零僕





「ほら、見てみろよ」


「あ?」


「今日は皆既月食の日だよ。見ないと損だろ」


「別に損って程でもないと思うけどな」


「そうだよ。日食もだけどさ、そうそう無いものだからね」


「お前何時からそんなロマンティストになったんだよ。イメチェンか?イメチェンなのか?」


「髪の色変えた時点でもうお前はキャラチェンしてんだろ。それに比べたら少しこういうことを言うようになるくらいどうってこと無いだろ。」


「いやいや、外より中が変わるほうがキャラチェンだろう。つーわけで、俺のはタダのイメチェンだ」


「ぼくの内面が変わったどうこういったところでぼくはイメチェンもキャラチェンもするつもりは無いよ。もし、変わったとかそういう事ほざくんならそれは作者のせいだ。
文句なら作者に言え。」


「メタ発言するな。何かいろいろと世界観壊れるだろ」


「今更そんなこと言っても意味無いだろ。」


「おい」


「それはそうと零崎、さっさと見ないと日が明けるよ。見るならさっさと見よう」


「だから俺は別に見たいなんて一言も言ってねーけど?」


「なら零崎。素直に皆既月食見るか僕に言いくるめられて、尚且つツンデレのレッテルを貼られてから皆既月食みるのとどっちがいい?
特別に選ばせてあげてもいいよ」


「なんだその選択の意味が無い選択肢は」


「選択死ともいうものに変えてもいいよ?」


「笑顔で遠慮」


「じゃ、どうする?」


「…………つーかよ、」




と、ため息と呆れ顔を僕に向けて言った。
でもそれはぼくにとって当たり前の前提の【ぜ】の内に入るかはいらないかの問題なんだけどな。

だって、ここまでしてるのにぼくが言葉を発する必要も無いようなことだよ。
鈍くなきゃ分かるだろうに




「なんでそこまでして見ようとするんだよ」


「皆既月食のことか?」


「それ以外に何があるってんだ。さっきのイメチェンどうこうの件は兎も角としてちょっと変だろ。」


「零崎さぁ、ぼくに鈍いだの鈍感だの言ってても言ってる本人がそうだと説得力に欠けるよね」


「はぁ?」


「違うと思うなら察してみろよ。何故ぼくはそうまでして皆既月食を零崎に見ろというのか。」




ぼくに、ここまで言ったぼくに答えを言え、だなんて
言わないでよ?




「だからどういう………」


「零崎の、ばーか。もう…ロマンティストでも何でもいいから日が明ける前に見に行くよ。」










             一緒に





「っな!?」




音の無い言葉で零崎に伝えてみたら。どうやら伝わってしまったみたいだ。
まったく、赤面したいのはこっちの方だってのに、先にやらないで欲しい

あとで零崎にツンデレキャラのレッテルとイメチェンしようとして失敗しちゃいましたのレッテルを貼ってやろう。




「いーたん」


「なに」


「月は綺麗か?」


「………さぁね。」




どうだろう。
隣で零崎が月に、皆既月食に見とれてたら。きっとそれは綺麗なんだろうな。





え?月を見ないのかって?
愚問だよ。愚に愚を重ねれるくらいにね。
こういうものは一旦一人で見てみて、綺麗だったら人に見せるものでしょ?




皆既月食。いや、怪奇月蝕とでも言っておこうかな
名の通り、月が何かに蝕まれる日。それはそれは綺麗な月だった。





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