満月の夜、一人の男が夜の遊びを楽しんでいた。 「フルハウスだ」 「悪いな。ストレートフラッシュや」 「けっ!持ってけ!」 「きゃー!光ー!」 男のもとに女が群がる。至って男はクールだった。 「光ーっ。今日はあたしんちに来てえ」 「えー、今日はあたしよ!」 ギャイギャイ騒ぐ女たちを振りほどいて男はチップを現金に還元する。 「今日はまっすぐ帰るわ」 「ちょっと光ー!」 女どもは声をそろえて男を呼び止めた。が、そんなことは気にもしずに男は扉から出て行った。 「…さっむ」 男の名前は財前光。三年前に、若干十七歳にしてギャンブルの世界にはまった。ここぞという勝負に強く、周りからは天才と呼ばれている。ルックスもよく、彼が店に行けば女たちは勝手に群がる。決して光が女に媚びることはないが、使えることがあれば光は適当に利用していた。 「なんで雪降っとんねん」 パラパラと雪が降っていてはぁっと息を吐けば白い息が出た。時間はもう夜の十二時を回っている。 「早よ帰ろ…」 積もった雪で少し靴が埋まる。イライラしつつも光は早歩きで家を目指した。 「うっざいわ…。!」 ふとビルとビルの間を見ると暗いそこに一人の女が倒れていた。 「なんや、こんな時間に。酔っ払いか?」 気になって近づいてみると女はびくともしない。 「もしもーし。死んどんの?」 足で仰向けにする。すると女はうっ…と小さく呻いた。 「生きとるやん。こんな時間に何してんねん」 「あ、あたし…っ」 女は何かを言おうとしたがまた倒れてしまった。 「ちょっ、おい」 何度も呼びかけるが何も反応がない。めんどくさくて放置していこうと思ったがよく見れば顔はかなりの好みで放っておくにはもったいなかった。 「はぁ…しゃーないな」 女をおぶって帰ることにした。女には所々に怪我やあざの跡があって、おぶったときの女の軽さに光は驚いた。 「よっと、」 家について女をベッドに寝かせる。できるところだけ怪我の手当をしてそっとしておいた。しかし、女が起きる気配は全くなかった。 * それから一週間後。 「地獄って案外庶民的なところだなー…」 「悪るいな、庶民的なところで。」 「えっ…」 バッと布団から起き上がって驚いた様子で光を見る。 「あなたが…あたしを助けてくれたんですか?」 「そーやけど、」 「あ、ありがとうございます」 深々と頭を下げられて少し光は戸惑った。 「アンタ、名前は?」 「なまえ…ですっ」 「ふーん。ええ名前やん」 「あっ、ありがとうございます」 照れるなまえをかわいいと光は思った。 (俺、こういうのがタイプやったんか) 「あの、あなたのお名前は?」 「光。」 「光さん…ですか」 「なまえはあんなとこで何してたんや?怪我しとったし正直、一週間も眠りっぱなしだったアンタがなんかに巻き込まれてないとは言い難いんやけど、」 「・・・」 しばらく沈黙が続く。 「…まぁ、言いたないならええけど」 「すみません…」 「いや、別に。コーヒー飲む?」 「はい。頂きます」 にっこりと笑うなまえに光もつられて微笑んだ。 「光さんは何歳なんですか?」 「二十歳や」 「若いですね」 「え。ほななまえは?」 「あたしは二十三です」 「えっほんまに?」 (童顔やしかわええ顔しとるから俺より年下かと思った) 「なんか、びっくりや」 「失礼ですよ」 ちょっと怒った彼女もかわいいと思った。まだ出会って間もない二人だが光はなまえの見せるさまざまな表情に今まで抱いたことのない感情を抱いていた。 「なまえはこれから行くとこあるん?」 「…ないです」 「しばらく俺んとこにおる?」 「え、」 「まぁ、なまえが嫌ならええけど」 「いえ!全然嫌じゃないです!」 よろしくお願いします!と言ってなまえは光の腕を掴んで頭を下げた。 そして光となまえが生活し始めて二、三日がたったある日。 |