とある情交に至るまで

「どうもさ、メローネが浮気してるみたいで」
「……ふーん」
 任務終りの帰り道。車の助手席に乗って、なんでもないような素振りでそう言うname。
 正直、そんなの俺の知ったこっちゃない。
 というか、普段のメローネを見ていれば、あいつに浮気ぐせがあるのはバカでも分かることだろう。
 何度も、俺は「あいつは止めとくのが得策だ」と言ってきたのに、聞かなかったのはこいつ自身だ。クソ。
「あいつの浮気ぐせは今更だろうがよぉ……知ってて付き合ってるんじゃねーのか、お前は」
「そうだけどさ。冷たいなぁ、ギアッチョは。傷心の私に対して同情とかしてくれないのね」
「はっ。バカバカしいぜ。おめぇの自業自得に、いちいち同情するほど、俺は暇じゃねーの」
 そう言い切り、俺はアクセルを踏む。
 nameは俺の言葉に返事せず、窓の外を流れていく景色を見つめていた。
 いつもなら、何か言い返してくるnameが黙り込んだので、車内が重苦しい沈黙に満たされる。
「……name」
「………んー?」
「……わりぃ」
「……ギアッチョに謝られたの、初めてかもしんないわ」
 ふふ、と中途半端な笑顔を浮かべるname。
 お前のそんな悲痛そうな笑顔を見たのは、初めてだ。
 胸の中に、もやもやとした塊が蓄積する。今、どうするべきなのか分からないもどかしさ。自分の不器用さを、改めて呪う。
 赤信号が目に入ったので、ブレーキをかける。
「あーあ。私も浮気してみようかな」
「……は、はぁあ? 誰とするんだよ、そんなん」
 あっけらかんとした口調で、nameがとんでもないことを言い放つ。
 思わず、nameの方を見やれば、バッチリ目があった。というか、nameが俺を見つめている。
 意味ありげな視線に、つい息を飲んでしまう。
「………」
「………」
「ダメ、かな」
「……俺ん家でいいか?」
「………うん」
 信号が、青になる。
 それから、アパートの俺の部屋につくまで車の中には、重い沈黙が満たされたままだった。


