とある情交のあとで-3(request)
「おいname、大丈夫かぁ?」
「も、……もうだめ……」
 風呂上り。
 ベッドの上でぐったりとしているnameを見て、つい頬が緩んでしまう。
 メローネから電話があった後、俺は立て続けにnameを抱いた。
 過剰な快楽に涙を流すnameは妖艶で、普段のnameからは全く想像がつかなかった。
「俺も、もう出るもんねぇぜ」
「うわ、ギアッチョ、超下品」
「うるせぇ」
 nameは服を着ながら、楽しそうに笑う。その表情が、たまらなく可愛い。
 できることならば、ずっとこのまま一緒にいたい。仕事とかも全部無視して、人生の時間すべてをnameと過ごしたいと思う。
「家に帰したくねぇなぁ……」
 ぼそり、と願望が口をついて出る。
 その呟きに、nameが顔をあげた。どことなく困った表情をしている。
「……わかってるっつーの。明日も任務があるんだろ?」
「うん………」
 nameが少し俯いた。自然と、俺の手はnameの頭に置かれる。
 “誰”と一緒の任務かは知らないが、nameの態度を見ればなんとなく予想はついた。
 その予想が現実だとしたら、本当に家に帰したくないと思う。
「…よし。服着たら、行くぜ」
「うん」
 それでも、仕事は仕事だ。





 ようやくnameが着替え終わり、俺たちはアパートから出る。
 駐車場に目を向ければ、見慣れたバイクとその主がいた。
「おせぇよ、name」
「メロー…、ネ?」
 メローネがいつもと変わらない態度で、nameに近づく。
 nameは不測の事態に、目を丸くして表情をこわばらせている。
 俺はとっさに、nameを自分の背に隠した。
「……ギアッチョ」
「何しに来たんだぁ? メローネ」
「彼女を迎えに来ちゃいけねーの?」
 へらへらと、俺の後ろにいるnameに笑いかけるメローネ。
 nameが俺の服を、ぎゅっと掴んでいるのがわかる。
「それに、明日の任務の打ち合わせもしたいからさ。どけよ、ギアッチョ」
 棘のある、メローネの声。表情も、いつもより真剣みを帯びている。
 一瞬で、場に険悪な空気が立ち込める。メローネから、微かに殺意が感じ取れた。
 その殺意を感じてか、nameは俺の後ろで震えている。
 nameをかばい続ける俺に、メローネが苛立ち始めた。
 同じチームのメンバーだろうと、関係ない。最悪、ここで殺しあうことになるかもしれない。
 全員が無言で、場の緊張が最大になったとき。俺とメローネが、相手をぶんなぐるために、拳に力を入れたとき。
「ごめん、メローネ!!」
 nameが悲痛そうな声を上げて、メローネに抱きついた。
 その光景に、俺の心臓に棘が刺さる。一方でメローネは、満足そうな笑みを浮かべている。
「おかえり、name」
「私、…私が悪いからっ……ギアッチョと喧嘩しないで……っ!」
 nameを抱きとめたメローネと、目が合う。
 メローネの目は自信に満ちていて、俺を見下している目だった。その目に、俺の腸が煮えくりかえる。
 でも今は、メローネをぶんなぐる時では、ない。
「……name。おめぇは何も悪くねぇだろーが」
「ギアッチョ……ごめん、ごめんなさい」
 nameが泣きながら、俺に謝ってくる。
 いったい、何に対して謝っているんだろうか。
 何もかも、すべてに対して苛立ってしまう。
「ごめんなさい……ごめん……」
「ッ……だから、悪くねぇっつってんだろっ!!」
 こぶしを壁に叩きつける。ドン、と重い衝撃が腕に伝わる。
 俺の怒声に、nameがおびえた。フルフルと、瞳が揺れている。
 メローネの、噛み殺した笑い声が、鼓膜を揺らす。
「惨めだぜ、ギアッチョ」
 メローネの、言うとおりだ。
 怯えているnameを一瞬だけ見て、目をそらした。
 そして「謝るんじゃねぇよ、クソッ…」と絞り出すようにつぶやく。
「で? どうだった?」
「………あぁ?」
「nameとのセックスは」
 思いっきり、メローネの顔面に向けて拳を放った。
 此奴は、毎回毎回、そーゆーことしか言えねーのか。
 しかし、俺の拳はメローネのわずか手前で止められた。
「……ベイビィフェイス……っ!」
 メローネの『息子』が、俺の手首を掴んでいる。
 ギロリとメローネを睨めば、鼻で笑って肩をすくめた。その仕草に、ますます腹が立つ。
「よっぽどブチ割られてぇみたいだなぁ、メローネよぉーーッ!!」
 俺は一瞬でベイビィフェイスを氷の破片に変え、メローネを睨みつけた。
 メローネはnameをしっかりと抱きしめている。
 このまま温度を下げれば、nameまで巻き込んでしまう。
「……nameを離せよ、メローネ」
「嫌だね。死にたくねぇから」
「じゃあname。こっちに来い」
「わたさねぇよ?」
 と言いつつ、メローネはnameを拘束する腕を、解いている。
 俺は、nameに向かって手を差し伸べている。
 ……nameは、どちらを選ぶんだろうか。
 メローネのそばに、とどまるか。
 それとも、俺のほうへやってくるか。
 当のnameは、泣きながら困惑している。
「私……私……」
「name」



 nameが、選んだのは。

 メローネ ギアッチョ
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