カイト君と年上の女
「カイトくーん、コーヒーおかわりちょうだい」
「俺を使用人か、ウエイターと勘違いしていないか」
「あら、そんな事ないわ。カイト君は私の愛しい恋人じゃない」
侵害だと言いながらも、パソコンを睨みつけたまま、空のカップを俺に突き出す。
面白くないが、仕事中に来た俺が悪いとついカップを受け取ってしまう。
「それでもおかしいだろう。客にコーヒーを淹れさせるなて」
「私が淹れるよりカイト君の淹れたコーヒーの方が美味しいもん」
「大人の女がもんなんて言うな」
「じゃあ、カイト君は子供のくせに大人みたいな事言わないで」
そうしたら、言葉遣い考えてもいいわ。なんていいながら、カップを受け取うとする彼女の手を掴む。
やっと、彼女がこっちを見てなぁにと目が楽しそうに細めた。
「コーヒー冷めちゃう」
「後で淹れ直す」
「ほら、まだ明るいし」
「カーテンを締めればいい」
そうも言いながら、覆い被さる俺を受け入れる。
「他に言い訳は」
彼女の顔の横に手をついて見下ろせば相変わらず笑っている。
いくら口では子供みたいな馬鹿な事を言っても、だらしのない所があっても、それでもやはり彼女は年上の女。手のひらで転がされている感覚は否めない。
「特に無いかな」
少し考える素振りを見せるが、やがて何も無いと言って俺の背に腕を回す。ずるい人だ。
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