押しまくる遊矢君
「お願い」
「ごめんね」
「おーねーがーいー!」
「無理」
「ぶー」
「むくれたって駄目」
ほっぺよく膨らむね。
「もういい!」
「じゃあまたね」
「ここは引き止めるところ!」
帰る!と踵を返す彼に手を振ると遊矢君は違う!と勢いよく振り向いた。
自分で言って、勝手に行こうとしたんじゃない。
「余裕のない男はみっともないよ」
そう遊矢君に言うと、彼はしゅんと項垂れるが、途端何かを閃いた様に一瞬顔を輝かせると、片膝を着き、恭しく私の手を取り、さっきとは正反対の余裕の表情で私を見上げる。
「どうか、私のたった一つの願いを聞いてください。あなたのそのかわいい瞳で私を見つめて、ただ一言"はい"と言ってください」
「(そうきたか)」
やっと遊矢君のお願いを聞いてもいいかなぁと思い始めて、私ははっとする。
(それで、お願いってなんだっけ)(もー!)
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