「この空が続く果てには大好きな人が待ってる〜、」 「相変わらず歌うまいね。」 ガチャっと屋上の扉が開く音が聞こえてそっちを見たらおんなじクラスのなまえがいた。 「またサボり?」 「おめーもだろ?」 「まぁねっ」 いつものようになまえが俺の隣に緩めの体操座りをして座る。 「続き、うたってよ」 「しょうがねぇなー」 ぶっきらぼうに言ってみるけどほんとはまたお前が屋上に来ると思って歌っていた。なまえに誉められることが俺はすごく嬉しいことだから。 「君もきっと見上げているどこまでも続くこの空〜」 青い空は雲がひとつもない。風が気持ちいい。 「ただそばに居てくれるだけでいい大切な人よ〜」 なまえを見たらそんな青空を見て俺が歌っている曲を一緒にくちずさんでいた。 「やっぱブン太の歌好きだなあ」 「さんきゅ。」 「ねぇ、ブン太」 「ん?」 トントンと後ろから肩を叩かれて振り返ったらなまえの人差し指が俺のほっぺにぷにゅっと刺さった。 「ニヒヒっ」 「ニヒヒっ、」 なまえが笑うからつられたように笑ってみせる。 「ブン太のほっぺ気持ちいいね〜」 「それはさりげなくブタって言いてぇの?」 「まぁ、それもあるかも」 あははっなんて笑うなまえにお仕置きとか言ってくすぐり攻撃をしたら涙を流しながら大笑いした。 「まじ、ギブギブギブー!きゃはははっ」 「うっせ、耳元で叫ぶなって!」 「だって、あははっくすぐったいー!」 止めてーっ!と俺をボカボカと叩く。その衝撃でなまえが前のめりになって俺は押し倒された。 「…なまえて大胆なのな」 「・・・」 まっすぐと俺を見つめてなまえは黙りこんでいた。別にこの沈黙は嫌いじゃない。 「ブン太、」 「ん?」 やっとなまえが話し出したと思えば、柔らかい感触が唇に触れた。 「ねぇ、ブン太」 「…なんだよ」 「好き…かも」 「かもってなんだよ。キスしたくせに」 「じゃあ好き」 「お前な…」 「好きっ」 押し倒されたままもっかいキスをした。なまえの長い髪がほほに当たってくすぐったい。唇が離れるとなまえと目が合った。 「なまえっ」 「・・・」 「俺も好き…かも、」 「かもって…」 「ウソ。大好き。」 ニヤっと笑って体を起こしてなまえの腕をつかむ。次は俺からキスをした。 「ブン太。」 「ん?」 「歌、うたって」 「いいぜ」 ふたりで座り直して、空を見上げながら俺は歌った。なまえはまた体操座りをしている。 「守り続けるんだしっかりと歩き続けるんだ未来まで〜」 歌い終わるとなまえが俺の肩にもたれかかってきた。 「空、きれいだね」 「そうだな」 どこまでも長く続く広い空を眺めてなまえの手をギュッと握った。 「君がかけがえないということをこの空の向こうに伝えたいずっと守っていく未来まで」 「それ、誰を思ってるの?」 そんなん決まってんだろぃ? 少し期待したような目で俺を見ているなまえの肩を抱いて軽くちゅっと口づけをする。 「お前だよ。」 「ブン太、大好き」 「知ってる。」 ニカっと笑うなまえが太陽みたいで少し眩しく感じた。 青空の想い 2010.6.8 |