リクエスト作品 | ナノ






「フィユータジュ島?」
「それが次に着く島なのか?」
「あぁ。なんでも、“あの”ビック・マムのお気に入りの島らしいぜ」
「へぇ…それならさぞかし美味いお菓子があるんだろうなァ」

ビック・マムといえば四皇のうちの一人であり、極度のお菓子好きとして有名である。(…お菓子が原因で国を滅ぼす人物を極度のお菓子好きと言っていいのかは分からないが。)そんな人物がお気に入りの島とあれば、誰もが期待をしてもいいだろう。そして、お菓子好きといえばこの海賊団にも思い当たるのが一人。

「副船長喜ぶだろうなー」
「ははは、買う物リストとか作ってんじゃねーの?」
「ありそう!覚えきれないくらいにありそう!」
「俺が暗記してるから大丈夫ッスよ!」
「!? ちょ、セツ!お前どっから湧いた!?」
「セツ…お前本当に姉さんに忠実だよな…」
「姉さん専用の犬と呼んでくれても構わないぜ」
「いいのかよ」
「お前はもう少し自分の人権っつーものを大事にするべきだと思うぜ…」

呆れた目を向けてくるクルー達など目もくれず、セツは一人楽しそうに記憶しているお菓子の名前を指折り数えている。それが両手を超えたところで、クルー達は口元を引き攣らせた。覚えているセツもだが、それだけの量のお菓子を買う予定のナマエも中々…アレである。

そこに、背後から扉を開く音が聞こえた。噂をすれば影が差す。隙間から顔を出したのは話に出て来たナマエだった。

「おいそこの犬。リストが増えたからもう一回覚え直せ」
「ワン!」

今日も白ひげ海賊団は平和である。



甘い、酸っぱい



「ビック・マムのお気に入りとあって、中々美味そうなお菓子があるなー」

フィユタージュ島に着いた白ひげ海賊団。今回の上陸の目的は主に物資の補給だ。買い出し担当のジョズ率いる三番隊は、甘ったるい香りに辟易としながら町へ消えていった。

「ナマエはもう買い出しに行ったのかい?」
「らしいぜー。特攻隊引き連れていったってゼキが言ってたし」
「そういうゼキは留守番かい」
「受け取り係だってよ」
「…どんだけ買う予定なんだい…」
「材料不足で暫く甘味不足だったからなぁ…」

苦笑するのはマルコとサッチ、そしてエース。その隣ではイゾウが煙管をふかせている。

「それにしても、ハルタが書類不備なんて珍しいよなァ」
「菓子に目がくらんだんだとよ」
「昨日随分と必死に処理してたってのにねい…」

この場にいる全員の脳内に、「お菓子!俺もお菓子いっぱい買う!」と張り切って書類整理をしていたハルタの姿が浮かぶ。しかし、非常に残念なことに小さな計算ミスがあったことでハルタの書類再提出が決定された。それは、つい先日十二番隊が沈めた敵船から大量に押収した金品等を換金して書類にまとめたものだったのだが…まさかの計算ミス。さらに表の数字がいくつかずれていたということまで発覚。(それを知った時のハルタの顔ときたら、まるでナマエがおやつのアップルパイを落とした時のような絶望感丸出しの表情だった、と目撃したラクヨウは語った。)

「量が量だからな…多分夜までかかるだろうなァ、可哀想に」
「そう思うなら手伝ってやれば「さァて、菓子でも見てくるかねェ」…可哀想に、ハルタ」
「全くだねい」

はは、とサッチとマルコは空笑いするも、自分達が手伝ってやろうという気はないのだった。片や見たことがないお菓子を求めて、片や自分自身の興味を引くものを求めて、甘い香りが充満した町に足を進めた。

ちなみに、エースは甘い香りの誘惑に耐えきれず、話の途中で一足先に町へと飛び出していったのだった。




≡≡≡≡≡≡




所変わって、ジョズ率いる買い出し組である三番隊。久々の買い出しとあって量も多いが、体格の良い者が多い三番隊には問題など一切ない。

「ジョズ隊長ぉー」
「何だ」
「俺、ナマエ隊長とビック・マムって仲が相当悪いって聞いたことがあるんですけど…」

この島、降りて大丈夫だったんですか?と言葉を続ける隊員。ジョズはそれを一瞥し、食料の詰め込まれた箱を抱え直した。

「まぁ、ナマエとビック・マムの仲が悪いのは本当だ」
「え、マジですか!?俺その噂すら疑ってたのに…」
「……」

かなり驚いたという顔で見てくるもう一人の隊員に、ナマエとビック・マムの小競り合いで島一つが消えかけたということは黙っておこうと思ったジョズであった。

「…だが、ビック・マムの息がかかってるというだけならナマエにとって大した問題ではない」
「…はあ、成程」
「良かったぁ…。俺、島降りたのはもしかして宣戦布告的なアレなのなのかとばかり…」
「とはいえ、この島で問題を起こせばビック・マムはナマエからの宣戦布告と受け取るだろうな」
「エース隊長じゃないんだから大丈夫ッスよ〜!」
「そうですよー!」
「……」
「…大丈夫ッスよね?」
「……」

有り得なくはない。その一言がジョズの脳内で浮かび上がっていた。あの姉弟は変な所で似ている。エースが問題を起こしかければナマエが諌めるのだが、ナマエが問題を起こしかければ誰が諌めることができるというのか。恐らくナマエは特攻隊を率いて島に上陸している。マルコやイゾウがいればナマエを抑えられるかもしれないが、特攻隊の隊員はナマエ一筋である。抑えるどころか背中を押すだろう。

ジョズの沈黙に察しがついてしまった隊員達は冷や汗を流し始めた。

「「「(ナマエ(隊長)…頼むから問題を起こさないでくれよ…)」」」

その時、三番隊の心の声は一つとなった。








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