壱拾萬打企画! | ナノ






親父の言ったことに思考が止まった。鼻血?


「アルは、血が出たらどこかしら怪我をしてると分かってるんだ。そして、怪我は痛いものだということも分かっている。だから血を流しっ放しにしているお前が嫌だったんだろう」
「…!」


何てことだ。まさか、そんな…!


「俺にどんな小さい怪我でもしてほしくないくらい大好き…いや、愛しているということか!そういうことなんだな、アル!!」
「そんなことは言ってない」
「ということはさっきのティッシュは本当に俺の事を心配して……!よし、アルが怪我をしたら俺が消毒から看病まで全部してやるからな!」
「(我が息子ながら面倒臭いな…)」


親父の腕からアルをひったくり、脇へ手を差し入れて高い高いのポーズをとる。まだ目が赤いが、そのまま高く掲げてやるとへにゃりと笑って嬉しそうに声を上げる。


「愛してるぞ、アル!」
『きゃー!』
「お前は俺のお姫様だ!!」
『きゃああ!』
「結婚まであと15年だな!」
『わあああ!』
「おい待て何を言って…いや、その前にアルを振り回すな!怖がっているぞ!!」


俺とアルのラブラブな空間が…ッ!!またしてもアルを親父に取り上げられ、眉間にかつてない皺が寄るのが分かった。後日、「あれは子供のする目付きじゃなかった」と親父は語った。


『ろ、にぃ!』
「!」


親父の腕の中でアルが俺に手を伸ばす。さっきのへにゃりとした笑顔がまた俺へと向けられた。可愛い……ッ!!!!


「流石俺の妹!!」
『ぷ?』
「大好きだ!」
『ん、しゅきっ!』
「!!!!」


今、今…今…!!!!


「俺に『愛してる!』と…!!」
「言ってねぇよ!どんだけつごうがいい耳をしてんだ!!」
「アルをはなせ!」
「ロー、そろそろ夕食時だ。宿題は終わったのか?」
「ホーキンスは今それを心配するのか…?」



≡≡≡≡≡≡



「――なんてことがあってな…」
「へー、アルちゃんって昔から可愛かったんですね」
「当り前だ俺の妹だぞ」
「そうっすよねキャプテンの妹さんですから当り前ですよね(棒読み)」


昼休み。今日は珍しくオペの予定が少ないため、のんびりと愛妻弁当(アル作)を食べることができる。俺の隣にはペンギン、正面にはシャチが座ってコンビニ弁当を食べていた。


「そういえば、その弁当って…」
「勿論アルが作ったんだ。見ろ、この栄養が偏らないように色とりどりなおかずを!」
「…俺には白いご飯にカラフルなふりかけがかかっているだけにしか見えませんがね」
「珍しくアルが寝坊してしまったらしくてな。少しくらい手抜きであっても俺はアルの手作りというだけでバランまで美味しくいただけるんだ」
「せめてバランは残してくださいね」
「ちなみに、バランってのはよく弁当に入ってる緑色の仕切りのことな。元々は本物の葉っぱだったんだけど、最近はプラスチックのしかお目にかかれないな」
「…シャチ、誰に言ってるんだ?」
「や、何となく」


ペンギンとシャチの騒がしい会話が目の前で続けられる。俺はもう一口ご飯を含んだ。


「ちなみにそのふりかけは美味しいんで?」
「アルが作ったと思えば何だって美味い」
「…俺は食ったことあるけどそんなに美味くなかった気がする」
「シャチ、後でこの書類やっとけ」
「えぇっ!?」
「そういえば、何でいきなりさっきの話をし出したんですか?それまで新薬の話をしてたじゃないですか」
「ただの自慢だ」
「「あ、そうですか…」」


まぁ、俺が何を言いたかったかというと…


「俺が誰よりもアルを愛してるってことだ」


たとえその愛が家族愛であろうと男が女に向ける愛情であろうと、俺には関係ない。





→後書き


 

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