金魚想
2015.9.12






※「Stealth #0065」様の「金魚救い」の続きのような別物のようなお話。リヴァエレは転生で相愛で憎愛。色んなものが歪んだり濁ったり裏返ったりしています。
※誤字かな?わざとかな?と思われるものは大体わざとです。













――――ダカラアンタハ、オモイシレ。






個の中にあるらしい窓も扉もない部屋に独り。
そこで様々な想いを巡らせては、要る、要らない、と選別を繰り返している。
特に要らないものは、箱に仕舞った。綺麗に閉めて、けれど捨てられずにいる。
要らないと口では言いながら、その手は捨てられないのなら、それならいっそ抱いていてと。誘われる。
その誘惑はとても憂鬱な気分にさせた。
そう出来ないのは勇気が足りないからでも、覚悟が足りないからでもない。
いっそ覚悟だけならば有り余っていて。
知らぬ男にこの身を投げ出す勇気は在って。
金を受け取ってしまえば終わる、刹那的な関係ばかりを纏わせている。

そうして汚れていくモノを、削られていくモノを眉を顰めて見るあの人の、その心情を探っては嘔吐いていた。
汚れていくのは体で、穢れているのは心で、体は洗えば綺麗になるのに、少しばかり整えられた自然では心は洗えない。
例えばユニットバスの様に丸洗いが出来ればいい。
この穢れを清潔な水で湿らせて、強めの洗剤で強制的に剥がして、そうして細い管を通って海へと還ればいい。確か其処から、産まれたと聞いた。

決して憂鬱になるようなモノではなかった筈だ。
その、箱の中に仕舞ったモノは。
焦がれて、憧れて、いつか手にしたいと、いつか誰かに与えたいと思った筈だ。
あんなに綺麗なのに。あんなにも透明でいて、今もどこかで焦がれているのに。
それを今は徒只管に、疎ましいと思う。

あなたの所為だ。
あなたの所為で、俺のなにか大事なモノを、大事にも思えなくなって、むしろソレがこの胸の内に在る事が我慢ならない。
消したい。消えたい。それが無理なら、見たくもない。
丁寧に、隙間無く空気も通さない程に、ぴったりと詰めた。

なのに、貴方が俺に浴びせるその言刃が偶に隙間を開けるから困っています。
そうしてまた丁寧にテーピングで塞いでは隅へ奥へと追いやる。
そんな気の滅入る作業をもう何度繰り返しているのだろう。

貴方のおせっかいには、ほとほと辟易としていて、なのに何処かで求めてもいて、矛盾が酷くストレスを感じさせていた。

改札を出た先の、何気ない風景の中に貴方を見つけた。
隣にいる女性がやけに親しげなのを一瞥して別方向へと足を向ける。

スーツ姿から察するに部下か同僚か。
どちらにせよその光景は不快だった。
前世で俺を、それは手酷く裏切った貴方が、来世ではごく普通に幸せになりましたなんて、そんな都合のいい綺麗なハッピーエンドは許せない。

そもそも貴方は許しを請わない。
俺は貴方に、その咎を正しく認識して、その上で請うて欲しいんです。
それが咎に成り得た原因を知ったぐらいで、許すつもりもないのですけど。
だってそうでしょう。俺の至極勝手な期待を裏切った、貴方の事は生涯許せない。貴方が言った、俺をまず間違いなく殺してくれるという言葉にどれだけ縋っていたか。思い出したくもない。その約束めいたものが俺を確かに生かしていた事実を、それこそ忘れてしまいたい。

きっとまた失望されてしまうんでしょうね。
どれ程嬲られ、蔑まれても貴方を本当に拒否する事が出来なかった俺の、浅ましくて、情けなくて、いっそ狂ってるのかとすら疑う程に強くこじらせた、形も行き場も無い唯の想いを、知ったら。
伝えればもう構うこともなくなるだろうと、解っていて伝えられずにいる。
会いたくもない。そんな貴方ならばいっそ伝えてしまった方がいいのに。

