「あっ」


「っと、悪い」



曲がり角でぶつかった相手を、慌てることなく支えたキイチ。腕の中の存在を見れば、くりくりとした目がキイチを見上げていた。



「お前は…新しく入ったナースか」



キイチが声をかければ、ナースはピクッと反応して慌てて距離を取った。その頬は僅かに朱に染まっている。



「…っは、はい!アンネといいます!三日前にこの海賊団でナースとして働かせていただくことになりまして…」


「あぁ、エリザから聞いている。手先が器用だそうだな」


「はい。手が小さいので細かい作業に向いて……!?」


「確かに小さいな。俺より一回り小さいくらいか」



そっとアンネの手を取ったキイチが、触ったり見つめたりしながら確認する。傷や肉刺の多いキイチの手に比べれば、アンネの手は白くて傷も少ない。女性と言うよりも少女と言った方が正しい手だ。手を合わせている間、アンネが首まで赤くしていたがキイチは気付かない。

そんな中、キイチの後ろからサッチが現れた。



「キイチ、書類集めしてんだったら俺のも渡しとくわー」


「ん?あぁ…。サッチ、さっき部屋にいなかったよな」


「あ、俺の部屋行ったの?悪い、さっきハルタにカフェオレ持っていってやってたんだ」


「そうだったのか」


「キイチも何か飲む?後で部屋持ってくぜ」


「んー…ブラックコーヒー」


「駄目。徹夜してんだから胃が荒れるだろ?ホットミルクか紅茶な」


「む……じゃあ、紅茶」


「はいはい。アップルパイも持ってくから、そんな膨れっ面しないの」


「…うるさい撫でるな。アップルパイは大きめのにしろ」


「分かった分かった」


「キ、キ、キ、キイチ隊長…!!わ、私、仕事がある、ので…!!」


「ん?…あぁ、時間を取って悪かったな。仕事頑張れよ」


「あ、アンネちゃんだっけ?頑張ってなー」


「はひ………!!」



ふわふわとした赤毛を翻し、アンネは廊下の奥へと消えていった。サッチはキイチの頭を撫でてから食堂へ向かった。二人の背中を見届けたキイチは、左腕の書類を抱え直し、書類提出が遅れているラクヨウの部屋へ向かう足を進めた。




≡≡≡≡≡≡




「はぁああああん……!!」



さ、触られてしまった…!話してしまった…!あのキイチ隊長と…!!しかも見てしまった…!



「あら、アンネ。探したわよ」


「一体どこに…って、あら。顔真っ赤っか」



医務室に駆け込んだ私を出迎えてくれたのは、ナース長のエリザさんと薬の残量を調べていたユーリさん。このお二人は、私が白ひげ海賊団に入るきっかけとなった人物だ。



「やっと会えたの?キイチ隊長と」


「は、はい…!しかもサッチ隊長と話しているところを目の前で見てしまいました…!!」


「な、何ですって…!?」


「落ち着きなさいな、ユーリ。鼻血出てるわよ」


「ナース長こそ落ち着いてください。これは鼻血ではなくトマトジュースです」


「はいはい、この前は鼻からケチャップを出してたのよね」



ガタッと席を立ったユーリさん。その目は獲物を見付けた肉食獣であり、鼻からは真っ赤な液体を迸らせている。それを見たエリザさんが、慣れた手つきでこよりを作ってはユーリさんの鼻に詰めていく。完全な流れ作業である。しかしそこはスルーして、先程目の前で行われたやりとりを思い出す。

当然のように相手の行動を理解して気遣いをするサッチ隊長。それに少し拗ねた表情をしつつ、アップルパイの一言でふわっと空気を和らげるキイチ隊長!そしてそんなキイチ隊長を自然に撫でるサッチ隊長!!そっぽを向きながら可愛らしい発言をするキイチ隊長ッ!!



「何なんですかあの無意識カップルみたいなやりとりは!」



当人達を前に熱い吐息を吐き出しそうになったが、よくここまで耐えられたものだと自分を褒め称えたくなる。



「分かる…!!凄くその気持ち分かる…!!」



再びユーリさんが椅子を蹴倒す勢いで立ち上がった。エリザさんが再び慣れた手つきでユーリさんの肩を叩いて座らせる。



「あの二人は無意識にいちゃつくし無意識に近いし無意識に甘いしで一体何の拷問かと…!」



ブワッと涙が溢れるユーリさん。そのお気持ちよく分かります…!



