壱拾萬打企画! | ナノ






よう。今日は俺、マルコが語らせてもらうよい。特にこれと言った理由はねェんだが、俺とキイチの関係性が変わったことでちぃっとばかし言いたいことがあってな。


「マルコ―」
「なんだい?」
「昨日の襲撃の被害報告についての書類ってこれだけだったよな?」
「あぁ…確か一番隊の分はそれだけだったよい」
「そっか、じゃあ三番隊かな…ありがとな!」
「おう。…あ、ちょっと待て」
「ん?」


こんな日常的な会話をしてるが、さっきも言ったように俺とキイチの関係性は変わった。


―ちゅ、
「……!ま、マルコ!」
「今日もご苦労さん」
「〜〜〜…!!ばーかっ!」



これでも一応恋人同士というやつで



「はぁ…キイチは今日も可愛いよい」
「そうだな泥棒猫」
「喧嘩売ってんのかいエース」
「人の姉貴掻っ攫っておいて何言ってやがる」


げしっと机の下で足を蹴られる。俺がキイチと付き合いだしてから一番荒れたのはエースだ。今もまだ俺とキイチの仲を認めたわけではないらしい。


「あのなぁ、エース…」
「分かってるよ」
「あ?」
「…分かってるから、認めたくねぇんだよ!」


ばーかっ!そう叫んで駆け出していくエースは、まるで先程の顔を真っ赤にして走り去っていくキイチのようだった。やはり姉弟だな、と思わされる。前々から同じような行動をするとは思っていたが、付き合いだしてからはよくそう思うようになった。…そんだけ、キイチの行動をよく見るようになったってことかい。


「(…あー、本当に付き合ってんだなぁ)」


なんというか、今更実感が湧いてきた。キイチは普段と同じように接してくるわけだが、前よりは大分距離が近くなった。時折甘えるように背中に擦り寄ってきたり、並んで歩いているとそっと薬指と小指を握ってきたりするようになった。

ガキみたいな甘え方なのだが、キイチは元々そんなに甘えたような行動をするようなやつじゃなった。だから、これは相当な進歩だと思う。

だが、そんなキイチが俺を極端に避ける時がある。


「キイチ、今夜部屋で一緒に飲まねェかい?」
「あぁ、いい………いや、悪いが今日は書類整理があるから」

「キイチ、俺の部屋にこの前買った菓子があるんだが食いに来ねェかい?」
「!食べ……え、エース辺りが食べたがるんじゃないか?呼んできてやるよ」

「…キイチ、今夜暇かい?」
「よっ、夜は不寝番があるから!」


……そう。夜、俺の部屋に誘うと必ずと言っていいほど断られる。以前なら「飲む?いいぞ。不寝番があるからあんまり長くはいれないけど」というように、あっさりと承諾してくれていたのに。

まぁ、元々特攻隊担当の不寝番があるせいで夜一緒にいれる時間は少なかったのだから当然と言ったら当然だ。しかし、前は何度か隊員に交代してもらったりすることもあったのに。最近はそんなことはなくキイチは毎日不寝番をしている。そのため、キイチの目の下には薄らとだが隈が出来始めていた。

確かに、下心がないといったら嘘になる。しかしそこまで避けられると俺としても悲しくなる。


「(…俺が嫌だってのか?)」


それだったら付き合う時に断ってるはずだ。それに、キスをするのだって恥ずかしがる様子はあるものの、嫌がってる様子はない。昼寝を一緒にすることはあるが、夜だけはやはり避けられる。


「フツーに恥ずかしがってんだろ」
「何だと…!?」
「キイチだって女の子なんだぞ。キス一つで恥ずかしがってるってのに、そんな奴に何をしようとしてんだ馬鹿」
「馬鹿…」
「つーか、露骨に誘いすぎなんだよお前。もう少し慎重にだな…」
「慎重なんて言葉知らん」


そう言えばアホか!と怒鳴られた。…悪かったない。



≡≡≡≡≡≡



「「「宴だァー!」」」


その日の深夜。前々から予定されていた宴が開かれた。以前、特攻隊により収められた敵船の襲撃のお祝い的なものらしい。主役はキイチだということで、甲板のど真ん中にある輪へ連れ込まれてしまい話をする暇もなかった。特攻隊のキイチ愛は恋人の俺より勝るってかい。ちくしょう。

宴が始まって数時間、そろそろ潰れる奴が出始める頃合いだ。キイチもかなり飲んでいるようだが、寝不足のせいかいつもより酔いが回るのが早いようだ。ほんのりと色付いた頬が扇情的……って、何を考えてるんだ俺…!!


「キイチ隊長!実際のところ、マルコ隊長とはどうなんですか?」


ボバフッ!唐突すぎるキイチへの質問に全俺が吹いた。俺がいるところは輪から外れているとはいえ、ここまで聞こえるということはかなり大声で話が行われているようだ。


「あ、それ俺も聞きたいです!」
「マルコ隊長のどこが良かったんですか!?」
「どこまでいってしまったんですか!?」
「俺のキイチ隊長はまだ穢されてませんよね!?」


おい、本人(俺)ここにいるぞ。どこが良かったって、いってしまったって何だ。つーか、最後のはセツだな。お前のキイチじゃねェから。俺のだから。お前等俺を乏し放題だな。








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