想いを、伝えることが出来ない。

「リヴァイ!!」

正面から歩いてきたビジネスマンが、それは険しい表情で知った名前を口にした。
足早に俺の横を通り過ぎていく。それを俺は、うっかり目で追ってしまった。

ビジネスマン越しに、目が合う。
げ、と思った俺はそれをそのまま顔に乗せて、貴方は少しばかり眉を寄せた。

「見つけたよリヴァイ、携帯掛けたのに…電車?あぁ、けどバイブぐらいにはしといてよね、立場ある身なんだからさ」

「気をつけよう。それで、用件は何なんだ」

空気を読んだらしい女性がリヴァイから離れる。
それを少しばかり見送って、男は本題を切り出した。

「決まってる。何でシンガポール、自分で行かないのさ」

「お前で事足りるからだ」

「そんな訳ないだろ、あのプロジェクトを立案したのリヴァイじゃん。シンガポールの取引が最重要行程だって解ってるくせに」

男の剣幕につい盗み聞きしてしまったが、流石に俺以外の目もチラチラと2人に集まっていた。

「場所を変えるぞ」

そう言って歩き出す貴方の後を、男は黙ってついて行った。









あれから集客率の高い公園へと赴いてみたのだが客層がイマイチで、既に日が暮れていた。やけに暗い、と思ったら今夜は新月だった。
気温は低くないのに、やけに肌寒い。
深部が冷えている。外側からいくら熱く荒い息をかけられても、温まることはなかった。
全身を、それこそ足の先までを酷く優しげに愛撫されて、待ちわびた内壁を擦られる感覚に確かに悦び喘いでいるのに、記憶が邪魔をして、外からの刺激だけじゃイケなくて、項を捕らえられて、シーツに顔を押し付けられながらただ欲暴を受けるだとか、そんな妄想で内からも刺激を与えては全てはあなたの成果ですよ、という顔をしている。
どれだけ甘美であっても、貴方が俺に、ほんの気紛れで与えていた、あの粗野な優しさに敵うものがない。
瞬間に沸騰した、あの感覚が得られない。
惨めにも前世を引き摺って、惰性と共存している今生に、あの熱が在るのなら、まだ何か変わるだろうか。変えられるだろうか。

「てめぇは性懲りもねぇな」

その声に現実に引き戻される。
そういえばこの公園を集客に使っている事は先日バレてしまっていたのだった。とはいえ知る人はこの公園がそういう類の人間の集まる場所だと知っているのだけれど。
短めに溜め息をつく。その神経質そうな目元には疲れが滲んでいた。

「こんばんわ。会いたくはありませんでしたけど」

「ならとっとと帰れ不良高校生」

成程、不純同性交遊をしている自分は不良、と言われれば正しい意味で不良なのだろう。不良で、粗悪なのだろう。

「人をヤンキーみたいに言いますね。リヴァイさんの世代だとツッパリ、のほうがしっくりきますか?」

「巫山戯ろ」

どうやら世代違いだった様で真剣に苛つかれてしまった。
どさりと隣のベンチに置いたコンビニ袋からビールを取り出すと、自身も腰掛けプルタブを鳴らす。
公園のベンチに掛けるなんて、潔癖な貴方らしくありませんね。

「珍しいですね。何か嫌なことでも?」

アルコールに強い印象はない。
前世でも酒に呑まれたリヴァイに散々な目に遭わされたものだった。貴方はイけもせず、俺は只管に内壁を擦られて、気を失いそうになる頃に貴方が気を失った。
問いかけに応えずビールを呷る。その様がとても、気に障った。

「シンガポール、行けばいいじゃないですか」

そうしたら俺は束の間の自由を手に入れて、誰に邪魔されることなく男を漁れる。
おそらくは不機嫌の原因であったのだろうソレを口にした俺を貴方は睨んだ。

「どうして行かないんです。行かない理由って何ですか。教えて下さいよ」

貴方の仕事になんて一切興味も関心もないけれど、貴方をこんな風に弄ぶのは愉しい。
その理由にも関心はないくせに、俺は強請る様に聞いた。
前世の様に、ベンチに両手をついて、上目遣いに。
そんな俺を見て、貴方はほんの少し目を開く。