「まさかこんな、ネタの方からのこのことやってくるとは思いませんでした…」


「! じゃ、じゃあ…」


「はい…!」



私がこの船に乗ることになった最大の要因、それは…



「この船に乗って初の薄い本…4特4【甘いのはお前だ!】を描かせていただきます!」


「キター!!」


「わっ私は!?エリ特は!?」


「まだネタが歩いてこないのでお待ちくだしあ」


「いやぁあああ!早く私とキイチ隊長の薄い本出してー!!」


「お待ちくだしあ」


「いやぁああああ!」


「くやしいのうwwwwくやしいのうwwww」


「む か つ く !!」


「何騒いでるのよ…」


「リリー!!」



仮眠室から出てきたのはリリーさん。昨日は深夜にオヤジ様の体調が優れなかったそうなので、寝たのは二時間ほど前だったはずだ。



「リリーさん、4特4の薄い本が決定しました。タイトルは【甘いのはお前だ!】です」


「何それ!?1特は!?というか何でリバなの!?」


「あの二人はリバでしょう!片方が押したらもう片方が押し返して最終的にどっちも美味しく頂いて頂かれる関係になりますよ!!断言できます!!そしてそれを私達が美味しく頂きます!!」


「禿同!!」


「いやー!最初に出す本は1特にしてって言ってたじゃない!!」


「先にネタが歩いてきたのが4特だったもので」


「くやしいのうwwwwwwくやしいのうwwwwww」


「「む か つ く !!」」


「煩いわね…、何なのよあんた達…」



以下、同様の会話が繰り返されるため省略。




≡≡≡≡≡≡




「なぁ…」


「ん?」


「最近さ…俺を見て鼻血を出すナースがいるんだけど、どういうことだと思う?」


「…あぁ、俺も最近似たようなことがあってな…」


「あ、キイチも?」


「アンネに「キイチ隊長は攻めですか!?受けでも十分美味しいですけど攻めちゃってもいいんですよ!?」って熱弁されて……」


「(攻め…?受け…?…あっ……(察し))…で、何て答えたんだ?」


「襲撃された時は敵船に突撃するか、それとも、自船での戦いにするかを聞かれたのかと思って、『攻めだろ』って」


「お、おうふ…」


「おーい、腹減った…って、サッチ。何ケツ擦ってんだ?痔?医務室行く?」


「何でもねェよ!」


「え…サッチ、痔なのか?」


「キイチもマジになるなよ!痔じゃないから!!違ェから!!」





「次は1特本出ないかしら…」


「それよりも禁断の2特2でしょう!?キイチ隊長が優しくエース隊長の筆下s…むぐっ」


「はーい、それ以上言ったら健全な女の子が穢れちゃうから止めましょうねー」


「それにしても、今回の話は本当に酷かったですね」



本当にね。







美しい花には沢山の秘“蜜”がある

(いやぁ、本当にこの船には美味しいネタがいっぱいありますね!)
(次は何を描くの?)
(…父特とか、どうですか?)
((((買った!!))))






*・*・*・*・*

こんなナースが一人か二人いてもいいと思うんだ…。
ネット用語が飛び交ってしまってすみませんでした。後悔はしてません。そしてナース達の会話にはこういうのが再び出て来ると思います覚悟しててください。←

特→姉さん
4→サッチ
他も同様にお考えください。

他に詳しい説明とか…いります?いらないですよね?(白目)


以下、忘れやすい俺のための拙宅のナースさんメモ↓

エリザ
・ナース長。
・自分×姉が一番美味しいと信じて疑わない。
・腕はピカイチなのに性格が残念過ぎる姉さんクラスタ。

ユーリ
・ナースそのいち。
・サッチ×姉が一番美味しいと信じて疑わないが、逆も有りだと思っている。
・興奮によって何度も鼻血を出すため貧血で倒れることが多い。

リリー
・ナースそのに。
・マルコ×姉が一番美味しいと(ry、逆も有りだと(ry。
・よくその二人を盗撮してはアルバムを作るのが趣味。

ナツ
・ナースそのさん。
・エース×姉が一番(ry、逆も(ry。
・禁断な関係性に多大な萌えを感じる。

アンネ(NEW!)
・ナースそのよん。
・元芸術家の現ナース。
・健全な同人誌から薄い本まで描(書)いちゃう期待の新人。
・姉さん単体も好き。でも基本的にどんなCPでも美味しく頂ける。
・時々姉さんをふた○りにしている本を描いて皆に衝撃を与えた怖ろしい子。
・時々ナース以外のクルーにも販売するため、色んなクルーから尊敬されては自分と姉さんの本を描いてくれと頼まれる。


まともなナースさんがいない件\( 'ω')/

∴14/09/02 修羅@


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