水着と主導権と私

「name、どっち着る?」
「うーん、みぎかなっ! …………って何それ」

ミスタが可愛らしい水着を両手に持ち、私に見せつけてくる。
右、ひらひら。左、ふりふり。
………両方とも布面積は小さい。

近いうちに海、またはプールにいく予定もない。
だと言うのに、ミスタの両手には水着。
ああ、理解に苦しむ。

「なにそれ、って……水着だぜ?」
「それはわかる。でも………」
「まあまあ細かいことはいいじゃねーか!」

はい、と右手に持っていた水着を私に押し付けてくるミスタ。
………着ろ、という意味だろうか。
私は押し付けられた水着を持ち、少し困る。

ミスタはミスタでにこにこと、なにか期待した目で私を見てくる。

「……………しょうがないなぁ」
「あ? どこいくんだ?」
「トイレとか…脱衣所とか………」
「俺、ここで着てほしいなぁ」

………………こいつ。
私の腕をつかみながら、ミスタは微笑むのを止めない。

欲望丸出しである。

不意にミスタが後ろから抱きつき、私の服に手をかけてきた。
ゆっくりとパーカーを脱がされる。

「はーやーく」
「誰も脱がせてなんていってないけど?」
「ん〜?」

あきれながらも、私はミスタに服を剥ぎ取られていく。
抵抗する気になれないのは………私がミスタの事が好きだからだろう。

大好きな恋人だから、抵抗する気になれない。
ほら、あっという間に下着姿。

「抵抗しねぇの?」
「しても無駄だからね」
「わかってんじゃん、name」

ブラのホックをはずしながら、ミスタが笑う。
この屈託のない笑顔。この笑顔に負けてしまう。

「というか何故水着?」
「たまにはいいかなぁーって思ってよぉ」

水着きてエロいことすんのも。
耳元でミスタがそう囁く。
背筋が情欲でぞわりと撫でられた。
年下の恋人に、こんな風に主導権を握られるのが悔しい。…反面、快感でもあるのだが。

ばぁか、と呟き、ミスタに口付けをする。

…水着も悪くない。なんて。

私はミスタから離れ、水着をさっさと身に付けた。
ミスタは少し残念そうな顔をしている。
…それをみて、少し笑ってしまった。

「何残念そうな顔してんの」
「別にぃ…」

少しすねている。

「さ。雰囲気出すためにお風呂いこーっと」

そういい、ミスタに笑いかける。
…わかりやすく笑顔になるミスタ。

こーゆー所が可愛くて笑ってしまう。


そう思いつつ、私はミスタの手を引きながらバスルームへ向かった。


(主導権を取り合う仲、というのも楽しかったり………なんてね)
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