「なんかお前は、前のまんまだな」

「え?」

「お前の記憶が甦ったのが空港のトイレだったってんなら、それまでの、今世のお前が居た筈だろう」

「いやいや、俺は俺ですし、今世の俺とか言われても」

前世の成りを模してみただけで、そんな風に大袈裟に捉えられるとは思わなかった。少し呆れながら返した俺を、それでも貴方は見据えた。

「俺は今世のお前に話がある」

探るように、俺を見る貴方を見ていたらなんだか眠くなってきた。
そんな既存の小説のような事を言われても、応える気にもなりません。

「何処に居る」

しつこい。あぁ、もぅ凄く眠い。
耐えられなくて、俺は瞼を閉じた。












「いつから気付いていたんです」

ベンチにだらしなく掛ける俺を見て、貴方は鼻で笑った。

「出てきてみりゃあ、相応のガキだな」

「だって現代ッコですもん」

前世と同じ素材でも、在り方は違う。
それは姿勢や態度や、視線が示していた。

「そういえば、空港以来ですね」

大変だった。前世の記憶は今世の俺には強烈過ぎて、とても平常では在れなかった。
環境や時勢だけじゃない、貴方へ向ける感情が激しすぎて、俺は心を分けるしかなかった。そうして俺は漸く日常を取り戻すことが出来た。

「知識は現代のものだが振る舞いは前世のままだったからな。違和感はあるだろ」

「あぁ、そうなんですね。失敗したなぁ、そこまで教えてなかった」

やれやれと、俺は右手で目を覆った。
歩き方や姿勢が綺麗過ぎたのか。そういえばさっきも、周囲に人目もないのに背筋を伸ばして座っていたように思う。

「なら、お前はあいつに何を教えた」

射るような視線をよこす貴方を、俺は笑った。
貴方が、俺をそんな風に責める事が、可笑しい。

「ねぇリヴァイさん、信じられます?俺は信じられないんですけどね、あいつは貴方の事を、前世の貴方の事を隙あらば殺したい程に憎んでいて、なのに同時に愛してもいるんです。不思議なことに、憎悪と愛情が、同じ強さで存在しているんです。愛情が憎悪に変わることがあることぐらいは識っているんですけど、同等に在るなんて信じられないですよ」

身振り手振りで喋る雄弁な俺を、貴方は初対面の人間のように見ていた。

「そして俺は思ったんです。前世の俺はなんて可哀想なんだって。俺もこんな平凡な何の刺激もないつまらないとしか言い様が無い世界に産まれて生きてる意味なんて何も感じられないと思ってたけど、前世の俺をせめて慰めたいって、思ったんですよ」

「だからって援交はねぇだろ」

「解ってないな、アンタしか知らないあいつに、優しく抱かれる心地よさを教えてあげたかったんですよ」

「そんな建前を信じるとでも思ってんのか」

それを聞いて俺は溜息が出た。

「あ〜やだやだ、ホントやだ。建前って解ってて突っぱねるなんて」

本当の理由を吐けなんて。

「お前はあいつを哀れんでなんかいねぇ。受け入れようともしねぇ」

受け入れられるわけがない。
平凡に、虚弱な心しか育めなかった俺に、あんな激情をどうして受け入れられる。そんな器は俺の中には無い。

「だって可愛いんですもん。憎いぐらい、いじらしいんですもん。他人を好きになった事なんてない俺には、あいつはなんだかすごく」

羨ましい。そんな風に誰かを頑なに愛せる事が。一途に憎んでいる事が、心底羨ましい。

「だから教えてあげたんです。1人で癒せない傷は他人を上手く利用して癒せって。でも何故か、どんどん傷だらけになっていくんですよねぇ」

「そうなると、てめぇは解っていたんだろ」

正解を突きつけられて、俺は笑った。

「どれだけ他の男を教えても、あいつは貴方じゃないとダメなんです。あんなに傷つけられて、それでもその傷を忘れられも捨てられもしなくて、縋って、抱きしめて居るんです。馬鹿みたいに。貴方がつけた傷が、あいつを生かしているんです」

そしてあいつはその事実を受け入れられない。
歯痒くて、喉元を掻き毟る代わりのように、他人に抱かれては息をつく。
手を伸ばせないのなら、いっそ何も解らなくなる程に狂ってしまえばいいと思うのに、なかなか上手くいかない。
そうやって、前世の心に、現世の器に、天世の魂に、傷をつけ続けている。

