月明かりの下にて(request)
(ジョルノと甘々なデート)


 デート、というものは、こんなにも緊張するものだったか。
 nameは横を流れていく町並みを見つつ、自分のほほをつねった。
 そんなnameをみて、ハンドルを握るジョルノが笑う。

「なにやってるんですか」
「いや…夢かなーって思って」

 正直、デートなんて夢のまた夢だと思っていた。
 ジョルノもnameも多忙で、一日中一緒に入れる日なんて、なかなかない。
 だから、こうして二人でゆっくり出かけるなんて…。老後の楽しみだと思っていた。
 まぁギャングに、穏やかな老後が訪れるのかはわからないが。

「さて。次はどこに行きましょうか」
「ジョルノが連れてってくれるなら、どこだって構わないよ」
「まったく…。可愛いこと言ってくれるじゃないですか」

 ジョルノは手を伸ばし、nameの頭をなでる。
 とりあえず、最初の予定通り、ローマでショッピングでもするか。
 案外ショッピング好きなnameをみて、ジョルノは笑った。

「じゃあローマに行きますか」
「ほんと? 買い物していい?」

 予想通りの反応を返してくるnameが愛おしくてたまらないジョルノだった。







 手をつなぎ、ローマを歩く。
 街を行く人が、ジョルノとnameに見とれ、一瞬だが足を止める人もいた。
 まさに美男美女、としか言いようがない二人。
 しかし当の本人―――nameは、そんなこと気にしている余裕がなかった。

「あぁ〜…て、手汗とか大丈夫…?」
「大丈夫ですよ、気にしなくても」

 ジョルノと手をつないで歩いている緊張からか、手汗の分泌がひどい。
 そんなことを気にしているnameの手を、ジョルノはより強く握る。
 幸せ。その一言に尽きる。ジョルノの顔は、緩みっぱなしだ。

「あ…クレープおいしそう…」
「緊張してても食欲は変わらないんですね」
「うー…そういうこと言う…」

 クレープ屋を見つけ、nameはジョルノの手を引っ張っていく。
 そしてメニューに目を通しながら、にこにことする。
 …こういう仕草が、いちいち可愛いのだ。
 仕事で知り合う女は誰もが着飾って、しなを作ってくる。きつすぎる香水も、露出の高すぎる服も、素顔を隠す厚化粧も。
 ―――どれもこれも、胸糞悪い。
 素朴で、なのに可愛くて、メイクも整える程度しかしないname。
 取り入ろうと媚を売らずに、あくまでも一人の人間として僕に接してくれる。
 そんなnameに惹かれ、今こうして二人の時間を過ごせるなんて…なんて恵まれているんだ。

「むー…チョコバナナでいいかな…いや、イチゴも捨てがたい…」

 真剣な表情でクレープを選ぶnameをみて、ジョルノはより一層幸福感に包まれた。







 イタリアはすっかり闇に包まれている。
 車の後部座席には、たくさんの荷物。…どれもこれも、ジョルノがnameに『プレゼント』したものだ。
 服、雑貨、アクセサリー、靴…。とにかく、nameが一言でも「可愛いなぁ」とつぶやけば、お買い上げ。
 当のnameは、非常に困惑しているが。

「こんなにお金出してもらって…なんか申し訳ないな」
「気にしないでください。僕がこうしたかっただけですから…迷惑でした?」
「迷惑…じゃないけど、限度を知ろうか」
「…はい」

 まだまだ僕も子供、か…。
 nameは困ったような笑顔を浮かべ、「でも、ありがとう」という。
 胸の奥が、きゅんとする。

「name、時間はまだ大丈夫ですか?」
「あ、うん。大丈夫。あした、別に用事ないし」

 そのままnameを家に送り届けようか、と思ったけど予定変更だ。
 僕はハンドルを切って、脇道に入る。
 しばらく車を走らせてたどり着いたところは、丘の上にある廃教会だ。
 有名な観光地でもないが、お気に入りの場所。ネアポリスを一望できる。
 なぜこの教会が廃れてしまったのか…僕には分からない。

「ここは?」
「廃教会ですよ。荒れないように、僕が土地を買い取って管理しています」

 nameの手を取って、僕は教会の中に入る。
 …nameもだいぶ、手を握ることに慣れたようだ。緊張しているのも初々しさがあってよかったが、この、いかにも「当然」と言わんばかりに手をつなぐ、というのもオツなものだ。
 教会の中は、まるで人気がない。
 天窓から月明かりが落ち、十字架にかけられたメシアを照らしている。
 不気味、なんて雰囲気はみじんもない。ただ静けさが、場を満たしている。

「誰もいない夜の教会なんて、初めて来たよ」
「窓からネアポリスの夜景も見えますよ」
「あ、本当だー」

 そんな感想を言うnameを、教会の奥に連れて行く。
 十字架の正面。そこで僕とnameは向き合った。

「ジョルノ?」
「こうしてここで向き合うと、新郎新婦…みたいじゃないですか?」

 くすりと笑い、nameの左手の薬指にキスを落とす。
 言葉と、その行為にnameは顔を真っ赤にした。
 真っ赤にしつつも、「そ、そうだね」とつぶやく。そんな仕草に、胸がときめくのを感じた。
 nameの顎を持ち上げ、僕の方へ向ける。
 顔にかかった髪の毛を指先でどかしてやり、親指で唇をなぞる。

「キス、してもいいですか?」

 普段はそんなことを聞かない。でも、今だけは聞かなくちゃいけない。
 この状況この場所でキスをするんだ。…僕が、何を言わんとしているかぐらい、nameにもわかるだろう。
 ―――ああ、どうか。
 「はい」と、言ってください、name。
 アナタを、人生の伴侶にしたいんです。

 しばしの沈黙。自分の顔が熱くなるのを感じる。
 目の前のnameを見つめれば、僕と同じように顔を真っ赤にしていた。
 …どうやら、僕の真意は伝わった…のだろうか。

「………はい」

 消え去りそうだが、確かな声。
 僕の手を握るnameの手に、力がこもる。

 如何なる時も―――死がふたりを分かつまで、愛し慈しみ貞節を守ることをここに誓いましょう。
 いや、たとえ、死が訪れても。
 あなたは僕のもので、僕はあなたのものだ。

 重ねていた唇を離し、見つめ合う。

「愛してますよ」

 月明かりの下で、僕らはただただお互いの形を確かめ合った。
 …数年後、ここで僕らは本当の誓いを立てることになるが、それはまた別のお話だ。











(あとがき)
ジョルノと仲良くデート…というリクエストでしたが
デートの描写が少なすぎますね!
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