狂った歯車たち-1(request)
(ブチャラティ裏夢)




「抱いてよ」

 …どうしてこうなったのか。
 俺は、nameを見上げて、ため息をつく。
 nameは真剣な表情から、先程の言葉は冗談なんかではない、と分かる。
 俺に好意を抱いているのは前々から知っていた。でも、俺は、その気持ちから逃げていた。
 その報いが今、こうして訪れている…とでも言うのだろうか。
 nameが顔を近づけてくる。
 真っ黒な、今にも泣き出しそうな瞳。
 拒否、しなければ。
 頭では分かっている。けれど、どうしても体を動かせない。指先すら動かない。

「ねぇ、ブチャラティ」

 かすれた声。熱い息。潤んだ瞳。
 鼻の触れ合う距離で、もう一度囁かれる。

「お願い」

 ………。泣くなよ、お願いだから。

 ようやく体が動いたと思ったら。
 俺は、nameを押しのけずに、むしろ抱きしめていた。
 泣くなよ、泣き止んでくれ。―――お願いだから…。


 俺は、お前の涙に、弱いんだ。











 nameとバーに出かけて、それで、酔ったnameを家に送り届けて。
 駄々をこねるnameをベッドまで運んだ、と思った矢先、俺の腕は強い力で引っ張られた。
 普段ならば、その手を振り払う余裕も、体勢を維持する余裕もあった。けれど、俺はろくに抵抗もできず、nameの下に組み敷かれる形になってしまった。
 それで、こうして今、俺とnameはベッドの上で情事に耽っているのだが……。

―――正直、心が痛い。

 自分の愛撫に、異常なまでに応えてくれるname。
 そんなnameの反応を見て、熱くなっていく自分。
 何もかもがおかしい。さっきまでは。昨日までは、こんなんじゃなかった。
 自分の体とは裏腹に、ゆっくりと沈んでいく心。
 罪悪感のような、背徳感のような。とにかくそう言ったもやもやが、俺の心をつかんで闇へと引きずり込んでいく。

 自分は今、家族の様に愛し、守りたいと思っていた女性を、性欲の対象にしているんだ。

 俺がnameに向ける愛情と、nameが俺に向ける愛情。
 噛み合っていれば、なんら問題なかった。
 でも、それは元から噛み合ってなくて、居心地の良さからその不具合を暗黙した結果が、これだ。
 当然の結果…。しかし、どうしたら、いいのだろうか。
 そんな、具体性のない疑問が脳内を駆けるが、俺の体は一向に落ち着かないでいた。

「あっ…ん……」
「………」

 色っぽい、nameの声。それにすら、反応を示す俺。
 もう、どうしようもない。…どうしようも。
 柔らかいnameの肉体に舌を這わせて、汗を舐めとる。
 nameの、味しかしない。混じりっけのない、ただの汗。
 焦りや嘘や、そういった類のもので分泌されるのではなく、ただ火照った体から出る、生理的な汗。
 nameの気持ちが真実だとしても。これは間違っていることではないのですか?
 彼女を情欲の対象として、見ることは。

「もっと……してよ…」
「………ああ」

 胸のラインを舌でなぞり、へそを通過して、下半身へ向かう。
 女の臭いが鼻につくそこを指で割り開いて、舌先で陰核を刺激すれば、可哀想なほど切羽詰った声がnameの口から漏れる。
 正直、止めたいと思う反面、このまま最後までしたいとも思う。
 その矛盾が、俺の心を締め付けて、壊死させていくようだ。
 nameの手が、俺の髪の毛を乱す。その手を、自分の手で包み、指を絡めとる。
 耳には、粘着質な水音と、nameの嬌声しか入らない。
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