ドキドキしている遊馬君
「遊馬ーDVD借りてきたから一緒にみよー!」
雪の降りしきる日曜日は昼間でも薄暗い。レンタルショップの袋を引っ下げ、なまえは赤い顔して家にやって来た。外は寒かっただろう。それに走ってきたのか息も切れている。
多分、アニメだろうと思っていいぜと言ったら、「じゃんじゃじゃーん!」と大げさに言って、数枚のDVDを取り出した。え、一本じゃないんだ。
「寒い真冬にほっこり温まろうって感じで、身も凍る様なバイオレンスなホラーを三本立て」
「ホラーじゃ全然温まんねぇよ、自分で言ってんじゃん身も凍るって!」
普通夏にホラー観て暑い夏を乗り切ろうとするもんだろうが。
「まぁ、騙されたと思って!」言いながらテキパキとDVDセットをして、俺のベッドから布団を剥いでテレビの前のスペースを陣取ると「ここ!早く座って!」と自分の隣を叩く。
観ると言っちまったからには観るしかない。渋々そこに座ると、ベッドから剥いだ一枚の布団に互いにくっつきながら一緒にくるまる。これは温かいけど、本当にホラー観て温まんのか。
「夏じゃ暑いからぎゅっと出来ないじゃん」
「…お前さ、もしかしてこれしたかっただけ?」
映画そっちのけで、必要以上にくっついて、今更隣の存在にたいしてドキドキとし出す胸。俺の心臓の音筒抜けじゃねぇか。
君は「その通り」と隣でいたずらっぽく笑った。
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