「マルコ隊長!」
「ん?何だよい」
廊下で歩いていた俺に声をかけてきたのは最近白ひげ海賊団に入った若い航海士。確か名前は…レオだったか。
「そろそろ島に着くんですが、もしよければ副船長にも伝えてもらっても良いですか?」
「あぁ、今からナマエのところに行くつもりだったからついでに伝えとくよい」
「ありがとうございます!」
元気よく返事をしたレオは輝くような笑顔を浮かべて来た道を戻っていった。(その笑顔がエースにそっくりで、少しだけ殴りたくなったのはここだけの話にしておこう)
とんとん
「ナマエ」
副船長室の扉をノックする。人の気配はあるから部屋にいるのだろうが返事がない。…まさかエースがまたナマエの部屋に忍び込んでるのか?とも思ったが、この前エースがナマエに散々叱られていたのを思い出して、それはないだろうと思い直した。
「ナマエ?」
現在、時間帯的には深夜。もしかしたら寝てるかもしれないとは思ったがとりあえずもう一度ノックをしてみる。と、
「…ん……開いてる…ぞ…」
扉から返ってきたのは弱々しい声。…もしかして寝ていたのだろうか。そういえば、今日は月に一回の特攻隊の休みの日。深夜の見張りを担当している特攻隊だが、毎日それでは流石に疲れるだろうとオヤジや俺を含める隊長達が月に一回だけ特攻隊の休みを作ったのだ。(ナマエは最後まで遠慮していたが)
「もしかして寝てたかい?」
「……ん、まぁ…少しだけ…な」
「悪いな…起こしちまって」
「気に、するな……」
扉を開けてベッドを見れば、眠そうに目を擦りながらこちらに目を向けるナマエの姿が。
寝ながら話すのは悪いと体を起こそうとするナマエを慌てて止め、そんなに大した用事じゃないからと言ってナマエをもう一度布団に沈める。
「でも……」
「そのままでいいよい」
「…む…」
ぽふぽふと頭を撫でてやれば、とろんとした目で俺を睨むナマエ。唇を尖らせながらも渋々と布団の中に入った。…何だこの可愛い小動物は。
「んで…用は、なんだ……?」
「航海士がそろそろ島に着くって言ってたよい」
「ん……そう、か」
「それと、」
と、俺が続けようとした言葉はナマエが今だナマエの頭を撫でていた俺の手を掴んだことにより中断された。
「…ん……」
「##NAME2##、ナマエ…?」
「マルコの…手、冷たいな……」
「あ、あぁ…さっきインクで手が汚れたから洗ってきたんだよい」
「そ、か……」
とろとろと今にも目を閉じそうなナマエ。だが、俺の手を掴んでいる小さな掌は力を緩めない。
「ナマエ?」
「…ん、」
「手、放せよい」
「…む、う」
俺が手を引こうとすると嫌だと言わんばかりにナマエは眉間に皺を寄せる。ナマエは俺の手にすりすりと摺り寄り、そのまま目を閉じる。…何だこの可愛(ry
……や、ちょっと待て。
「##NAME2##、ナマエ…!?」
「んー…?」
「(何でそのまま寝ようとすんだよい!?)」
寝ぼけているのか、俺の手を掴んで放そうとしないナマエ。心なしかさっきより力が篭もっている気がする。
「ナマエ、手放せよい」
「…や」
「寝るんだろい?だったら…」
「マルコのて…つめたくて、きもちい……から、やだ」
「……」
…寝ぼけてる。確実にナマエは寝ぼけている。いつもの男らしい口調は何処へいったのか、まるで子供のように甘えてくるナマエ。(…エースとサッチがいたら鼻血どころじゃ済まないだろうな)
とりあえずナマエから手を抜こうと少しだけ手を引く…が。
「…や、」
「(寝ぼけてるくせに何でこんなに力が強いんだよい!?)」
俺の手を全く放す気がないらしく、さっきより確実に力が篭もったナマエの手。俺はといえばさっきより焦っていた。
…俺だって男だ。好きな女に触られていて変な気が起きないわけがない。ギリギリと悲鳴をあげる理性を何とか働かせ、ナマエから手を放そうとする。
「##NAME2##、」
「ん……まる、こ」
ぎゅう、とナマエは俺の手を握り、ふにゃりと微笑んで俺の名前を呼ぶ。
……ぷちんと俺の中で何か切れたような音がした。
…ギシ、
「…、まるこ…?」
俺はナマエに覆いかぶさるようにベッドに乗った。ナマエはうっすらと目を開いたが、まだ寝ぼけているみたいでただ首を傾げているだけ。それがまた俺を煽っているようで、俺は更にナマエとの距離を詰めた。
「…ナマエ…」
ナマエの首筋に顔を近づける。風呂にでも入ったのか、ナマエからは石鹸の香りがした。
そこまでしてから、ナマエが全く無抵抗なのが気になって少しだけ離れて顔を覗き込んだ。
「………」
「……ナマエ?」
「………すー…」
「(寝オチ…!?)」
俺に聞こえたのはナマエの熱い吐息………ではなく寝息。…こ、ここまできてお預けかよい…!?
なんてベタな!
(すー…)
((くっ…!襲っちまいたいよい…!))
(んむ……)
((……))
(……ま、るこ…)
((…これくらいは許してくれよい))
ちゅ、
(ナマエー!…ってマルコぉおおお!?何してんのお前ええええ!?)
(…煩いよいエース…)ズゴゴゴゴ…
(えぇ!?何でマルコが怒ってんの!?)
((俺だって本当はもっとしたかったんだよい!!))
翌朝、よく眠れたのかすっきりとした顔のナマエがこのことを全く覚えていなかったのは言うまでもない。
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