小説




「えっと、返事はしばらく待ってもらっても、」


時代遅れのコンピューターみたいに重たいフリーズに陥ってしまったなまえは二日後にやっと、再起動に成功した。
けれど、まだ調子が悪いようではっきりとした答えを弾き出せないでる。


「いいかな…」


歯切れの悪い言葉で、不安そうになまえは言う。多分、俺を傷つけないでこの件を収められるような言葉を探しているんだ。
今の今までなまえは俺の事なんて全く意識していなかった。俺は凄い意識していたのに当のなまえの奴は「弟みたい」と全然気付かないんだもの。
ストレートに告白していたら結果は惨敗だ。


「いいよ」


曖昧にした告白の結果は思惑通り。保留でも、NO以外ならばもう半分はこっちのものだ。
不安気ななまえとは正反対にこれでもかと、にっこり笑顔で俺が頷くと、身構えられた。


「な、なんか遊矢君、凄い笑顔で…ちょっと怖いな」


酷いな、いくら本当にそう思っていても普通は言わないだろう。
笑顔のポーカーフェイスを崩さない俺に更に言う。


「何か企んでるの、かな?」


笑顔だけで答えると、なまえは「遊矢君は、遊矢君はそんな子じゃなかった…!」と怯える。
酷いな、最初から俺はこんな奴だよ。なまえが気付いていなかっただけで。





「それでは、リクエストにお応えし、特別にお教えしましょう!」


なまえは分かってない。
俺を傷つけずに済む方法なんて探しても無駄だって事に。
"弟みたい"なんて壁、あっと言う間に越えられるって事に。
後で慌ててごめんねなんて言われたって、俺もうあきらめられないから。
大げさに彼女の手を取るとピクンと跳ねる指先。引かれる手に逃がすものかと指を絡める。





「近い内に――あなたに"好き"と言わせてみせます」


俺の背伸びに、想いに気付かせてやるから。
戸惑う指先にチュッと音を立ててキスすると、驚きに目を剥かれ、再びフリーズを起こしてしまったなまえ。
少し乱暴ですが叩いて直す如く、指先を甘噛みすると彼女ははっと息を呑み、無事にそして素早くフリーズを解く事に成功いたしました。
俺の手の中にある自分の指先と俺を交互に見て、なまえは見る見る赤くなっていく。ポンコツかよ、可愛いな…。





すみません、俺あきらめ悪いんです
(覚悟しておいて下さい)(え、あ、な…ええあぁっ!)(うん、落ち着こう)
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