リクエスト作品 | ナノ






あ?アイツの誕生日?
んなの知らねぇよい。



これは、ナマエが白ひげの船に乗って間もない頃……ナマエが俺に懐くきっかけとなった物語。



「はぁあああ!!?」

俺の言葉に異様な程に驚いたサッチ。うるせぇな。

「だっ、おまっ、たんっ!!」
「何言ってんだよい」
「げふぅっ!!」

まだ騒がしく喚くサッチを一発殴る。今は朝だ。もっと静かにしろい。

「だって、お前、誕生日だぞ!?」
「知るか」

“烏のナマエ”

そいつがこの船に乗ってから二ヶ月。最初の頃は刀を振り回すわ、銃を乱射するわ、銃弾が無くなったら今度は素手で殴りかかってくるわで大変だった。10億の賞金首なだけあってそこそこ手強いため、とりあえず刀も銃も取り上げた(そしたら凄い勢いで暴れたが)。アイツは手負いの野良猫通り越して手負いのライオンみたいだった。

つーか、大体アイツが誕生日ごときで喜ぶように見えんのかよい。どう考えたって無表情で「こんなんで喜ぶか」って言いそうだ。

「ナマエだってまだ17のガキだぜ?」

まぁ今年で18歳か、と笑うサッチ。…………………はぁ!?

「17!?」

あんだけ大人びてるヤツがまだ17歳!?確かに背は低いが、あの冷めた感じからしてもう20歳は越えてると思ってたのに。

「あれ?マルコ知らなかったのか?」
「逆に何でお前は知ってんだよい」
「聞いた」
「は?」

聞いた?あの手負いのライオンから?俺なんかこの前近付いただけで(恐らく食堂から盗ったんだろう)ナイフを投げられたよい!?

「アイツ話せたのか…」
「お前はナマエを何だと思ってんだ」
「手負いのライオン」
「…………」

サッチ、何だその微妙な顔。

「誕生日、ねい……」

食堂を出て自室に戻って、ポツリと呟いた。そしてアイツが欲しがりそうな物を想像してみる。

ケーキ…は甘いから嫌がられそうだ。
酒…はガキにやるもんじゃねぇな。
刀や銃…も上と同じだな。

アイツが欲しがりそうな物が全く想像できず、首を捻る。

「……………はぁー…」

暫く考えても何も思い付かず、溜め息を吐いた。非常に不本意だが、サッチに話でも聞こうと俺は自室を出た。


「――」
「―――、―」

食堂の前に着いて、誰かの話し声が聞こえた。この声はサッチと……

「(ナマエ?)」

ナマエの低過ぎず高過ぎないテノール。それはまるでさざ波のようで、俺は嫌いではなかった。




≡≡≡≡≡≡




「ナマエ、まだマルコに言ってねぇのか?」
「…言う機会がない」
「嘘吐け。めっちゃマルコを見てるくせに」
「………」
「言い出したのはナマエだろ。せめて言うだけ言ってこいよ」
「…それが出来たら苦労しない」
「…はぁ、」

何だよ。溜め息なんか吐くな。俺だって少しは話しかけようとしてんだよ。

そう言って、目の前のリーゼントを睨む。そうすると何故か笑って俺の頭を撫でてくるリーゼント。何なんだコイツ。

「………、…だ」
「ん?」
「…この船のヤツら、変だ」
「?」
「…あのマルコってヤツも、お前も変だ」

変、だ。俺を船に乗せるなんて。俺に話しかけるなんて。俺の頭を撫でるなんて。俺なんかに笑いかけるなんて。俺は……、俺は…、俺、は……。

語尾が小さくなっていくのが自分でも分かる。真っ直ぐこちらを見るコイツの目が見れなくて、俯いた。

「……構うなよ」

俺は、バケモノなのに。

「「そりゃ無理だ(ねい)」」

聞こえたのは、初めての拒絶。













× 

戻る



「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -