ロマンティックなカイト君

「カイト君、やめて…こわいよ」

手足を縛られ自由の効かない彼女は怯えた目をして俺を見上げる。
大きな瞳の淵には涙が浮かんでいて、どうしてと言いたげで今にもこぼれ落ちてしまいそうだ。

「おねがい、なんでも言うこと聞くから、お家に返して…」

震えるか細い声を吐き出し、そう懇願すると、とうとう泣き出してしまった。
お願いだ。そんな声でそんな事を言わないでくれ。俺はお前に酷い事をするつもりなんて無い。

「お前は何もしなくていい」

彼女の前で膝を着き、涙でぐちゃぐちゃな顔を両手で包む。柔なかな頬を撫で、そっと笑い掛ける。
俺はお前に何かしてもらおうなどと思っていない。何もしなくていいんだ。お前に望む事は、

「ただ、俺に愛されていてくれ」

俺の傍で、ずっと。
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