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ヴァンパイア・ロードは愛されたい

愛しい悪魔のおはなしから

「なまえさん好きです、好き好き大好き」

「うるさい、鬱陶しいからベタベタしないでよ」

あっち行ってちょうだい、私は今衣替えで忙しいの。

「ふふ、僕を疎んじるそんなあなたも好きです、あはは」

「気持ち悪いわね…どうしたの、ロード」

ふわふわした声を出して、私の背中にくっついてお腹に手を回し、肩口で危ない薬でもやってるんじゃないかって感じに笑ってる。大丈夫かしら。
いつも変だけど、今日は特に変ね。最近、寒いから風邪でも引いたの。っていうか精霊も病気に掛かるの?
心配して後ろを向く私にロードは一瞬きょとんとした表情を浮かべる。

「この季節になると人肌恋しいくなると言いますか、何でしょう。無性に誰かを抱きしめたくて、あ、今はなまえさん一筋ですから安心して下さい「そんな事聞いてないから」んーそうですねはっきり言ってしまえば、ただの欲求不満ですよ」

ぺらぺらと長く喋っておいて、結局はけろっと見慣れた薄ら寒い笑みを浮かべる。
なんだ、いつも通りのロードじゃない。

「心配してくれたんですか」

不意に細められた金の瞳に心を見透かされた様な気がして、私は内心慌てて前に向き直る。
むかつくから腹いせに暫くの間無視してやろう。もう絶対、ロードに構うものか。

「でも、こんな僕も医者が匙を投げてしまうような病に掛かってしまったんですよ」

どうせ、恋の病とか言うんでしょう。あーやだやだ、キザな奴。胡散臭い奴。
自分がいつも口にする愛の言葉みたいに薄っぺらい存在のくせに。

「おやおや、まだ僕は何も言ってないのに、一体どうして顔を赤くしているんですかぁ」

振り向いたらきっと、ニヤニヤしてるに違いないから、私は絶対に振り向かない。
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