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また別な日。昼食を食べ終わったキイチが、甲板で樽に背中を預けて座っていた。それを見付けたマルコがキイチに近付いて声をかける。
「キイチ、もし時間があるなら後で組手でもしないかい?」
「…おー」
「眠そうだない」
「飯を食った後だからな…ちょっと眠い」
「じゃあ組手は止めとくか。昼寝でもしとけ、どうせ夜は不寝番をするんだろい?」
「でもなァ…」
「キイチー…」
「エース?」
ふらふらと歩きながらキイチに近付いてきたエース。その表情は、キイチと同じようにとても眠そうだ。
「昼寝するんなら俺も寝るー…」
「…おー…」
エースは当然のようにキイチの隣に腰かけた。それを羨ましいと思いつつ、マルコは部屋に戻ろうかと思考を巡らせる。そして、それを二人に伝えようと口を開いて、
「「ふぁああ〜…」」
「……」
欠伸って普通は移るもんなんじゃないのか。と、部屋に戻ろうとしていたことをすっかり忘れて、マルコは口を閉じた。目の前には、身を寄せ合って穏やかに眠る姉弟の姿があった。
余談だが、マルコは姉弟の欠伸が移ったため、特に眠気を感じていなかったが部屋に戻って昼寝をすることにした。
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「もうやだ可愛すぎる二人とも…!!」
「もうやだサッチがキモ過ぎる…」
「さっきから辛辣ね、ハルタちゃん」
「それにしても羨ましいなァ、エースは。俺達ァ、そんな純粋な気持ちで一緒に寝ることなんてできねェってのに」
「イゾウと一緒にするな。俺は真摯にキイチと付き合っているつもりだが」
「おい、嘘でもキイチと付き合ってるなんて言い方するんじゃねェ…!」
「イゾウ、目が怖いぜ。あとその銃を下ろそう」
「何でこんな話になってんだかなァ……」
「どんな話だ?」
「ぎゃあ!!」
ひょいっと背後から現れたキイチに悲鳴を上げるサッチ。その悲鳴に驚いた面々が肩を揺らした。キイチの隣にはエースもいて、全員の反応に驚いた表情をしていた。
「な、何だ?どうしたんだよお前等」
「…いや、何でもない」
「…うん、何でもない」
「…そうそう、何でもないぜ」
「何かイゾウの目が怖い!!」
「…よく分からないが、落ち着けイゾウ」
血走った目を向けてくるイゾウにエースが怯える。理解できないという顔をしつつ、キイチはエースを背に庇った。
「あ、そうだイゾウ。この間の書類なんだが、一枚抜けてたぞ」
「そうだったか?悪い、ちゃんと確認してなかったぜ」
「確か六枚目が無くなかったと思う。イゾウは期限を守ってるから、そんなに急がなくていいぞ」
「…それって俺へのあてつけ?」
横目で見られたエースが不貞腐れた顔をする。その場にいた全員が笑った。
「悔しかったらお前も期限を守るんだな」
「ちぇー…」
「エース、お前には後で組手に付き合ってやるよ」
「! 本当か!?」
「後で、って言っただろ?書類を終わらせたらな」
「えぇー!ちぇっ!」
唇を尖らせるエースだったが、キイチと顔を見合わせると二人で気の抜けたように笑った。まさに姉弟だと思う、そっくりな笑顔だった。
羨ましい<微笑ましい
(あー、あの笑顔はそっくりだわ)
(初めてキイチとエースが似てると思った…)
(彼奴等は姉弟、彼奴等は姉弟…)
(イゾウが怖いんだけど!)
*・*・*・*・*
多分この後ろでアンネちゃんが悶えていると思います。
「次の本は2特2で行きます!」
「やだそれ本当!?」
「1特は!?1特はまだなの!?」
「お待ちくだしあ」
「いやあああああああ!!」
「(今日も医務室は騒がしいな…)」←通りすがりの姉さん
∴14/09/17 修羅@
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