「さっきも言いましたけど、俺だって生きる意味なんてないんです。ぶっちゃけ生きてたくなんてない。いまこうしているのはただの惰性です。面倒なんで。まぁでも、こんな感じでも未来に希望がないわけでもなくて、なんかいい事ないかなぁ、とか思ったりはするんですけどね」

自分の幸福すら他人任せな俺に、本当の幸福なんて舞い降りてこない事ぐらい知っているけれど、このぬるま湯から抜け出せない。

「本気でてめぇは只のガキだな」

「だから、そうなんですってば。でも最近は愉しいですよ。リヴァイさんとあいつの絡み見てると面白くって」

どちらも歪んだ感情をそのままにぶつけ合っていては解り合えもしないのに。
2人共止める事が出来ずにいる、その様は全く理解不能で、愉快だった。

「リヴァイさんだって悪いんですよ。やることなすことダメダメって言ってたって幼児だって言う事聞きゃしないじゃないですか。キレられるのも当然ですよ。それとも何か、そうできない理由でも?」

あの頃の様に言いなりにならない、なれないあいつに僅かながら戸惑っているの知っている。それから、他の男に悦い様にされている事に大変に苛立っていることも。

ねぇリヴァイさん。
あなたにさえ会わなければ、転じてまで巡り会わなければ、俺はね、それはそれは清廉で在れましたよ。きっと至極真っ当に、一生を全うしましたよ。

思い知れ。
俺だってこんな想い、知らなければ。もっと別の、他の誰かを仄かに大切だとか想いながら、生きていたでしょう。

現世の俺を少しばかり貴方は狂わせて。
前世の俺は少しばかり貴方を狂わせた。

前世のあいつはあれでも狂ってなんていなくって、あれでも真っ当で在って、なのに貴方が狂えと強制して、あいつは貴方の望みどおり狂った、素振りをしていた。
そして貴方は狂っていたと思う。今でもそう思う。
なのに貴方はそんな前世の様なんて忘れた様に真っ当を振りかざしている。

「ねぇリヴァイさん。俺はあの日、あなたに会いたくなんてなかった。思い出したくなんて、これっぽっちもなくって、だから俺はあの時まですっかり忘れていて、なのに」

運命とか、奇跡とか、そんな綺麗な言葉で納得なんて出来ない。
そりゃあ、生まれ変わりが記憶まで持ってたら奇跡とか言いたくもなるでしょう。運命とか思っちゃうかも知れません。けど、あんな前世を思い出したところで、一体全体何をどうしろって?平和な世界で嬉しいなと浮かれろとでも?
もともと生きてたくなんてなかった俺は、生きていく事が以前よりも億劫になっただけで、貴方に関しては言わずもがなです。
朝のニュースで知る哀れむべき被害者達を、不謹慎にも羨ましいとすら思ってしまうぐらいに、生き難くなってしまった。

「貴方の所為で、生まれ変わってもまだ苦しめられる」

これじゃあ俺に咎が在るみたいだ。
苦しみをあいつに丸投げした俺がいう事じゃないけれど、責める権利くらいある筈だ。

「そうか」

「そうか、って。他人事ですか」

俺はだから、貴方の事は勿論、あいつの事だって疎ましいと思っているんです。
消えてしまったらいいのにって。思っているんです。
なのに手始めに消えてもらう予定の貴方はしつこくあいつを追い回して、出張にも行けないなんて様を晒してくれる。

「リヴァイさん、貴方の可愛いエレンはもう居ないんです。貴方だけが触れていた、貴方の垢しか付いていないエレンですらない」

そう仕向けたのは俺だけれど。
ムカツクんですよ。ガキだった俺以上に心を示す術も知らず暴力に訴える事しか出来なかった未熟な前世の貴方も、世間体を気にしている今の貴方も。

「まだ、思い知りませんか」

今の貴方が今の俺をどう思うのかなんて興味もない。
だって俺は貴方の事を知らないし、ましてや愛してなんていない。
あいつだって、貴方しか見えていないのに、貴方の事は顔と名前ぐらいしか知らないんです。前世の貴方が与えたのは荒い熱ばかりだったから。

