「――紫乃!!」
私の名前を呼ぶ、その声は王国に到着して間も無く別れた仲間の声だった。
「もう一人の遊戯君!皆ぁ!」
振り返ると遊戯君達がいた。たった2日だけどもう随分会ってない様な気がする。最初に城之内君が肩を小突いて笑った。
「お前、遅いから失格になったんじゃないかって心配してたんだぞ!!」
「心配掛けてごめんね」
「それより決着付けたい人達とは決着がついたの?」
「まだ。…一人だけ、これから」
杏子ちゃんの問に静に私は首を横に振った。相手にしてもらえるか分かんないけどと付け足して軽く笑った。
「そっか!で、その子は…?」
皆の視線が私の隣にいる包帯だらけのキール君に注がれた。
「あ、この子はプレイヤーキラー略してPKのキール君」
「始めまして。キールです〜」
皆に紹介すると私と初めて会った時の様にキール君は人当たりの良い笑みを浮かべた。
相変わらず背景がお花畑だ。皆も和むだろうと思っていたが皆の顔は強張っていた。
「P、PKって…」
「はい。僕はMr.ペガサスに雇われた身ですよ〜」
「紫乃ー!何でペガサスの仲間と仲良くしてんだよ!!」
うふふ、あははと微笑むキール君を2、3度見返して城之内君が乱暴に掴み掛かってきて、凄い形相で訊かれて答えに困った。
「こ、これには深い訳がある様でないような…」
仲良くってデュエルしただけで…。皆も別のPKに遭遇したらしい。
それがまた随分卑怯な奴だったらしく、余計キール君を警戒している。
「どっちなんだよ!」
「えーどっちって
「ごちゃごちゃとうるせぇーんだよ」迫られて私が口ごもっているともう一人の方のキール君が先に口を開いた。
突然のキール君の変貌ぶりに皆目が点になって彼を見返した。
「俺が、あのカーテンヘアーの仲間?はん!支払いがいいから雇われてるだけだ。じゃなきゃ、誰があんな野郎の仲間になるかよ…それに」
彼はそう言い掛けて私の腰に抱きつき…何故抱きつく必要があるのかはよく分からないけど。
「こいつと仲良くしてんじゃねぇ、こいつは俺の下僕だ」
だから、俺を敬い崇めた称えるのは仕方のない事だ!!
『げ、下僕!?』
「キール君……あんまり笑えない冗談はやめた方がいいよ」
城之内君は単純だからそういうのすぐ信じちゃうんだから。現に素っ頓狂な声を上げて何故だか「う、嘘だろう。紫乃…!」と酷く狼狽していた。
「紫乃さんは僕の下僕じゃないですかぁ」キール君はお前の物は俺の物。俺の物は俺の物とのほほんと微笑んだ。
「なんて○ャイアン的思考…!」
「ええっと…この通り、キール君は二重人格なんだ。表が一見穏やかそうで実は腹黒く電波。裏はサディストで支配欲が異常に強い子なんだよ」
「…お前、凄いに懐かれたな」
本田君が本気で哀れんだ目をした。
「うん…まぁ…」
「おら、さっさと入ろうぜ」
「僕、紫乃さんのとぉなり!」
「漠良君!ずるいぜ!紫乃の隣は俺だぜ」
「何言ってんだよ。下僕の隣はご主人様って相場が決まってんだよ」
「こっちは紫乃の親友だ!」
小学生並みの喧嘩をしている漠良君、もう一人の遊戯君、キール君、城之内君を可愛そうな物を見る目で見る私と杏子ちゃんに本田君。それに千年お姉さんの四人(?)。
何故彼等は私の隣を取りあっているのだろうか。何かあるのか。
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