小説




*STARDUST ACCELERATORネタ、若干ネタバレあり










最初は初対面にも関わらず、きつく睨まれた。
どうしてこんなにも睨まれるのか、全く心当たりが無くて、でもムキになってこちらも強く睨み返してしまったのを良く覚えている。
暫し睨みあっていると、ゴドウィンがその間に割って入って、大会がどうのこうのと言い出した(正直、そんな話どうでも良かった)。
ただ、ずっと、あのアメジストの瞳を見つめていた。あまりの美しい色に睨んでいるのを徐々に忘れてきていた。





あの瞳が忘れられなくて、もう一度、あの瞳が見たくて、





『俺の所まで上がって来い』





去り際のその言葉を頼りにゴドウィンの言っていた大会にのこのこと出場した。
立ち塞がるライバル達、ゴドウィンの用意した"私の兄弟達"を倒して、そしてやっと、彼に辿り着いた。
消耗した体力と精神力。それでも今持てる全力を持って彼の目の前に立ち、挑んだ。


目の前で不機嫌そうな、彼。「ゴドウィンめ、覚えてろよ」心の中で悪態を付くのが精一杯で。
肝心な事にどうやって彼に勝ったのか、それだけが記憶から、すっぽりと消えてしまった。つい先程の出来事なのに。





「…ふん。キングからの施しだ!ありがたく受け取れ」


「キラキラ…」


負けたのに相変わらず、偉そうに踏ん反り返って、私を見下ろして、彼がそのまま後ろに倒れれば、いいのにと密かに思う。
「貴様のデッキには迫力が足りん。俺に勝ったのなら、それなりのデッキにせねばならん!」そう、寄越した1枚のカード。
キラキラと光ったカード。俗に言うレアカードで、そんな事を気にしない私でも貴重なものだと分かった。





「まさか、いらんと言うのか」


そんな貴重なカードを貰ってもいいのだろうか。ジャックはいつまでもカードを見つめてしまおうとしない私を険しい目付きで見た。
要らなくない、嬉しい。ジャックからカードを貰えて。そう喜ぶ子供みたいな自分に戸惑っているだけなの。どうしてだろうね、嬉しくて仕方ないよ。
――素直にそんな事を言える柄でも、間柄でもないので、ただ一言。




「ありがとう」


それと、大事にする、いや…します。
早速デッキに加えると、まだそのカードをプレイしてもいないのに自分のデッキに入っていると思うだけでワクワクした。
自分でも珍しくはしゃいで、そんな私をジャックは笑った。





無名の英雄
(これから、俺がお前にキングがなんたるかを教え)(いや、それはいい)(貴様ーッ!)


title:ユグドラシル
- BACK -


- ナノ -