「こんにちわ」
「あ、ジョルノ」
タクシーのバイトの合間に町を歩いていると、見知った顔を見つけた。
僕はnameに近づき、横に並ぶ。
「どこいくんですか?」
「隣町へ買い物ー」
わざわざ電車に乗り、隣町に買い物へ行くそうだ。
僕は自分の来た道を戻ることになるが、nameと肩を並べて歩く。
こうしてnameと町中で会うのは初めてだ。
少し嬉しくなる。
しばらく歩いていると、僕は自分の右手に握られたものの存在を思い出した。
車のキーだ。
「そうだ、車ありますよ。乗ってきますか?」
「まじか。………ぼったくられそうだな…」
「そんなことしませんって」
一般人相手にならするけど。
そんなことを思いつつ、車を止めてある場所まで歩いていく。
駐車場についたので、鍵を開けた。
nameを助手席に乗せ、エンジンをかける。
「さぁレッツゴー!」
nameの掛け声と共に、アクセルを踏んだ。
「買い物って、タバコですか……」
タバコを何カートンも膝に抱え、助手席でホクホク顔のname。
たかがタバコを買いにいくだけで隣町まで足を運ぶnameに少しあきれてしまう。
「いやぁ、これさ〜、なかなか売ってないんだよね」
さっそく一箱取りだし、タバコをくわえる。
タバコをくわえるnameを見たことがなかったので、物珍しさからじろじろ見てしまった。
「あ、ダメだった?」
「いや、大丈夫ですよ。ただ……初めてみたから…」
「まあねー。人前じゃあまり吸わないから」
タバコの先端に火をつけ、煙を吐き出す。
タバコ本来の臭いに混じった甘ったるい臭い。
この匂いはよく知っている。nameの匂いだ。
…ずっと、香水だと思っていた。
海沿いを走る車。
水平線を見ながらタバコを吸うname。
窓を開けても、甘ったるい臭いに満ちて行く車内。
「name」
「なに?」
「一本もらえますか?」
「いいよ」
差し出されたタバコを受け取り、くわえる。
nameの顔が近づいてきた。
「…………………」
「…………なんですか」
「火。ライター出すのめんどくさいから」
僕、運転中なんですけど……。nameの方を向いて、ハンドル操作を謝ったらどうするつもりだろうか。
僕は車を路肩にとめて、火をもらう。
想像以上の匂いが鼻をつく。
これが、いつもnameの嗅いでいる臭い。そう思うと濃厚な甘い香りも心地よく感じた。
「ジョルノ、タバコ吸ったことあるの?」
「いや、初めてですよ」
「あ、そうなんだ。それにしては様になってるじゃん」
楽しそうに笑うname。
僕もつられて笑ってしまう。
「見て。綺麗な夕焼けだよ、ジョルノ」
「ええ、綺麗ですね」
空気に薄れていく煙。
「また来ましょうか」
「デートのお誘い?」
「はい、そうですよ」
素直に肯定すると、nameがむせる。
ある意味素直なnameの態度に、口許が緩んだ。
「顔、赤いですよ」
「…夕日が赤いからね!」
.end