「リゾットって、いつ寝てるの?」
「………は?」
不意な質問に、作業をする手を止めて顔を上げた。
nameは至極不思議そうな顔で、俺を見ている。
正直、質問の意図がわからない。
「暇が出来たとき、だな」
「暇あんの?」
「ない」
この仕事に暇なときなどない。それに最近は…ソルベとジェラートが死んでからは特にだ。
二人が死んでから参入してきたnameは、よく分かっていないだろうが…。
「…なんでそんなことを聞くんだ?」
「私、リゾットが寝ているところ見たことないもん」
「…そうか」
よくよく考えれば、最近ろくに寝ていないことに気がついた。それに気がつくと、急に眠気がやって来る。
と言っても、寝ている暇などないのだが。
…あくびが出てきた。
「…眠いの?」
「ああ」
「寝れば?」
「…寝ている時間は、ない」
はっきりそう答えると、name表情が曇る。…なぜ、そんな不機嫌そうな顔をするのだろうか。
nameはソファから立ち上がり、俺のそばにやって来る。そして俺の目の前にあるノートパソコンを乱暴に閉じた。
「邪魔するな、name」
「寝たほうがいいよ、リゾット」
パソコンを開こうとする俺から、パソコンを奪い取るname。
なぜ、そんなに俺を寝かせようとするのか…。理解に苦しむ。
「もう何日もろくに寝てないでしょ? そろそろ倒れるよ」
「……大丈夫だ」
「何を根拠に。ほら、仮眠室行こう」
「だから大丈夫だと……」
「行くの!!」
nameの真剣な声音に、思わず何も言えなくなってしまう。部下に黙らされてしまうのは、情けない。
他の奴ら…プロシュートやギアッチョに同じような口調で言われても言い返せるだろうが、何故かnameには強く言い返せない。
nameは押し黙った俺の手を取り、仮眠室へ引っ張っていく。
「まったく…それにご飯も食べてないでしょ? 不健康すぎるよ」
「いや、食べてるぞ?」
「一日に一回だけしか食べないのは、食べてるのうちには入りません」
まるで母親だ…。自分の母親に色々言われた記憶はあまりないが、まさかこの年になってこんな経験をするなんて…思いもしなかった。
nameは仮眠室のドアを開け、俺を引き込む。
なんとも強引な女だ。誘ってるんじゃないかと、思ってしまう。
「…メローネやプロシュートには同じことするなよ?」
「は? なんで?」
キョトンとしてこちらを見るnameに思わず苦笑いを浮かべてしまう。
本当に天然というか…自分の価値をよくわかっていないというか…。普段は部下としてしか見れないが、二人っきりになってこういうことをされると、どうしても女として見てしまう。
「襲われるぞ」
「なにアホなこと言ってんの…?」
怪訝そうな表情をするnameに、苛立ちを覚えた。一度襲われなきゃ、わからんのだろう。
俺は衝動的にnameをベッドに突き倒し、その上に馬乗りになる。あまりに急な行動に、nameの口から小さな悲鳴が漏れた。
そして自分の頭巾をとってから、nameの両手首を掴んでベッドに押し付けた。
「こうやって、襲われるぞ」
顔をnameに近づけ、そう呟く。
日常ではありえない展開に言葉と抵抗を失うname。そのキョトンとした表情を見て、少し興奮を覚えた。
思えばセックスはもとより自慰すら、最近はしていない。
眠気も性欲も、溜まっていた分が今一気に来ている。ふと、頭の隅で『ヤバイ』と思った。
「ちょ、ちょっとリゾット……止めてよ…寝なきゃ」
「それは、どういう意味の『寝る』なんだ?」
ああ、ヤバイ。ここで、止めなければ。
そう理性が叫んでいるが、溜め込んでいた本能が溢れ出して止まらない。
いよいよnameが弱いながらも抵抗を示してきたが、力で押さえ込む。
nameの白く細い首筋に顔をうずめ、噛みついた。