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「セツさんって、いつから特攻隊に入ってるんですか?」
「あれ、お前知らないのか?」
「新人なもので…」
「セツか…セツは特攻隊が出来た時からいるぜ」
「へぇー……あれ、じゃあセツさんって結構古株?」
「ん?…んー、?どうだっけ?」
「キイチが白ひげに正式に入ってから拾ってきて…で、時々勝手にいなくなったり帰ってきたりを繰り返してたな」
「え、いなくなったことあるんすか」
「何度かな。俺達は知らないけど、キイチ隊長は訳を知ってるみたいだったし」
「姉さんを噂する声がここから聞こえる!」
「わあ!セツさん!?」
「流石、誰もが認めるキイチ隊長クラスタ…」
「姉さんの悪口は俺が許さねぇぞ!」
「隊長の悪口じゃなくって、セツの話をしてただけだっての!」
「ついでに姉さんの萌え話をしていいのは姉さんファンクラブに入ってる人間だけ………え、俺の話?」
「(さり気なくおかしなこと言ってやがる…)」
「そうですよ!俺、セツ隊長に憧れてここに入ったんですから!」
「は…?お前、それ本気で言ってんの…?」
「あれ、この場にいる全員がドン引きし出した!?」
「ごめん、当の本人である俺でもちょっと引いたわ…」
「貴方に憧れてるんですけど!?」
「姉さんに憧れないなんて人間のクズだわ…」
「え、そこですか!?確かにキイチ隊長は格好いいですけど!」
「テメェ何俺の姉さんをやらしい目で見てやがんだ!?」
「やだこの人面倒くさい!!」
「世にも珍しいセツ支持者が減ったな」
「あぁ、絶滅危惧種が二日で滅んだな」
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初めて海賊に負けた。しかも俺より小柄で、弱そうな子供に。
「俺の勝ちだ」
「……何が望みだ」
「お前からは何もいらねェよ」
空虚な、いや、胸の中に溜まっていた黒い蟠りが無くなったような、そんな気分。海賊は大の字に倒れている俺に近付いてきて、刀を突きつけてきた。
「ただ、お前は何もしないで俺に好きにされてりゃいいんだ」
バキッという破壊音が聞こえた。首元が妙に涼しくなる。ふと地面を見れば、壊れた首輪が転がっているのが見えた。
「俺と来いよ」
海賊の背中から、太陽光が差してきて、
「あんな顔(退屈)はさせねェぜ?」
にやりと笑う、顔が、綺麗で、
「………な、まえ…」
「ん?」
「なまえ、教えてくだ、さい…」
「キイチ、だ」
「(…キイチ、さん……キイチさん…キイチさん…)」
「お前の名前は?」
「……無い、っす」
「無い?新聞に名前が書いてあった気がしたが」
「…呼び名はあったけど、名前じゃない」
「ふーん……」
「……」
「じゃあ、俺がつけよう。今日からお前は『セツ』だ」
「セツ…?」
「あぁ、名前が無いとお前を呼べないからな。セツ、俺の家へ行くぞ。お前を家族に紹介しなきゃな」
「家…家族…?紹介…?」
「おう、新しい“家族”だってな」
家族ってなんだろう。家ってなんだろう。俺、物覚えが悪いから、そんなに一気に覚えられねェよ。覚えなきゃって思ってもすぐに忘れちまうし、覚えたと思ってもその記憶をどっかに置いてきちまう。
「お前は、自分の名前がセツで、俺の家族になったってことだけを覚えとけばいいんだよ」
言い方は指揮官殿とそっくりだったけど、あいつとこの人、キイチさんは全然違った。
「これから好きなように生きて、好きなように笑って、好きなように楽しめ。それが、お前だけの人生だ」
俺はこの日から“セツ”になった。
“セツ”になって初めて覚えたのは、キイチという人の名前だった。
そして、俺の世界はキイチと家族になった。
こんな日が来るなんて思わなかった
(色んなことを知った)
(貴女と見る空がどれほど綺麗か)
(貴女と話すことがどれほど楽しいか)
(貴女といる時間がどれほど愛おしいか)
(全部、貴女から教わりました)
(大好きです)
(ありがとうございます)
*・*・*・*・*
セツは海軍の指揮官殿に海賊を殺す為だけに飼い殺されてて、ストレスの関係か何かで記憶力の低下のような何かがあって、でも姉さんについていって白ひげの入ったら段々とストレスが緩和されて、記憶力も元に戻っていったという話。
セツの癖にこんな長い話を書かせおってからに…!覚えとけよ…!(ギリィ)
タイトルは確かに恋だった様よりお借りしました。初めてお借りしたのがセツのためとは…!覚えとけ(ry
∴14/08/27 修羅@
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