「あぁ、そうだな、思い知った」

「それならもう解放してあげて下さいよ。あの頃の様に、軟禁して好きなだけ暴力に訴える事の出来ない貴方に、あいつも用はないんですから」

あいつが愛しているのは前世の貴方なんですから。
今世の貴方まであいつの事を追うのは止めて下さい。
前世の貴方がどうしようもなくあいつをを愛していた事を、俺は疾うに知っているけれど、今世の貴方がそれにつられる事はないでしょう。

「そうだろうな」

そう言って二本目のプルタブを鳴らす。
あぁこれは全く響いていない。まだ当分追い掛け回されるのだろうな、と思ったら突然貴方は一口もつけていないビールを地面に叩きつけた。
と思ったら今度は俺に向き直って、座っていたベンチを力任せに蹴り飛ばしたもんだから、俺はベンチごとひっくり返ってしまった。
咄嗟に伸ばした手でダメージを最小に抑えはしたけれど、正直にまずい、と思った。

「500ml缶でそこまで酔えるもんなんですか。相変わらず酒弱いですね…」

起き上がろうとした俺を、しかし貴方は許さずにベンチごと地面に押さえつける。それも足で。呻いた俺を、貴方は冷ややかに、強かに見下した。

「こういう対応がお望みか」

圧迫されたままでは声が出ない。俺は涙が滲んだ目で、それでも睨んだ。

「そうだろ、違うよな。お前は」

当たり前だ。マゾでもあるまいし誰がこんな暴力で喜ぶか。

「この世界はお前に、もっと穏やかなものを教えた筈だ。余計な事も学んじまってるようだがな」

そう言うと貴方は俺から足を退けた。けど俺は貴方の言葉にぽかんとしていて、起き上がるタイミングを逃した。

「………は、ぁ?」

起き上がらない俺の腕を引く。立ち上がった俺の、そこかしこに付いた砂埃を払ってくれる、貴方の手は先程の凶暴さを失くしていた。

「いい加減に援交は止めておけ。いくら詰まれた所で、あんな奴等の金とお前はどうしたって等価にはならねぇよ」

しかるべき対価を支払われない、それが一体何に影響するのか俺には解らない。
何故だか二の句が告げなかった。
至近距離にある貴方の目が穏やか過ぎて、俺は釘付けになっていた。

こんな目をした貴方を、俺は知らなかったから。

「俺じゃないと思っていた。お前を求めているのは、前世の俺であって、今の俺じゃあないと、思っていた。同時に、お前は俺を求めてないと思っていた」

「それが、一体、なに…何だって言うんです」

「さっき言っただろ。俺を、愛してるとか」

「それは!!…それはあいつであって俺じゃないし、憎んでるとも言ったでしょう」

「そうか、なら前世の方から攻略する事にしよう」

何だそれは。俺はダンジョンか何かか。RPGとか似合わねぇ。

「……さっきから、何を言ってるんです?」

頭がぐらぐらしてきた。
そんな俺とは対照的に、難題が解けたようにさっぱりとした顔をした貴方が時計を見る。

「どうでもいいがお前、んな格好でうろついてたらそろそろ補導されるぞ」

そんな時間まで付き合わせたのはどこのどいつだと言いたい。
でもそんな事よりもっと何か言いたい事があって、けど多すぎて俺はどれを言おうか迷ってる内に腕を引かれていた。

片手で器用に空き缶をビニール袋に入れて、貴方は駅まで送ると言った。






その後、そのしつこさで俺を散々に追い回し、激しく拒否され時には罵られても、それでも懲りずに口説き倒した貴方に、想い知らされた俺達が根負けした事は誰にも言えない。








・・・Thanks for reading.


【あとがきのようなもの】
冒頭にも書きましたがこのお話は「Stealth #0065」様の「金魚救い」の続きのような別物のようなお話、です。
お話させていただいている中で、二次創作している事をその時はまだ伏せていた私に「続きを志麻さんが書いてみたら」というお言葉を戴き大変に驚き戸惑ったのですが、それはそれは恐縮だったですが書きたくなってしまって我慢できず僭越ながら書かせていただいた、んだけれども何かもう別のお話になっちゃった感じが凄いですね。
でもとても楽しく書かせていただきました。この感謝を、作品を捧げさせていただく事で代えさせて頂ければと思います。これを書く事を快諾し更に喜んでくださった佐藤さん、本当にありがとうございました。
 

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