狂った歯車たち-2(request)
「んっ……もういい、よ…ブチャラティ」

 nameが上半身を起こし、俺の頬をなでる。
 その顔は、寂しそうな嬉しそうな…見ているこっちを煽り、不安定にさせる笑顔だ。
 汗で額に張り付いた前髪を払ってやる。

「いいのか?」
「うん……ずっと…」

 こうして欲しかったの。
 その言葉を聞きたくなくて、俺はnameに強引な口付けをする。
 好きだけど。好きだけど、こんなことはしたくなかった。
 唇を離せば、nameと目が合う。

―――どうしてそんな、複雑な表情をする?

 胸が、締め付けられる。

「好きだよ、ブチャラティ」
「……俺もだ、name」

 そんな、顔…しないでくれ。
 嬉し涙だろう。nameの頬を伝った涙を指先で拭いてやり、抱きしめる。
 折れてしまいそうなほど、華奢な体。
 nameは本望だとしても、俺はnameを汚したくない。
 でも、もう後戻りなんて出来ない。
 ここで行為を中断すれば、nameは間違いなく傷つく。
 俺は、nameの膝裏を持ち上げ、肩にかける。
 自分自身をnameの秘部にあてがう。そこは、ふれあった場所が溶けてしまうんじゃないかと思うほど熱く、湿っていた。
 ……なかなか入っていかない。

「……name」
「っ……? な、に?」
「処女、なのか?」

 その問いに、nameは「気にしないで」と答えた。
 気にもする。
 一瞬、処女を理由に行為を中断しようと思った。でも、nameなら俺のために他の男に抱かれてくるかもしれない。
 それは、嫌だ。
 nameが好きな男に抱かれるのはさして問題じゃない。俺のために―――俺とセックスをするために、抱かれる、というのは耐え難い。
 一瞬の戸惑いの後、俺は挿入を再開する。
 狭い秘部と、苦悶の表情を浮かべるnameに対し、もう罪悪感しかない。
 こんなこと、していていいのだろうか?
 でも、nameを傷つけないためには、nameの笑顔を守るためには、こうするしかない。
 すべて、nameと俺の愛情の違いから目を背けていた、自分のせいだ。

「あっ……うう…」
「力を抜くんだ…name」

 シーツを握るnameの手に、より力が入る。
 ようやく、俺の先端がnameの最奥に到達した。
 …やってしまった。汚してしまった。
 いくら後悔しても、快感は関係なくやってくる。それがどうしても憎くて、悲しくて、胸を締め付ける。
 好きな女と繋がれることは、幸せなはずなのに。
 どうしても、俺は、禁忌を破ってしまったような、聖域を汚してしまったような、そんな感情ばかり抱いてしまう。

「う、ごいて…いいよ」

 苦しそうに声を出すname。その言葉に従い、ゆっくりと腰を引いた。
 それだけなのに、気持ちよくて、今すぐにも射精したくなる。
 出し入れを繰り返すうちに、nameの反応が艶やかなモノに変わっていく。
 相変わらず苦しそうなのに変わりはないが、どことなく官能的な息遣いで、漏れる声も色をふくんできた。

「んあっ……あ、…はっ…」

 nameの声に、脳が痺れる。
 迫ってくる射精感に耐えながら、nameを揺さぶる。
 後悔の念は消えないが、体はどうしても本能に忠実なようだ。腰が、止まらない。
 nameの声や表情に、理性が削られる。

―――限界だ。

 俺は、なけなしの理性を稼働させ、nameの中から自分を引き抜いた。
 そして、白いnameの腹に精液を放つ。
 nameは腕で目元を隠しながら、肩で息をしていた。
 その腕を引きはがし、nameの顔を見つめる。

「ごめんなさい」
「………謝らないでくれ」
「私…自分勝手で……こんなこと…」
「…name」
「ブチャラティは、望んでなかったのに」
「分かったから……」
「きらいに、ならないで」
「分かってる。だから…」

 泣くんじゃない。嫌いになる訳がない。だって俺は―――。
 俺は………。







 …なぁ。
 どうして俺たちは、こうも噛み合わないんだろうな。
 お互いを愛しているはずなのに。
 
 俺は、お前を大切にしすぎたんだ、きっと。

 でも、宝物を汚したくない気持ちも…わかるだろ?
 なぁ、name…。


 泣きつかれて寝てしまったnameに、問いかけても、答えは返ってこない。
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