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「零りんー」
「何だ、いーたん」
「…………呼んだだけ」
「ふぅん。………なぁ、いーたん」
「……………何?」
「呼んだだけだ」
「…………そ」
俺、ぐっちゃんこと零崎軋識の…ぁ、いや。零崎軋識ことぐっちゃんは今固まっているんだ。
過去形でないのが悲しいが、やはり現在進行形なのだ。この光景は。
死色には死んでも見せれないこの光景はっ!!
互いに名前を読んでみただけと言い合い、いーちゃんに至っては頬が赤い。
人識はそれが心底楽しそうだ。だが、こんな光景を見せられてる俺はちっとも楽しくなんかない。
寧ろ心臓が痛い。死色に家賊が全滅させられるやもしれない。
全滅させられるとしたら原因は確実に人識だ。
何だこのカップルは
「なぁ、いーたん」
「何だよ、また呼んでみただけ?」
「んや。イイモンやるから目ぇ閉じてあーんしろよ」
"あーん"って何だよ!!
どこのラブラブカップルだよ!
「………変なものじゃないだろうね?」
"あーん"のツッコミは無しなのか!?
「心配すんな。俺もよく食べるやつだから」
「ふぅん。じゃ、早くしてよ」
本当に"あーん"と効果音が付きそうに口をあけるいーちゃんに疑問がつきない。
何故そんな素直に目を瞑って口を開けられるんだ…
おいおい、人識…お前いーちゃんに何したんだよ
「ほれ」
「んむ!?」
「ほーら、味わって食えよー?」
「んー!んー!」
何を食わせたか知らないが、味覚的に強烈なもん食わされたんだろう。何せ人識がニヤニヤしながらいーちゃんの口と腕を抑え込んでいるし。
つか、マジで楽しそうだな人識お前…
「っぐ、っこの!」
「中々刺激的だっただろ?」
いーちゃん。お前怒っていいんだぞ
いや、寧ろキレてくれ
「刺激的すぎだよ、ばかっ」
「拗ねんなよ。俺」
「誰のせいだと思ってるんだい?ぼく」
「かはは、俺か」
「零りんのばか」
「悪かったって、ちゅーしてやっから許せよ」
何でだよ!
なんでそうなるんだよ!!
「仕方ないな…」
いいのかよ!!?
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