短編 | ナノ



>>彩香さまリクエスト




「あー!ブン太それ、あたしのお菓子!」
「おう。頂いてる」
「頂いてるじゃねぇよ。勝手にかばんの中漁らないでって、いつも言ってるでしょ」
「うん。わりぃ」

バリ、ボリと学校での非常食用に持ってきたポテチを目の前で貪る。まず反省してんなら手を止めようよ。全くそんな気配ないけど。

「俺のために持ってきたんだろぃ?」
「…」

まぁそうなんだけどさ。ストレート、しかも的確に言われると素直になれるわけない。

「へへっ。なまえも食う?」
「あたりまえでしょ」

ブン太の隣にドカンと座って、ひと摘まみポテチを持っていく。あ、やっぱ手羽先味のポテチ買って正解。

「これ旨いな。やっぱなまえ、センスいい」
「うん。絶対おいしいと思ったもん」

もうひと摘まみ取ろうとしたらブン太がちょい待ち、とか言って袋をパーティー開けにした。さすが菓子に関しては気が利く。

「って、もうほぼないじゃん!」
「ホントだー。おい、なまえ食いすぎ」
「あたしまだ二、三枚しか食べてない」
「しょうがねぇなあ」

ブン太は自分のかばんを探って机の上にドンっと何かを置いた。おぉ!これは…!

「カレー味!」
「旨そうだろぃ?」
「手羽先かカレーかであたし迷ったんだ〜」
「まじ?じゃあちょうどよかったな」

ビリっと袋を開けて、再びパーティー開けにした。机の上はポテチまみれ。

「カレー味もおいしい」
「これ癖になるな!」

ぎゃいぎゃいしながらお菓子パーティーをしていたら近くにいた仁王が臭い…、と言ってあたしたちを細目で見つめていた。確かに教室は変な臭いしてたかも。

「ごちそうさま」
「充電した〜」

お腹押さえて軽くゲップしたブン太にデブ、と言ったらお互い様、なんて言ってお腹の肉を摘ままれた。最悪すぎる。ブン太とは一緒にバカやったりして遠慮とか全くしないけど、やっぱり女の子として見ていて欲しい。もう今更無理な話だが…。

「なんだよ。傷付いた?」
「べっつに〜」
「うわっ。かわいくねぇ」

何気なく言うそんな些細な言葉でさえ、実はあたしにとって凶器だったりする。ブン太に悪気はないんだろうけど。恋する乙女の気持ち、ちょっとはわかって欲しいな。









いつもの帰り道のこと。

「ねぇ、なまえ」
「なにー?」

いつものように一番仲がいい友達といつもの道を二人で歩いていた。今日わ何だか元気がないみたい。

「クラスでなんかあった?」
「ううん。違うの」

別クラスのあたしたちはあまり学校では話すことができない。だからいつもは帰りにその日あったことをおもしろ可笑しくマシンガントークするんだけど、明らか今はそんな空気じゃない。

「あのね、今まで言えなかったんだけど」

そう切り出すと足を止めた。だから、あたしも足を止める。

「あたし…丸井くんが好きなの」

――………。…………今なんて……

「ずっと前からホントは好きで、でもなまえ丸井くんと仲いいからなかなか言えなくて…」

頭が整理できない。ブン太がずっと前から好き?誰が?

「え…ブン太が好きなの?」
「うん。黙っててごめん」

胸を刺されたみたいに痛い。何だろう、これは。

「今日なまえと丸井くんがすごい仲良くしてるの廊下から見えちゃって、不安になったの。ちゃんとなまえに言わなきゃって」

申し訳ない顔をしているけど、どこか安心した顔をしているようにあたしには見えた。言ったもん勝ち…。もうあたしは言っちゃいけない気がした。

「そっか…」
「応援してくれる?」

断れない。だって友達のことも大好きだから。幼稚園からの付き合い。もしここであたしが断ったらギクシャクしてしまう。そんなの嫌だ。だったらあたしは今のままでいい。あたしは…恋愛より友情をとる。

「もちろん!」
「ありがとう!なまえ!」
「うわっ!重いよー」

抱きつかれて、二人に笑顔が戻った。これでいい。あたしは約束は破んないし決意は間違ってない。







「なまえー」
「なに?」
「何で今日素っ気なかったんだよー」
「別に?普通だよ」
「どこが」

あたりまえに一日中ブン太はあたしに絡んできた。正直騒ぎたいし話したかった。でも絶対にダメ。悪いことでもしたのかと心配して、ブン太はこうして授業後に聞いてきたんだろう。

「なんかした?」
「してないって」
「じゃあなんで」
「なんにも変わらないって」
「嘘つけ!」

ギュッと腕を掴まれてびっくりした。

「嫌なんだよ。なまえとギクシャクすんの」
「ブン太…」
「俺は、」

何かを言いかけた途中でブン太はぐいっとあたしを引っ張った。

「なまえが好きなんだよ」

抱きしめられ耳元で続きを囁かれた。嘘だ…。こんなの。

「何言って…「本気だから」

ギュッと力が強くなった。

「なまえ」

くちゅっと耳を噛まれて、舌が中に入り込んできた。

「ブンっ…や!」
「好きだ」

熱い。ブン太の吐息が。目の前にいるブン太をあたしは知らない。

「好き」

腰を抜かして倒れたあたしを押し倒して首筋や鎖骨に舌を這わせる。

「ぁっ…!」
「なまえ、好きだよ。好き」

呪文みたいに何度も何度も好きと繰り返すブン太。止めて。もう言わないで…!

「ふっ…んん!」

唇に噛み付いて乱暴にブン太は舌を入れてきた。

「ッ、ん…」

でもだんだんと優しいキスに変わって、怖いけれどやっぱりブン太だと思った。このままあたし…。

「んっ…!」

刹那。脳裏に友達の顔が浮かんだ。…裏切りたくない。約束は破れない!

「…っ、離して!」

勢いよくブン太を押した。息はハァハァと乱れる。

「なまえ…」
「…」
「好きなんだよ。なまえが…。どうしようもないくらい」

ブン太の声が震えてる。泣かないで。ごめんね…。あたしはもう決めたから。

「あたしはブン太のこと、好きじゃない」

気持ちを圧し殺して、ブン太に悟られないように…。涙をこらえる。

「ごめん」

ダメ…。涙が溢れてくる。限界で荷物を持って急いで教室から走り去った。

「くっそー…ッ!!」

ガタン!という大きな音とブン太の叫びが聞こえた。あぁ…あたしが下した決断はあっていなかったのかもしれない。何か大きくて大切なものを失ってしまった気がする。バカな自分…。

「ぐっ…す、ぅっ、うぁ」
「ブン、太ぁ、ひくっ」
「ほんとは、…だい、すき…っだ、よ…!」


止まれ、止まってよ。涙…。











大切に想うほど、切なく

(――愛してる)







― ― ― ― ― ― ―
切微裏のはずが悲微裏になってしまいましたーっ!すみません(´;ω;`)もっと短いはずだったのにorz←。ポテチとかいらなかったな!

彩香さまリクエストありがとうございました(^O^)!


2011.8.25
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