錆び付いた水晶体


錆び付いた水晶体
震える睫毛にキスをした
空気に溶けた願望
きみを抱く両腕を赦せよ
目が眩むほど遠かった
無垢の面影を掻き消して
熱を感じる指が欲しい
明日に啼く鯨
澄み渡るあの世界へ
回帰する矛盾点
二酸化炭素を浮遊して

淡色の水彩に透ける
飛び降りるのも悪くない
この赤では生温い
望遠鏡の果てに見えた
ならばそのまま沈むがいい
道化師が僕を嘲笑う
烙印を刻もうか
プリズムと衝動
終焉をお望みですか
切っ先が愛おしい
いつか彼方でまた逢おう

反芻する聖少女
空虚を患う真夜中三時
あの世の隣で微睡んで
健やかな病
静謐を欠いた処女
服の下に隠した欲望
薔薇色に呼吸困難
子宮に抗う術はなく
その右手に恍惚を
純白を塗り潰す
蜂蜜塗れの肺をひとつ

さあ世界、お手をどうぞ
明日を一気にすり抜けて
機械仕掛けの天国へ
深海の底に昇る満月
失うものなど何もない
青い地球を転がして
錆びた肋骨が軋んでいる
虚無に怯えた掌
逆さまになって堕ちていく
真空の街で窒息死
全て不平等で出来ている
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