小説




「凌牙君の事が好きで、凌牙君の事ばかり考えている程好きで、愛し過ぎて、ここ一週間まともに眠れていません」


「見てください。この不眠の証である隈を。友達にデ●ノのLみたいって言われて、ショックでした」


「だから、というのもなんですが、凌牙君のニオイとか染み付いた制服とか、体操着とかを私にください」


「それを抱いて、凌牙君のニオイに包まれながらなら、私眠れそうな気がします」


「永遠に眠ってろ」


勝手に俺の前に現れて、勝手に俺の隣を陣取り、勝手に俺の隣で延々と訳の分からん事を喋る人畜無害そうな女の皮を被った変質者。
徹底的に無視を決め込んでいるつもりだったのに、急にしがみ付かれ、振り払い静かに言い返す。
俺は疲れた。疲れ果てたのだ。もう、怒鳴る気力も無い。





「愛ゆえにです」


人の胸は揉むわ、盗撮はするわ、ラブコールと言う名の迷惑メールに痛電の嵐で恐ろしい事になっている携帯の着信履歴。
蔑めば喜ぶ。罵れば喜ぶ。俺はどうすればいい。神様、これは罰ですか。今まで自分の行った数々の悪行を心から、悔いて反省しています。
心を入れ替えて、いい人間になると誓います。人からカードを取り上げません。人の宝物を壊したりしません。


だから、どうか俺に少しでもいいですから、俺に安らぎをお与え下さい。





「凌牙君も元気無いですね。お肌のツヤもないし、寝不足ですか?」


「う・る・さ・い」


ストレスの元凶が何を言う。あんたさえいなければ俺は毎日平穏な生活を送れるんだ。
携帯は電源を切り、机の引き出しの奥にしまい込んだ。家の電話線は引っこ抜いた。
パソコンもネットには繋がず、メールの受信を受け付けない。


「じゃあ、少し早いけれど一緒に寝ましょう。そうだ。そうしましょう。私のお部屋でいいですか」


「冗談じゃない」


名案だと言わんばかりに奴は目も顔も輝かせ、俺の手を掴もうとする。
その手を一回、二回、三回避け、身を翻す。距離を取って、隙を見て、走り出す。
いくら、なまえが筋金入りの変態でも、ショタコンでも、ストーカーでも、所詮女。俺に追い着けるはずはない。





「いえいえ、私はいつでも、本気です。本気と書いてマジなのです。凌牙君となら、私一線を超えても構わな「俺が構うわ!!」


ここで、無視を決め込んで、走り去っていればいいものを。習慣とは恐ろしい。つい口が勝手に動いてしまった。


「その恥ずかしがり様…まさか、凌牙君…初めてなのですか!ド●テイなのですか!」


「ど、!」


絶句だ。





「あぁ、そうだったんですね。私の為に綺麗な身体のままでいてくれたのですね。なまえは嬉しいです」


「ば、ち、が…ッ」


何勝手に解釈してんだ。


「大丈夫、私に任せて下さい。数々の官能小説を読破し、ギャルゲとエロゲもプレイ済み、大体の流れは把握してますから!」


「何余計な知識身に付けてんだ。結局のところあんた処女なんだろうがっ」


「ふふ、処女を処女だと思って舐めてはいけませんよ、凌牙君。毎日イメージトレーニングは欠かしていませんから」





そ、それって…あのつまり、一人で――え。マジか、あんた!!!





「毎日寝る前に凌牙君の色んな姿を想像するのはもう、日課ですからね」


コスプレ、羞恥プレイ、etc.etc。


「………」


本日二度目の絶句だ。





「じゃあ、凌牙君の気が変わらない内に行き「行かねぇよ」





くっつかないでください移ります変態が
(それなら…それならば、今ここで私を凌牙君の太ももに挟んでください!)(悲壮な面持ちで言う事じゃねぇだろうがッ!!)(こら、くっつくな…変態が移る!!)
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