たしぎとのお茶を済ませ、(最後にたしぎはティーカップまでぶちまけていた)俺はそろそろ船に戻ろうと足を進めた。……ん?あれは…………。前方に見えた人物に、俺は急いでコートのフードを被った。
「スモーカー大佐!!ここには白ひげがいるという話が…」
「分かってる。見つけ次第、俺に報告しろ」
「はっ」
やっべ、たしぎがいるって事はスモーカーもいるんだった。大概あの二人は一緒にいるからなぁ…。盲点だった。
「(ま、早く船に戻ってこの事伝えるか…)」
「おい」
「……(スタスタ)」
「おい!!そこの黒コート!!」
「(…黒コートって俺の事か?)」
周りを一瞬だけ確認する。…うん、とりあえず止まったら面倒臭そうなので歩き続けることに「ガシッ」………ガシッ?
「お前の事だよ黒コート……いや、"烏(カラス)のキイチ"」
振り向けば極悪人面をしたスモーカーが俺を睨んでいた。おいおい、スモーカー…お前、今なら海賊に負けないくらいの悪人面だよ。通報してやろうか。きっとお前ならいい懸賞金が付くから。
「うっせぇ!!この顔は元々だ!!」
「あれ、今俺声に出してた?」
「ああ、ばっちりなァ…!」
「あだだだだ!ちょ、肩掴む力弱めろ!!ミシミシいってるから!!」
…くっ、いつもスモーカーといたら調子が狂う。副船長の時はクールなんだぞ俺。そりゃ、スモーカーの方が年上だが俺はこれでも二十三歳だそ!エースより三歳年上なんだぞ!!
「二十三歳ならまだまだガキだ」
「心を読むな!」
「お前は考えてる事が丸分かりなんだよ」
「うるせぇっ!……〜っああもう面倒臭いな!『海花(ウミハナ)』!!」
―バシャン!!
『「「!!」」』
「チッ…!!」
俺の声と同時に、スモーカーに掴まれていた右肩が水になって花びらの様に散る。それによりスモーカーの左手は水浸しになったが、直ぐにスモーカーは舌打ちをして十手を振り下ろしてきた。
「うわっ危ねぇ!」
「烏!おとなしく捕まりやがれ!!」
「嫌に決まってるだろ!!」
言いながら後ろへ跳ぶ。その間にもスモーカーは海水の浸ってない右手を煙にしていた。迫る煙に思わず冷や汗が流れる。
「ホワイトブロー!!」
「うわ…っ!!」
危ね、今コートを掠ったぞ!ちらりと見れば、コートの裾が少しだけ破れているのが分かった。…これ、最近新しくしたばっかのやつだったのに…!頬がひくりと引き攣るのが分かる。流石の俺も怒るぞ!
「『水流包囲(スイリュウホウイ)』!!」
『「「うわああああ!?」」』
パチンッと指を鳴らし、近くの川から水を引き寄せ、その水で海兵達を包むようにする。水に包まれて息も身動きも出来ない海兵達はもがくしかない。よし、これなら時間稼ぎができるだろう。
「じゃーなっ」
「!!………!!」
スモーカーは何か言っているようだが、水の中だから何を言ってるのか分からない。…ま、今の内に逃げるか。俺はくるりと身を翻し、船への道を一直線に駆け出した。
≡≡≡≡≡≡
「ゲホッゴホッ……!!」
「はぁっ……はぁっ…」
キイチが行ってから少し経った頃、水は重力に従って地面に落ちた。追いかけようにも身体は水浸しだし、能力が解けたということはそれほど離れたということ。今更追いかけても捕まらないだろう。苛立ちからか悔しさからか、また一つ舌打ちをする。
「くそっ……また逃がしたか」
「やっぱりキイチさんは強いですねー…」
おいコラたしぎ、お前は何ほっとしてんだよ。あいつが捕まらなかったのがそんなに嬉しいのか。…嬉しいんだろうな。一応こいつらは顔見知りらしいし、さっきも一緒に茶飲んでたみたいだしな。
…イラッ
「あいたァ!何で殴るんですかスモーカーさん!?」
「…なんとなくだ」
「(理不尽!!)」
なんとなくだ。なんとなく、アイツと仲が良いたしぎがムカついたから殴っておいた。
≡≡≡≡≡≡
「ただい「おかえりキイチー!!」「おかえりなさい姉さーん!!」……ま!!」
「ぐふぅ!!」
「へぶっ!!」
帰ってきて早々抱きついてこようとしたエースにアッパーを食らわせ、セツには踵落としをお見舞いしてやった。今の俺はイラついてんだよ。視界の端で破れたコートの裾がちらつく。
「おっ、おかえりキイチ」
「…ん、ただいまサッチ」
「やっと帰ってきたのかい」
「海軍がいてな。『水流包囲』をして逃げてきた」
「…海軍がいたのかい」
「ああ、なるべく早めに出航した方がいいだろうからな。オヤジに報告してくる」
「キイチー!!」
「姉さーん!!」
「ちっ…もう復活したか」
「「舌打ち!?」」
「あ、キイチー。今日のおやつはアップルパイだぞー」
「サッチ…愛してる!!」
「(キュン!!)」
『「「(ガーン!!)」」』
何だかエースとセツ以外もショックを受けてる気がするが、アップルパイの為にも早く報告を終わらせねぇと。ああ、早くこの苛立ちをなんとかしたい!
好きな物は業物とアップルパイです
(うまー)
((何このリスみたいな子!!可愛い!!))
(ありがとな、俺サッチ(がつくるおやつ)が好きだ!)
((ズキューン!!))
(((羨ましい……!!)))
*・*・*・*・*
なんつーか…、昔の姉さんは姉さんじゃない気がしてならない!
読んでて何だか昔の自分を殴りたくなるくらいには恥ずかしい。
※姉さんが持ってる刀の本数が多い気がしたので少し減らしました。
多分この調子で懸賞金も減らします。
∴13/10/14 修羅@
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