 ●


 部屋に着くなり、nameが俺に抱きついてくる。
 普段からもスキンシップ過剰な女だが、今日はいつものそれとは違う意味合いを持っている。
 親愛だとか、そういう綺麗なものじゃなくて。もっと、ドロドロとした感情を伴った抱擁。
「寝室どこ?」
 抱きついたまま、nameが聞いてくる。
 なにか喋りたくなくて、俺はnameを抱きかかえ、寝室に向かう。そんな行動にも、nameはろくに反応を示さない。
 ベッドにnameを座らせ、服を脱がせてやる。
 シャツのボタンに手をかけ、一個ずつ外す。
 nameは恥ずかしそうに、うつむいている。
 あっという間にnameは下着姿になって、今更ながら少し気恥かしく感じた。
「……ブラ、外すぞ」
「ん」
 nameの背中に手を回し、指でブラジャーのホックを摘んで外す。
 なでるように、肩から肩紐を外せば、抵抗なくブラジャーはするりと取れた。
「あ、あ、あー。パンツは、自分でやる。脱ぐ」
「うるせぇ。今更恥ずかしがんな」
 俺はnameをベッドに転がし、一気に下着を引き下げた。
 パンツをベッドの隅に放り投げ、俺も上だけ服を脱ぐ。
 目の前で裸になって、ベッドに横たわるnameを見下ろせば、背中がゾクゾクする。
 nameは手で顔を覆い隠し、恥ずかしそうに膝頭をくっつけている。
「あー。やばい。恥ずかしい」
「……俺もだぜ」
「ううー……」
「顔見せろ、name」
 俺はnameに覆いかぶさり、耳元で囁く。
 nameは肩が一瞬ビクッと震わせから、ゆっくりと顔から手をのける。
 ……こんなに顔を赤くしたnameを見るのは、初めてだ。
 真っ赤になった頬や、少し潤んだ瞳に、今まで我慢していた感情があふれかえる。
「この際だから言うけどなぁ、name」
「……なに?」
「俺が今こうして、お前とこういうことしてんのは、同情とか、性欲とか、あまり関係ねぇ」
「……と、言いますと?」
「お前が好きだからこういうことしてんだ。……本気で、お前をメローネから、奪う」
 一人で宣誓して、nameが何か言う前にキスをする。
 舌で唇を舐め、歯列を割り、奥に引っ込んでいるnameの舌に絡める。
 しつこいほどに角度を変えて、深く深く口づけをした。
 手は胸を揉み、時々指先で先端をいじる。
 息継ぎの度に、nameの甘ったるい吐息が漏れる。
「ふぁ……ギア…ッチョ」
 nameが苦しそうに胸を手で叩いてくるので、唇を離す。
 nameの、ただ潤んでいただけの瞳は、熱に浮かされた瞳に変わっていた。
 首筋にキスをして、そのまま唇を下へ向かって移動させる。それにすら、nameは可愛らしい反応を見せた。
 ヘソにキスをしてから、合わさったままの膝頭を離し、足を持ち上げる。
「や、やだ……恥ずかしい……」
「可愛いぜ、name」
 微かにメスの香りがする割れ目に顔を近づけ、舌先で陰核をつついた。
 それだけのことに、nameのカラダはびくつく。
 こねるように舐め回したり、強めに吸ったり。蜜の溢れてくる場所をくすぐったり。
「やっ……あっ……!!!」
 すぐにnameが背中をのけぞらせ、どうやら達したようなので一旦割れ目から顔を離す。
「感度良すぎねぇか、お前」
 顎まで伝った蜜を拭いながら、そう囁く。
 nameは顔をさらに赤くしながら、「だって……」とつぶやいた。
 ただそれだけで、その先につながる言葉は行方不明だ。
「……まぁなんでもいいけどな。ほら、すげぇぞ。ドロドロだぜ」
「んあっ……!」
 わざと音を立てるように、蜜の溢れ出てくる場所に指を挿入する。
 きゅうきゅうと俺の指を締め付け、もっと奥を触ってくれ、と言わんばかりだ。
 nameの頬にキスをしながら、指で愛撫を続ける。
 どうやら良い所をこすったようで、nameが一際大きな嬌声を上げた。
「ひ、あっ……そこっ……」
「ここかぁ?」
「ダメっ、またっ……いっちゃ―――ッ!!!」
 ぎゅ、と指に強い締め付けを感じた。
 nameは口元を手で覆い、快楽に体をヒクつかせている。
「は、あっ……ああ……」
 余韻に浸るnameをみて、俺は我慢の限界を感じた。
 ズボンを下げ、パンツからいきり立った自分自身を取り出す。
 そしてそのまま、nameのヒクつく場所にあてがった。
「……行くぜ」
「ま、まって……まだ……」
「あ? もう待ってられねーよ」
 一気に奥まで挿入する。nameが俺の下で、声にならない悲鳴のようなものを上げた。
 まとわりついてくる粘液と肉壁を引きずり出すように、ゆっくりと自分を抜いて、また奥へと。
 何回も、その行動を繰り返す。
「あっ、やっ、ギア…ッチョっ、んっ」
 nameは俺の背中に手を回し、縋り付く。
 だらしなく口をあけ、喘ぐnameを見下ろして、何とも言えない感情に襲われる。
 いつも、こうして、メローネも。
「クソッ………いくぜ、nameっ」
「んっ……うんっ……!!」
 nameが俺を締め付ける。それに釣られるように俺も、nameの中で達した。
 射精の快感を味わいながら、nameにキスをする。
 nameの目尻からは少し涙が溢れていた。
「あ………」
「……俺は、本気だぜ、name」
「ギアッチョ……」
「愛してる」
 そう呟いて、目を閉じる。
 nameは、消えそうな声で、ただ「うん」とつぶやいた。



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