってやがる。めっ!」


お隣の銀八さんちに無断で上がり込んで当たり散らすのが最近の私の日課になりつつある。
銀ちゃんは毎日パソコンと睨めっこしながらも私の相手をしてくれる優しいお兄さんだ。
胸を大きくする方法と結婚は16歳になってから、男は18歳になってからという法律を教えてくれたのが銀ちゃんなのである。


「10年間毎日揉んでるけど大きくならないんだもん」

「あー…そりゃアレだ。揉み方が悪いとかじゃねぇの」


どうやってんの?と聞かれたのでエアおっぱいを二つ鷲掴みにして外側に向けて揉むフリをしてみせた。
あとは滅茶苦茶に、とにかく大きくなりますようにって願いながら揉みしだいてますが、なにか。


「あのな、おっぱいってのはもっと優しく扱うもんなの。んな強くしてたら逆に縮むんだよ」

「うそっ」

「こっち来てみ、教えてやっから」


ちょいちょいと手招きされて銀ちゃんのすぐ近くにまで行くと、今度は膝に座るように言われたので出来るだけ体重をかけないようにして座った。
小さいころはよくこうやってお昼寝をするのが好きだったなあと思い出す。


「こうやってだな」

「ちょっ!どこ触ってんの!」

「どこってお前の手ですけど」


銀ちゃんは私の両手を掴んで、私の胸にあてがった。
俗に言う手取り足取りな教え方なんだろうけど、銀ちゃんに直接触られているみたいで少し緊張する。
実際に触っているのは私自身だから普段と変わらないのだけど。


「揉むだけじゃなくて押したり引っ張ったり、あと乳首いじるのも大切なんだぞ」

「乳首は良いよ。おうち帰ってからにする」

「じゃあ引っ張ってみるか」


さわさわと私の掌ごしに二つの膨らみを触りながら銀ちゃんはおっぱいへのこだわりとか持論を語ってくれた。
巨乳好きはマザコンで、つるぺた好きは真性のロリコンか二次オタ、ちなみに銀ちゃんはおっぱいマスターだからどんな胸だろうが勃起するらしい。
おばあちゃんでも?と聞いたら感度の問題だと返ってきた。
やばい、本物だ。

暫くおっぱい談議に華を咲かせていたらふと、銀ちゃんが私の手をどけて直に胸に触った。


「このくらいが調度良いんじゃねーの」

「でも総悟君はC以上って」

「なんでィ、乳繰り合うなら鍵くら閉めろって」

「そっ!そごくっ!!」


突然の訪問に驚きすぎて銀ちゃんの膝から滑り落ちた。
べたんっとお尻から着地する形になって、私は総悟君の目の前で尻餅をつきながらM字開脚というハードな羞恥プレイを披露してみせた。不本意ながら。
そして総悟君も私のパンツを見ることになる。不本意ながら。

しかし私の脳味噌は足を閉じることよりも先に昨晩のお風呂上がりを思い出すことに必死だった。
確か用意した下着は最近流行している派手な柄のボクサーパンツ。


「色気の欠片もねえな」

「死にたい…」


今更足を閉じたところでパンツの柄が変わることもなく、私は放心してそのままでいることにした。
否、放心しているんだからそこに私の意図はない。断じて。

銀ちゃんはきっとにまにま笑いながら私と総悟君を見ているに違いない。

ちらりと見上げたら総悟君は心底嫌そうな、苦虫を噛み潰したような、とにかく酷い顔色をしていた。
Bカップ女子のパンツなんかクソ食らえってか!傷つく!


「銀さんは誰にでも股を開くような女の子は好きじゃありませーん」

「嘘吐け、この風俗通いが」
「風俗なんて知りませーん」


私とは無縁の単語が飛び交う中で漸く私は足を閉じてその場に立ち上がった。


「どうせ見られるなら、もっとひらひらのスケスケ着ければ良かった…!」

「スケスケなんざ持ってねぇだろィ」

「何で知ってるの!」


もうやだ、口から火が出そう!!
あんまり恥ずかしいものだから私は挨拶もせずに銀ちゃんちから逃げ出した。
持ってるもん、スケスケ下着くらい、今から買いに行くもん!

勢いよくドアを叩き締めたところで、いよいよ本格的に涙が溢れてきた。
Bカップでボクサーパンツを着けちゃうような幼なじみを、総悟君が女として見てくれることがあるのだろうか。


「あーあ。ありゃ泣いてるね」

「知るか。あいつが勝手に泣くんだ」

「まったく…ガキが背伸びしてんじゃねーよ。てめーの掌からこぼれるようなおっぱい、お前にゃまだ早えーっての」

「黙れロリコン。俺はでかいのが好きなんじゃなくてでかくするのが趣味なんでさァ」

「怖っ!!こっわっ!!そこらの変態より変態だよお前!変態っつーか、もうアレだなアレ!ああアレだよ!!」

「何だよ」



おしまい。



アレと言えばコレしかないだろ
銀八さんは売れない官能小説家という設定

 


T O P

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