きみとあたし。 | ナノ
 14.氷帝学園



「なまえちゃん、ばいばいー」
「また明日な」
「二人ともばいばい」

授業が終わって帰ろうとしたときにジロー君と宍戸くんが手を振ってくれた。

他にも女の子の友達もできて、とりあえずは一安心。

「なまえ」

扉の方で名前を呼ばれて、見ると景吾くんがそこに立っていた。

教室が少しざわつき出す。

「俺は部活があって一緒に帰れねぇけど、お前は車に乗って帰れ。もう門の前に待機しているはずだ」
「あ、えっと、ちょっとだけ校内とか探険したいんだけど…ダメかな?」

いろいろ見て回りたいしと付け足して景吾くんを見たら、少し顔が赤くなっていた。

「探険とか…かわいいじゃねーの」
「うわっ」

頭をぐしゃっと撫でられて髪がボサボサになった。

今のは照れ隠し?

「いいぜ。帰るときになったらここに電話しな」
「わかった。ありがとう」

じゃあな、と言って景吾くんは部活に行った。

さて、探険するっていっても校舎が広すぎて迷子になってしまうんじゃないか。

「とりあえず適当に回ろう」

そう言ってあたしは教室を出た。





図書室はとても大きな図書館並みに広くてない本なんてないんじゃないかと思うくらいだった。やっぱり立海とは規模が違う。案の定何度も迷って同じ道を行ったり来たりしてしまった。

「氷帝ってすごいなー」

部活動も盛んでどこの部活も練習姿は気合いが入っていた。

あと行っていない場所はあそこだ。

「テニスコート…」

景吾くんはどんな風に練習をしているんだろう。ジロー君や宍戸くんがテニスしてるとこも見てみたいな。

そんなことを思いながらテニスコートに向かった。

「跡部さまー!」
「素敵ーっ!きゃー!」
「かっこいいですー!!」

ギャラリーの数は立海よりも多い。まぁ立海は真田くんがうるさいとギャラリーを追い払うのもあるけれど…。

大半が景吾くん目当てみたい。

「俺様の美技に、酔いな」
「「きゃーぁあ!!」」

景吾くんの一言で一気に熱が上がる女の子たち。

「ほんとにすごいなぁ」
「ほんまええ足しとるわぁ」

声がしてはっと隣を見ると知らない人。

えっ?誰…?ユニフォーム着てるから、テニス部?

「自分も跡部目当てなん?」
「目当てっていうかちょっと練習を見に…」
「なんや。マネージャー志望?」
「ち、ちがいます!」

急に話しかけられてマネージャー志望と聞かれ、慌ててしまう。

ていうかこの人の声が低くて、その低音ボイスにゾクッとして鳥肌がたった。

「つれへんなぁ」
「ひっ!」

髪をいじられて思わず声をあげてしまった。

この人は一体なんなの!?

「おい、忍足!!てめぇ何してんだ!」

コートから跡部くんが大声を上げて叫んでいた。

「何って、マネージャー勧誘」
「誰に許可を得てなまえに触ってんだよ。アーン?」
「なまえ?あ、もしかして自分が噂の跡部の花嫁さんか?」

噂って…やっぱり噂になってるんだ。そりゃあんだけ朝に景吾くんが叫んでたから仕方ないよね…。

「めっちゃべっぴんさんでかわええやん。跡部にはもったいないわ〜」
「えっ」
「自分、俺の花嫁さんにならへん?」
「なるか、変態!」

ドスっとその男の子の頭辺りで鈍い音がなった。

「景吾くん!」
「忍足。テメーいい度胸じゃねーの」

さっきまでコートにいた景吾くんはラケットを片手に走ってきたみたい。

「なまえ、こいつは相当なド変態だからな。注意しろ」
「酷い言われようやわあ」
「うるせぇ。さっさと練習に参加しやがれ」
「はいはい」

諦めたようにその人はテニスコートに向かった。

「あ、俺、忍足侑士。覚えといてな。なまえちゃん」

ニッコリと微笑んで忍足くんは手を振った。

「はやく行け」
「景ちゃんのいけず〜」
「黙りやがれ!景ちゃん言うんじゃねー!!」
「け、景吾くん言い過ぎ」
「ハッ。あんくらい言わねぇとあのロリコンは聞かねぇんだよ」

チッと舌打ちをして景吾くんは忍足くんを睨み付けていた。

でもほんとは二人の仲がいいことが何となくだけどわかった。

「そろそろ帰るか?」
「ううん。もうちょっとだけ見ていく」
「…そうか」

そう言ってテニスコートに戻っていく景吾くん。しばらくの間、あたしは練習風景をじっと見つめていた。



テニスをしている景吾くんは本当にテニスが好きなんだなって思えるくらい、輝いていた。





2011.5.18

「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -