「仁王、ちょっと話したいことがあるの。いいかな?」
六時間目、テニス部の部室の前で待ってる。そう言ってマネージャーのなまえは自分のクラスへと戻って行った。
「…っしゃーーっ!!」
勝った!俺は勝ったナリ!!急に廊下で叫んだ俺を周りの奴らは痛い目で見ちょった。そんなもん今の俺はなんら気になどしない。だって、あのなまえからまさかの呼び出し!これはもう告白フラグ立ちまくりぜよ!
「おい、仁王。何かあったのかよ?」
「フッ。悪いの、ブンちゃん」
「は?」
気持ち悪りぃ、とブンちゃんの声が微かに聞こえたがやっぱり今の俺には関係ない!
「モテる男は辛いぜよ」
「キモ」
しかも、しかも!なんと今日は俺の誕生日!まさに告白DAYにぴったりなシチュエーションじゃ。
「におーくん!これ、プレゼント受け取って!」
「すまんの。今日はあいつからの贈り物以外は受け取らんことにしとるけぇ」
次から次へとプレゼントを渡しに来る女共にかっこよくそう言い切る。なんて罪な男じゃ、俺。
「うわー。ありえねぇ。あれ全部手作りケーキだぜ?」
「尚更、受け取れん」
「俺が代わりに貰っとけば良かったー」
菓子をくれる女なら誰でもええんか。この邪道なブタめ…。
「俺は今日なまえ以外の奴からプレゼントは貰わん!」
「……へー」
目を細めてブンちゃんは話を聞いていた。俺の妄想を黙って聞いてくれた。
「そしたら、もちろん授業中の部室には誰もおらんからなまえは顔を赤らめて、仁王…しよ?なんて言って、服のボタンをいやらしく一つ一つ取って、でも俺は待ちきれんくってガバーっとなまえに覆い被さって!ふんでそんで、なまえのおっぱいを優しく激しく揉みしごいて!!」
「落ち着けよぃ」
息がハァハァと上がった。やばい、半勃ちになってきたナリ。
「早く六時間目にならんかな〜」
鼻歌交じりでそう言うと、頭を叩かれた。そうじゃ今五時間目の途中じゃった。
「バーカ」
ブンちゃんに鼻で笑われた。
*
「終わったーーっ!」
五時間目の終わりを告げるチャイムが鳴り終わった。トイレにダッシュして鏡の前に立って身だしなみを整える。今から乱れるからあんま意味はない。
「男、仁王雅治!参る!」
ブレザーのポッケにゴムの準備は万端!何ラウンドもできるよう五つは入れた。用意周到ナリ。
「はぁ…」
大きく一つ息を吐いて、部室へと向かった。人影が一つ見える。なまえじゃ!
ここで走るなんてクールな奴のすることじゃない。ゆっくり、さっそうと、かっこよく…。
「待たせたな」
「ううん。大丈夫」
きゃ、きゃわいーっ!ニッコリと微笑むなまえ。心臓はバクバクと鼓動を速める。
「さ、さっそく中に…」
「待って、仁王…」
ブレザーの裾を掴んで俺を引き止める。その行動に俺の胸はキュン死にしそう。
「なんじゃ?」
冷静を装っているが、もう限界に近い。俺の本能はギンギンじゃ。
「あのね、伝えたいことがあるの」
来たーっ!告白じゃな!
「なんじゃ?」
「えっと、…」
もじもじするなまえ。もどかしい俺。早く言いんしゃい!俺はいつでもオッケーじゃ!
「お…」
「お…?」
「お誕生日、おめでとう!」
「うわっ!?」
「おめでとう!!!!」
部室の扉が開いて、突然なまえに背中を押され目の前に一瞬、ブンちゃんや幸村や真田に参謀に柳生、赤也にジャコーの顔が見えた。が、すぐに目の前は真っ暗になった。
なにが起きたかさっぱりわからん。でも、一つだけわかることがある。甘い匂いがする。って言うか、目や鼻、口の中に甘いもんが入っちょる。
「成功ッスね!」
「ナイス、なまえ」
赤也とブンちゃんの声が聞こえた。…成功?…ナイス?
「いやー。まんまと引っかかるなんて、仁王も案外子供だなー」
「たるんどる!」
幸村に真田の声。
「実にいいデータが取れた」
「自分が騙される気分はどうですか?仁王くん」
「俺はやめろと言ったんだが…」
参謀、柳生、ジャコー…。
「ごめんね、仁王」
なまえ…。まさか、俺は…。
「はめ…られた」
だんだんと視界が見えるようになってきて、状況が理解できた。顔がベタベタとして気持ち悪い…。
「顔面ケーキどうだったッスか!?」
「ナイス案だろぃ?」
「…」
あんだけ妄想と言う妄想をしていただけあって、恥ずかしくなって泣きたくなった。俺のハートはブレイク寸前。
「ねぇ、仁王せんぱ…」
「こんなふうに祝ってもらっても全然嬉しくなか!」
柄にもなく大声で叫んだ。まさかの展開にみんなも黙ってしまった。俺も今のは良くないと思って、罰が悪そうに下を向く。
「ごめんね、仁王…」
そんな空気の中、なまえが俺の顔をハンカチで拭いてくれた。
「なまえ…」
「みんなね、どんなお祝いしたら仁王が喜んでくれるか一生懸命考えてくれたんだよ?確かに、こんなふうに祝ってもらうの嫌だったかもしれない。けど、みんな仁王のためを思ってしてくれたの」
なまえの優しい声。その言葉を聞くと、俺の湧き上がった怒りも徐々に収まっていく。
「悪かったな、仁王…」
「いや、俺の方こそ大声張り上げて悪かったナリ…。みんな、俺のためにありがとう」
そう言うと、みんなに笑顔が戻った。
「じゃあみんなでケーキ食べよ!あたし焼いてきたから!」
「おお!さっすがなまえ先輩!」
やっぱなまえはすごい女じゃ。あんだけ重かった空気がもう晴れ晴れとしちょる。
「はい。仁王の分!」
「すまんの」
「ううん」
食べる前に顔を水道で洗おうと思い席を立って、部室から出た。
「はー」
たまには騙される側でもええか。みんな、俺のことを思ってくれちょる証拠じゃし。
「仁王」
「なまえ…」
「ほんとにごめんね?」
「もお、ええよ」
ぽんぽんとなまえの頭を撫でる。かわいい奴。
「あたしね、まだ仁王に伝えてないことがあるんだ」
「え?」
「…ずっと前から、仁王のことが好きだったの」
これもサプライズ?なんて少し思ったが、部室の中の微かに見えたブンちゃんが親指を立てているのを見て顔が真っ赤になった。
サプライズ・バースデー
(こんな誕生日もたまにはありじゃな)
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遅くなりましたが!
仁王くん誕生日おめでとう(^o^)
途中変な展開になっちゃってギャグに引き戻すことができなかった(T_T)キャラも崩壊しまくり(笑)
まぁ、ハッピーエンドだからいっか(^o^)←
アニメの仁王王国楽しみにしてるよ(笑)
2012.1.29