頂きました | ナノ






俺も、世界が違えば名前の様に“家族”が居たんだろうか。
それは、俺の知る所ではないけれど。

この選択に、俺は後悔はしていないのも確かだ。



「…今だけでも、俺が“家族”になる事は出来ないか?」

「えっ?」

「だってナマエ、寂しそうな顔してるぞ。」



苦笑しながら言われた言葉に、俺は思わず自分の顔に触れる。
俺がそんな顔してたのか、分からなかった。

まぁ、自分の顔が見れる訳じゃないしな…



「世界は別でも、俺とナマエは同じだろ。一応血も繋がってるし。」

「そうなるな。」

「…ナマエって何歳だ?」

「二十五。」

「…俺より年上だと?」



あ、そうなのか。
てっきり俺と同じ年かと思ったんだが…

と、いう事は。



「名前は俺の妹的な感じなのか。」

「妹…」

「はは、名前みたいな妹なら大歓迎だな。」

「なっ!ちょ、頭撫でるな!」



笑いながら名前の頭を撫でたら、そう怒鳴られた。
別に怒鳴らなくてもいいだろ。

と言うか、顔真っ赤にして言われても怖くもなんともないぞ。



「まぁ、俺は男だからな。背丈の関係上、どっちが年上かなんて分からないさ。」

「そうだけど…あ、じゃあナマエが弟でもいいって事か。」

「年齢聞いてからのそれはちょっと、無理があるんじゃ…」

「駄目なんじゃないか!」

「いてっ。」



怒った名前が、俺におしぼりを投げ付けた。
地味に痛いんだが…

片手で顔を押さえていると、名前が俺の頭を撫でてきた。



「年齢が上の弟なら沢山居る。だから、別にナマエが弟でも構わないだろ。」

「…そうだな、白ひげ海賊団は名前以上の年齢だもんな。」



あそこで二十代は数少ないんじゃないだろうか。
それに加えて、名前は副船長…言わば姉の立場。

甘えられるのは慣れてるって事か。



「それでも名前は多分だけど、エースと同じ末っ子ポジションじゃないのか?」

「…姉だ。」

「マルコとかサッチとか、絶対に名前の事末っ子だと思ってそうだけどなぁ。」

「姉だ!俺が姉だと言ったら姉だ!」

「いてっ!図星突かれたからって、俺を叩くなよ!」



だから、顔真っ赤にしてそう言ったって怖くないんだって。
おしぼりと同じぐらい痛かったけど。

ふと、いつの間にか頼まれていた追加のアップルパイが来た。
それを見て、名前が席に戻る。



「…アップルパイ、好きなのか?」

「んむ?まぁ、そうだな。他のパイも好きだけど。」

「へぇ…」



じゃあミートパイとか、レモンパイとか、クリームパイとかも好きなのか。
あぁでも、その中でもアップルパイが一番って感じっぽいな。

そう言えば、別名パイの島って言うのが何処かにあった気がする。
新世界の何処かだったかな、そこ。



「ナマエは好きな食べ物はないのか?」

「俺は別に…食べ物よりも酒の方が好きだ。プッチの酒が美味いぞ。」

「プッチの?」

「それと酒の島って呼ばれる島があって、島中酒だらけなんだ。そこの島の酒も美味い。」

「なんだその島。」

「ついでにパイの島と呼ばれる島も行った事がある。島中パイだらけでな、結構美味かった記憶がある。」

「本当か!?」



席を立ち、興奮した様に名前はそう言った。
まさかそんなに喰らい付くとは思ってもみなかっ…いや、ちょっと思ってた。

そんなに好きなのか、パイ。



「何処にあるんだそんな島!」

「俺の世界と名前の世界が同じとは限らないからなぁ…一応、新世界にあるとだけは言っておく。」

「新世界…今までそんな島に行った事はないな…お菓子が大量にある島なら行った事があるんだが。」

「お菓子が大量にある島か…」



シャーロット・リンリンが喜びそうな島だな。
確かシャーロットはお菓子好きだった筈だし。

確かシャーロットにも仲間にって言われてたな、俺。



「仲間…そうだ。)なぁ、名前。名前の“家族”の話を聞かせてくれないか。」

「“家族”の?」

「あぁ。俺の知るエース達とは違うだろうし、興味があるんだ。」



名前の“家族”が、どんなものなのかが。

そう言うと、名前はポカンとした表情を浮かべた。
ただそれも一瞬だけ、次の瞬間には苦笑を浮かべた。



「あぁ、分かった。俺の“家族”の話を聞かせてやるよ。」

「是非、頼む。」



名前の話す“家族”の話。

特攻隊のセツって言う奴がウザいとか、ナース達がちょっと(?)変態入ってるとか、サッチの作るアップルパイは美味いとか。
エースが仕事をちゃんとしてくれないとか、マルコの髪型はパイナップルかバナナだと思うとか、親父はいつ見てもカッコいいだとか。

なんか色々気になる所があるけど、“家族”の話をしてる名前は凄く良い表情をしていた。
本当に“家族”が大事で大切なんだなぁって、思わせるぐらいに。



「…これぐらいだな。じゃ、ナマエの番だな。」

「俺の番?」

「今度はナマエが話す番って事だ。ナマエは海軍なんだろ?ナマエの世界の海軍の話を聞かせてくれ。」



もしくは、ナマエの知る海賊の話とかな。

話し終えた名前に、そんな事を言われた。
俺の知る海賊…か。



「そうだな…じゃあ、海軍の方から話そうか。」

「おう。」



そして、俺は話した。

クザン、サカズキ大将、ボルサリーノ大将、センゴク元帥、おつるさんの事。
七武海のドンキホーテ、ジュラキュール、ボアの事。

白ひげ海賊団、赤髪海賊団、麦わら海賊団、ハートの海賊団とキッド海賊団(此処で何故か名前の表情が引き攣った)の事。
取り敢えず覚えてる限りの事を全て、話した気がする。

と言うか、俺の方が人数多過ぎるだろこれ。



「…で、終わりだ。」

「世界中ブラブラしてるだけあって、大人数と知り合ってるんだなナマエは。」

「まぁな。細かい事言えば、もっと会ってるけど。」

「これ以上誰と会ってんだ。」

「主に海賊だな。後は島々で知り合いが何人か出来たりとか…」

「…仕事とか出来てんのか?」

「ちゃんと出来てる。」



帰ってからちゃんと仕事は処理してる。
終わらせて、また世界中ブラブラしたいしな。

残すなんて事は、絶対にしないし。



「山積みの書類でも、頑張って一日で処理するようにしてる。」

「…ナマエみたいな奴が仲間に居てくれたら、凄く助かる気がしてきた。」

「名前まで俺の世界の海賊と同じような事言うんだな。」

「だってそうだろ。エースとか俺の隊のセツとか、仕事しない奴が居て困ってるんだ。」



ナマエみたいに仕事をちゃんとしてくれる奴が欲しい。

そんな懇願するような目で言われても…
と言うか、そんなに困ってるのか。


 

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